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高齢者の一人暮らし 孤立させないための生きがいづくり「キョウイク」「キョウヨウ」とは

高齢者問題

長寿社会に必要とされる生きがいづくり

誰しも心身ともに健康に暮らしていくには生きがいを持つことが大切です。仕事や家族が生きがいという人も少なくないと思われますが、長寿社会のいま、定年退職後の人生は長くなり、一人で暮らす高齢者は増え続けています。もし定年後に配偶者と死別したりすれば、何を生きがいにすればよいのでしょうか?

長い老後を健全に過ごしていくには新たな生きがいづくりが必要になります。一方、社会からの孤立や孤独感は心身の健康をむしばむといわれており、生きがいを持つことは孤独の解消にもなります。

そこで高齢者の孤立を防ぎ、生きがいにつながるものとして近年注目されているのが「キョウイク」と「キョウヨウ」です。老後の生きがいづくりに必須といわれる「キョウイク」と「キョウヨウ」、その重要性について説明します。

高齢者にとって大切な「キョウイク」、「キョウヨウ」とは

「キョウイク」と「キョウヨウ」は、高齢者が毎日をいきいきと過ごすための秘訣です。言葉の響きとしては「教育」「教養」と同じですが、意味は異なります。

「キョウイク」とは「今日行く場所がある」、「キョウヨウ」とは「今日するべき用事がある」という意味の言葉です。少し詳しくこの二つの意味について説明しましょう。

●キョウイクとは
高齢者の中には、「朝起きたあと行くところがない」と感じる人が少なからずいます。
長年、毎日仕事をしてきた人が定年退職を機に、次の日から行く場所がなくなるのは仕方のないことといえます。とはいえ、一日中家に引きこもるのは健康によくありませんし、配偶者に頼りきってしまっては自身の健康だけでなく夫婦関係にも悪影響を与えかねません。
高齢になっても人間関係を維持し、行くべき場所を持つことが心身の健康にとってとても重要です。

定年退職は職場からの引退ですが、社会からの引退を意味するものではありません。現役時代は仕事を中心につくってきた社会との関係性を、個人として地域社会で構築しなおす機会として捉えましょう。特に、現役時代に地域活動の機会が少なかった人は、定年後、地域の中に居場所をみつけることが肝心です。それが退職後からの自身のアイデンティティとなり、この状態を「キョウイク」(今日行く)と呼びます。

●キョウヨウとは
「今日行くべき(キョウイク)場所」を得るためには、その場所に行く理由や目的が必要になります。特にあてのない外出も悪くはありませんが、高齢になっても毎日を充実させるには目的意識をともなう行動が大切なのです。そのためには、「キョウヨウ」、つまり今日やるべき用事が重要になります。

キョウヨウには、買い物や通院など生活に必要なことをはじめ、ボランティア活動や地域との交流も含まれます。自分の居場所であったり社会的なつながりを目的に日々の生活の中で行動したり趣味を持つなど、従来にはないカタチで生活の拡張をすることも大切です。そうすれば、趣味を楽しむ友人との時間も増え、人間関係の充実や地域のつながりを楽しむことができるでしょう。

また、定年後に新しい趣味を始めるのもおすすめです。長寿社会のいま、60歳からのスタートはまったく遅くなく、90歳まで続ければ30年間楽しめます。

こうした日常的な活動や用事は高齢者にとって生きがいや自己肯定感につながると同時に、社会参加や自立を促進し、健康的な生活スタイルを維持する上で非常に有効となります。

孤立しないための「キョウイク」と「キョウヨウ」の重要性

現代では、高齢者の一人暮らしは当たり前というほど増えてきました。独居の高齢者のなかには一日中誰とも話さないといった人も少なくないようです。そのような状況で最悪といえるケースといえるのが、人づきあいがおっくうに感じ引きこもりがちになり、地域社会から孤立し周囲の人たちに気づかれることなく亡くなってしまう孤独死です。

また、自殺も孤立・孤独に関わる問題です。国全体での自殺率は近年、減少傾向にありますが、それでも海外と比較すると依然として高く、特に高齢者の占める比率が非常に大きくなっています。年齢が高くなるほど、孤独感が原因で自殺する人が増加し、特に70歳代の男性では、孤独感による自殺死亡率が高いというデータもあります。これは、退職後に新たな人間関係を築けない元ビジネスパーソンが多いことが背景にあると考えられます。

このことから、孤立を防ぎ老後を安心して暮らすためには、「キョウイク」「キョウヨウ」を通して地域社会に人間関係のネットワークを築くことがカギとなります。

地域デビュー成功のためには教育と教養も大事

定年後、地域社会で人間関係を築くことは、地域に自分の居場所をみつけることです。そのためには、「地域デビュー」を成功させなければなりませんが、現役時代の経験や知見を活かしながらもそれらに固執せず、ポジティブな態度と言葉で人と接するようにしましょう。
また、自分とは異なる価値観を持つ人に対しても柔軟に話を聞き、自身の考えを押しつけない、自慢話をしないなど心に留めておきたいものです。

過去にとらわれず、ポジティブな考えや行動をする人の周囲には自然と人が集まってきます。そうあるためには教育と教養も大切です。
趣味や生涯学習などの場でいろんな知識や情報を得ながら、自身の生活を充実させ、地域の人とのネットワークを築いていきましょう。

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