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ヒートショックと自律神経の関係 副交感神経を刺激する正しい入浴方法とは

高齢者問題

ヒートショックは自律神経が関係して起きる?

朝夕冷え込む日が多くなり、寒暖差が気なる人も多いのではないでしょうか? 1日のうちの温度変化や場所による寒暖差が健康へのダメージになることも。例えば、暖かいリビングルームから暖房のない浴室への移動などではヒートショックへの注意が必要です。ヒートショックは急激な寒暖差により血圧が激しく変動することで起きる健康被害で、心筋梗塞や脳卒中という重篤な事態に陥ることもあります。

ヒートショックが最も発生しやすいのが入浴時です。特に高齢者はヒートショックを起こしやすいといわれていますが、実は、ヒートショックが起きるメカニズムには自律神経が深く関わっています。自律神経の働きを理解して生活習慣に気をつけることがヒートショック防止につながります。自律神経とはどのようなものか、ヒートショックとの関係、自律神経を考慮した正しい入浴方法などをご紹介しましょう。

そもそも自律神経とは? その働きを知っておこう

自律神経とはどのような働きをする神経でしょうか? 自律神経は、体じゅうの内臓や器官の動きをコントロールする神経です。人間をはじめとする脊椎動物の神経系は脳と脊髄である中枢神経とそれ以外の末梢神経からなりますが、自律神経は末梢神経のひとつで、私たちの意志とは関係なく24時間つねに働いています。

自律神経は交感神経と副交感神経により構成され、交代しながら働くことで体調のバランスを保ちます。身体の活動をうながす役割をするのが交感神経で、主に昼間、興奮や緊張しているときに優位に働きます。これとは逆の作用をするのが副交感神経です。副交感神経には、身体を休息、回復させる役割があり、主に夜間、睡眠時や食事中・食後、リラックスしているときに働きます。

この交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで、私たちは元気に過ごせるのです。しかし、過労やストレスなどが続くとこのバランスが崩れて自律神経の乱れとなり、さまざまな体調不良となってあらわれます。また、加齢により自律神経の働きは衰えていくので、高齢者は若い世代に比べ自律神経の乱れによる体調不良が起きやすいといわれています。

自律神経とヒートショックが起きるメカニズム

自律神経はヒートショックにどう関係するのでしょうか? ヒートショックは急激な気温差により血圧が乱高下することで起こります。血管が収縮すると血圧は上昇しますが、自律神経はこの血管の収縮や拡張をコントロールし、血液の流れを調節する働きもしています。

例えば、気温が高く暑いと感じる環境では、交感神経が血管を拡張させたり、発汗を促したりして体温を下げようとします。暑いときに血管を広げるのは血流の表面積を大きくして気化熱を多くするためです。逆に、気温の低い寒い環境では、血管を収縮させて血流から気化する熱を抑えようとします。そのため、大きな気温差のある場所を短時間で行き来するようなときには、自律神経は急速に血管の収縮と拡張を繰り返し、非常に慌ただしく体温調整をすることになります。

こうした自律神経の働きを入浴時の状況に当てはめてみましょう。暖かいリビングから冷えた脱衣所に行き服を脱いで、脱衣所と同様に冷えた浴室に入り、浴槽の熱いお湯に浸かったあと寒い脱衣所に戻る、といった一連の動作の間に、血管は急ピッチで収縮と拡張を繰り返します。これにともない血圧も急速に大きく変動し、結果として、立ちくらみやめまい、失神などを起こします。もしくは、血管が詰まったり破れたりすることで、心筋梗塞や脳卒中を招くこともあります。

これがヒートショックの起こるメカニズムですが、自律神経の働きが低下している人は血圧のコントロールが適切にできず、ヒートショックのリスクが高くなります。このことから、ヒートショックを防ぐには、血圧の変動のもととなる血管の急激な収縮・拡張を抑えることが欠かせないといえます。そこで、重要になるのが自律神経の乱れを抑え、整えることです。

自律神経を整えヒートショックを予防する正しい入浴方法とは

本来、正しい方法で行えば入浴は自律神経を整えるのに役立ちます。自律神経を整え、ヒートショックを予防するために、まず、入浴時にやってはいけない注意ポイントを紹介しましょう。

× 42℃以上のお湯につかる:42℃を超える熱いお湯に浸かると交感神経が刺激され、血圧が急上昇し、ヒートショックの危険性が高まります。

× 長風呂:41℃以下のお湯でも長時間浸かっていると、自律神経の体温調節機能が乱れて体温が上がりすぎ、熱中症や脳梗塞のリスクを招きます。

× 食後すぐ、飲酒後、寝不足のときの入浴:自律神経の作用で眠くなり、浴槽での溺水事故の原因になる恐れも。

では、健康的な入浴方法とは、どのようなものでしょうか? そのカギとなるのが、体を休める働きをする副交感神経を刺激してリラックス効果を引き出すことです。そのためには次のポイントを意識して入浴しましょう。

・浴槽のお湯の温度は40℃程度
・お湯に浸かる時間は10分から15分(浴室が寒い場合)まで
・全身浴:肩までしっかりとお湯に浸かりましょう
・入浴前後に200〜300ccの水分をとる
・就寝1〜2時間前に入浴する

ヒートショックは入浴時に起きやすいものですが、本来、適切な方法で行えば入浴は自律神経を整え、健康増進につながります。また、自律神経の乱れを防ぐには日ごろの生活習慣も大事です。ヒートショック予防のために、適切な入浴方法を習慣づけていきましょう。


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