インフルエンザ脳症とは? 高齢者の重症化に特に注意を!!
高齢者問題
重篤なインフルエンザ合併症とは
2023年夏頃から季節はずれのインフルエンザが各地で流行し、寒くなったいま、本格的な流行シーズンに入りました。このまま、高いレベルで感染流行が続くと予想されています。
こうしたインフルエンザの流行拡大の原因として、3年におよぶ新型コロナウイルス対策で人の行き来が抑えられていたことや、異なるウイルスどうしが干渉しあったこと、そしてそれらにより私たちのインフルエンザウイルスへの免疫が低下したことなどが専門家により指摘されています。
このようなことから、この冬は例年に増してインフルエンザ感染のリスクが高まっており、重症化リスクが高いとされる高齢者は特に注意が必要です。
高齢者は一般的に抵抗力が弱いため、インフルエンザに感染すると長引くことも多く、合併症を起こすことも少なくありません。
インフルエンザの合併症には副鼻腔炎や中耳炎、気管支炎、肺炎、心筋炎などがありますが、これらの中でも肺炎とならび重篤なものがインフルエンザ脳症です。インフルエンザ脳症は子どもに多い病気ですが、高齢者もリスクがあります。
インフルエンザ脳症とはどのような病気か、また高齢者のインフルエンザ重症化を防ぐためのポイントなどをご紹介します。
インフルエンザ脳症とは? 高齢者もハイリスク?
インフルエンザ脳症は、インフルエンザに感染したあとに発症する重篤な脳の病気ですが正式には一つの病気ではなく、意識障害などを起こす複数の病気を含む症候群のことです。
病気の種類としては急性壊死性脳症(ANE)やライ症候群があげられ、意識障害やけいれん、異常行動などの症状があらわれます。病状は急速に進行し、急性期を乗り越えた患者の一部は回復しますが、重症化した場合はけいれん性の疾患などの後遺症やなんらかの障害が残る例が報告されており、最悪は死に至るケースもあります。
インフルエンザ脳症は幼児に多くみられますが、成人の発症例も報告されています。
国立感染症研究所が発表した資料によると、2017年から2018年にかけての流行シーズンでは、全発症者数166人のうち14%近くを60歳以上の高齢者が占めていました。また、2014年から2019年の間にインフルエンザ脳症で死亡した人の割合は20歳未満では約5%であるのに対し60歳以上では約13%となっており、高齢者が発症した場合の死亡リスクが高いことがわかります。
インフルエンザ脳症の症状は? 早期受診・早期治療が肝心
インフルエンザ脳症は、発熱など一般的なインフルエンザ症状が出たあと、数時間から24時間以内で急速に発症することが多いとされています。代表的な初期症状には、意識障害、けいれん、異常言動や異常行動などがあげられます。早期治療により軽症化の可能性が高まるため、初期症状があらわれたらすぐに受診することをおすすめします。
また、インフルエンザ脳症の治療では後遺症のリスクを考慮して、回復期からはリハビリテーションが治療の一環とされています。
インフルエンザ感染後、以下の初期症状があらわれた場合は、ただちに医療機関を受診しましょう。
●意識障害
呼びかけに反応がないなど、明らかな意識障害がみられる場合があります。
軽度でも「意識がはっきりしていない」と感じる場合は受診しましょう。
●けいれん
自分の意思とは関係なく起きる筋肉の収縮で、全身または体の一部にあらわれます。
●異常言動、異常行動
人やものの区別がつかない、幻視、幻覚、ろれつがまわらない、意味不明な発言など。
こうした異常は発熱によることもありますが、1時間以上続く場合やけいれんの後に見られる場合は脳症の初期症状が疑われます。
ワクチン接種や予防投与、インフルエンザ感染対策の徹底を
インフルエンザ脳症を発症したら、早期受診・早期治療が欠かせません。
しかしながら、後遺症の可能性や死亡リスクも高いため、そもそも発症を避けるためにはインフルエンザ自体の感染予防が重要になります。特に高齢者は肺炎を併発することも多く、インフルエンザの感染は重症化や死亡リスクを高めます。
インフルエンザの感染対策としてもっとも効果的とされているのが、ワクチン接種です。
この冬は誰もがインフルエンザへの免疫が低下しており、積極的な接種が推奨されています。また、コロナウイルスとの同時流行も予想されることから、感染拡大の時期にはマスクの着用、手洗い・うがい、室内の換気など、基本の感染対策をあらためて徹底しましょう。
加えて、高齢者とその家族が知っておきたいのが、抗インフルエンザ薬の予防投与の制度です。
これは、同居家族や共同生活者にインフルエンザ発症者が出た場合、高齢者本人がまだ発症していなくても感染予防のためにタミフルなどの抗インフルエンザ薬を処方することができるというものです。65歳以上の高齢者や呼吸器系疾患のある人などがこの予防投与の対象となります。
予防投与は自費診療のため、保険適応外となります。また、医師の診断と判断が必要になるため、投与を受ける本人が受診しなければいけません。
インフルエンザ患者との濃厚接触後48時間以内の投与が有効とされるなど条件がありますが、高齢者の感染リスクを減らすうえでは有益な選択肢といえるでしょう。
高齢者がインフルエンザに感染すると、重篤な合併症を併発することも少なくありません。重症化を避けるには、そもそも感染しないことが何よりも重要です。
ワクチン接種や治療薬の予防投与も視野に、あらためて感染対策を徹底しましょう。
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