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「怒りっぽくなった」「同じ行動を繰り返す」はサイン? 前頭側頭型認知症の理解と対応法

認知症見守り

まるで人が変わったみたいに短気に…もしかして認知症?

超高齢化にともない、認知症を患う人が増加し続けています。政府の推計によると、2060年には高齢者のおよそ6人に1人が認知症になることが見込まれます。また、認知症を発症するのは高齢者に限りません。厚生労働省が公表している2020年の調査結果によると、64歳以下の若年性認知症の患者は全国で3万5千人以上と推定されており、いまや認知症は国民病といえるでしょう。

認知症は原因となる病気により、アルツハイマー型をはじめいくつかのタイプに分けられますが、若年性認知症のうち1割近くを占めるのが「前頭側頭型認知症(FTD)」です。割合の内訳は、アルツハイマー型認知症が52.6%、脳血管性認知症17.1%、前頭側頭型認知症9.4%、外傷による認知症4.2%、レビー小体型認知症/パーキンソン病による認知症4.1%、その他12.6%となります。

(出典:厚生労働省「若年性認知症実態調査結果概要(R2.3)」)

前頭側頭型認知症の初期は比較的記憶は保たれている一方で、人格や行動の変化が目立つ、本人に病識がないという特徴がみられます。そのため、早期には認知症と気づきにくいこともあり、突然人が変わってしまったかのような家族を前に周囲としては困惑することも少なくありません。

認知症は早めに気づいて相談することで、症状に応じた対応や本人と家族への支援へつながるので、初期の段階でサインを見逃さないことが大切です。そこで、前頭側頭型認知症の概要とサインとなる初期症状を紹介し、アルツハイマー型との違いや対応の仕方などについてお伝えします。

前頭側頭型認知症の特徴とアルツハイマー型との違いは

まず、前頭側頭型認知症(FTD:Frontotemporal Dementia)とは、脳の前頭葉と側頭葉を中心に神経細胞の変性・脱落が徐々に進むことで起こる、進行性の神経疾患です。以前はピック病とも呼ばれていましたが、現在ではピック病は、病理学的な特徴において、前頭側頭型認知症の1種と認識されています。

アルツハイマー型認知症の発祥原因などについては下記の記事をご参照ください。
▼アルツハイマー型認知症の予防法を知って不安を減らそう

前頭葉は物ごとを計画、判断、感情をコントロールする役割を持つ領域です。また、側頭葉は、言葉の意味の理解や知識、記憶、感情などに関わっています。前頭葉や側頭葉の機能が障害されることで、社会的な行動や感情のコントロール、言語などに変化が生じるため、前頭側頭型認知症では、認知症の代表的なイメージである「物忘れ」よりも先に、性格や行動の変化、社会性の低下、あるいは言葉の障害が起きることが多いようです。

認知症全体としてもっとも多いアルツハイマー型認知症と比較すると、アルツハイマー型の初期では、新しいことを覚える記憶の機能の低下や物忘れが目立ちますが、前頭側頭型の初期には記憶が比較的保たれていることがあり、それよりも人格・行動の変化や社会性の低下、言語機能の障害が前面に出やすいのが大きな違いです。加えて、発症年齢にも違いがあります。前頭側頭型認知症は50歳〜60歳代の比較的若い年代で発症することが多いのに対し、アルツハイマー型認知症は高齢になるほど発症例が増えます。

初期症状を見逃さず早めの相談につなげるために

他のタイプの認知症と同じように、前頭側頭型認知症も早めに気づき、適切な対応や支援につなげることが大切ですが、その初期症状は多様で個人差もあります。早期発見の手がかりとなる初期症状は次のとおりです。

<性格の変化や不安定な感情>
・これまでは穏やかな性格だったが、ちょっとしたことで怒りっぽくなった
・他人に配慮したり、共感したりすることがなくなった
・無気力、無関心になった

<社会性の低下>
・不適切なことを言う、順番待ちの列に割り込むなどマナー違反の言動が増えた
・信号無視、万引きなど法律やルールに違反した行動をする
・周囲への影響を考えず場当たり的に行動する

<同じ行動を繰り返す(常同行動)>
・同じものばかり食べる、偏食になった
・同じ言葉、フレーズを何度も繰り返して言う
・同じ経路を同じ時間帯に行き来するなど、特定の行動パターンにこだわる

<言葉の変化>
・会話が噛み合わなくなった
・口数が減った、または極端に増えた
・物の名称が出てこない、言葉の意味がわからない

以上の項目のうちあてはまる場合は、早めの受診を検討しましょう。

前頭側頭型認知症への対応は?家族だけで抱え込まない

前頭側頭型認知症を早期に発見し適切な治療につなげるためには、専門医への受診がカギになります。家族が「前頭側頭型認知症かもしれない」と思ったら、まずはかかりつけ医に相談するほか、脳神経内科や精神科など、認知症の診療に対応する医療機関への受診を検討しましょう。

前頭側頭型認知症はひとつの症状だけで判断するのではなく、行動・人格・言語などの変化を総合的に捉えることが大切です。実際には、医師による問診に加え、CT・MRI検査、脳血流検査などを通して総合的に診断されます。本人の性格や行動の変化、症状が出始めた時期などを事前にメモして診察に付き添うと、受診がスムーズになります。

現在、前頭側頭型認知症の進行を根本的に止める薬はなく、治療の目標はご本人の混乱を減らし、穏やかに過ごせる環境を整えることになります。特定の症状を緩和する薬剤を使いつつ、ご家族の関わり方を工夫していくことが重要です。

●家庭で工夫したい対応のポイント

・本人の常同行動にあわせて生活リズムを調整する
決まった時間の散歩や行動パターンを無理に止めず、それに合わせたスケジュールを組みます。

・無理に抑え込まず、適度に距離をとる
ルールに反する行動が見られても強く責めたり興奮させたりせず、安全を見守りながら対応します。

・近隣住民や交番、店舗にあらかじめ事情を伝えておく
地域にあらかじめ相談しておくことで、万が一のトラブルを未然に防ぎやすくなります。

・専門施設や介護サービスを活用する
家庭内だけで抱え込まず、認知症ケアを専門とする施設やデイサービスなどを積極的に利用しましょう。

前頭側頭型認知症は攻撃的になりやすく、暴言や暴力行為に至ることがあり、ご家族の負担も大きくなりがちです。対応に不安があれば一人で抱え込まず、以下の専門機関やサービスを活用して介護負担を減らしていきましょう。

●ひとりで抱え込まないための相談先・サポート活用

・かかりつけ医・専門医:症状緩和のための服薬調整や、介護認定に必要な主治医意見書の作成をします。

・地域包括支援センター:高齢者福祉の総合窓口。介護保険の申請手続きや、地域の支援サービスを案内します。お住まいの自治体(市区町村)の公式ホームページで確認するか、市区町村の介護保険担当窓口に問い合わせしましょう。

・認知症疾患医療センター:各自治体が指定する専門機関。鑑別診断や、行動障害に対する具体的なケアのアドバイスをします。

・ケアマネジャー:介護保険サービスの計画作成。ショートステイやデイサービス(デイケア)の調整をします。

●参考リンク・ご相談窓口

前頭側頭型認知症の対応や介護支援について、より詳しく知りたい方は以下の公的機関・相談窓口もご活用ください。

・若年性認知症コールセンター(社会福祉法人 仁至会)

厚生労働省委託事業による、若年性認知症に関する専門の無料電話相談窓口です。

・公益社団法人 認知症の人と家族の会

介護の悩み相談や、同じ立場のご家族の体験談・対処法を知ることができます。

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