高齢者の熱中症対策は自律神経を整えることが大事 室温にも気をつけて
高齢者問題

季節の変わり目の体調不良が熱中症を招く?
季節の変わり目は体調を崩しやすいといわれています。その理由の多くが自律神経の乱れによるもの。自律神経とは、体温調節や心拍数、血圧のコントロールなど、生命維持に欠かせない体の基本的な働きを整える神経です。
これから夏に向けて熱中症への対策が必要ですが、実は自律神経は熱中症にも大きくかかわっているのをご存知でしょうか? 季節の変わり目に自律神経が乱れているところで急激に暑くなってくると、熱中症のリスクが高まります。高齢者は若い世代より自律神経の働きが弱く、体内の水分量も少ないため、高齢者の熱中症対策では水分を摂るなど通常の対策とともに、自律神経を整えることも大切です。
自律神経の働きと熱中症の関係に加え、自律神経を意識した高齢者の熱中症対策についてお伝えします。
※高齢者の季節の変わり目の不調については、こちらもお読みください。
▼自律神経の乱れと体温調節障害! 高齢者の大敵「季節の変わり目」に注意
自律神経とは? 自律神経が乱れるとどうなる?
自律神経とは意識とは関係なく内臓器官や体の他の部分の機能をコントロールし、自動的に体の機能を調整する神経で、主に交感神経と副交感神経の2つの部分で構成されています。この交感神経と副交感神経が連携しながら、体温・心拍数・血圧・消化・呼吸などの機能を調節します。
交感神経と副交感神経の役割は対照的で、交感神経は通常、興奮状態やストレス応答時に体を活動状態に適応させる働きをします。
交感神経が活性化すると心拍数や呼吸が増加し、血圧や血糖値の上昇、エネルギー消費が増加します。
一方、副交感神経の役割は、リラックスや休息時に体を適応させます。副交感神経の活性時は心拍数や呼吸が減少しますが、消化や代謝活動が活発になり、血圧や血糖値も安定します。
交感神経と副交感神経の活動が過剰または不足すると自律神経のバランスが乱れ、体の機能を正しく調節できなくなります。この状態が自律神経失調症で、その原因はストレスや不規則な生活習慣、病気やケガなどさまざまです。
自律神経と熱中症の深い関係
熱中症は高温、高湿度の環境下で体温調節ができなくなって発症しますが、発症の要因には環境だけでなく身体の状態も関係します。自律神経には体温を調節する重要な役割がありますが、自律神経が乱れてじゅうぶんに機能しないとちょっとした暑さでも体が対応できず、熱中症を起こしやすくなってしまうのです。
飲酒時、睡眠不足、風邪をひいているときなどは自律神経の働きが低下するため、熱中症になるリスクが高まります。逆にいえば、自律神経が正常に機能していれば熱中症になりにくいといえるのです。
いったん熱中症になったあとも自律神経の乱れが続き、その後長期にわたり自律神経失調症をひき起こすケースもあります。このように、自律神経と熱中症は深く関係しているのです。
高齢者は自律神経の働きが弱いとされています。そのため、自律神経が乱れやすい季節の変わり目から夏にかけて自律神経を整えることが、高齢者の熱中症対策では重要といえるでしょう。
寒暖差は自律神経の大敵? 室温調節の注意点

温度も自律神経に影響を与えます。高齢者の熱中症は屋内で起こることが多いため、室温が上がらないよう調節することが必要ですが、冷やし過ぎはかえってよくありせん。
また、寒暖差も自律神経にとっては大敵です。自律神経には温度の変化にあわせ体温を一定に維持する役割がありますが、5度以上の寒暖差に急激に何回もさらされると体への負担となり、スムーズに調節できなくなります。
具体例としては、冷房(エアコン)の効きすぎた部屋で体が冷え切ったところに猛暑の屋外に出るなどして急激な寒暖差が重なると自律神経が乱れてしまいます。逆に、暑い屋外から冷房が効いた室内に入るときも同様です。このような自律神経の乱れはいわゆるクーラー病(冷房病)を招き、体調を悪化させます。クーラー病は自律神経失調症のひとつで、体の冷え・倦怠感・むくみ・頭痛・肩こり・下痢・肌あれなど、さまざまな症状があらわれます。
住宅や高齢者施設ではエアコンで室温調節をするのが一般的ですが、熱中症を恐れるあまり過度に冷房を効かせると、また別の健康トラブルを招いてしまいます。熱中症に加えクーラー病にもならないよう、エアコンを適切に使用した室温管理が大事です。
そこで、目安として室温は26度から28度くらいに保つようにしましょう。暑さは湿度によっても違ってきます。湿度を45%から55%程度に保ち、温度・湿度ともこまめにチェックします。エアコンの風が直接体にあたらないよう、扇風機などを使って部屋全体を均等に涼しくさせましょう。
※自律神経と室温管理については、こちらもお読みください。
▼高齢者がうまく体温調節できない理由は自律神経の乱れ? 高齢者特有の健康問題とは
自律神経を整えるための基本を忘れずに
高齢者が熱中症になると重症化しやすいといわれています。自律神経を整えながら、しっかりと熱中症対策をしていきたいものです。
自律神経の乱れを予防するには、普段から生活のリズムを整えることが大切です。これまでご紹介した室温管理に加え、次のポイントも心がけましょう。
・規則正しく栄養バランスのよい食事をとる
・冷たい飲食物は控えめに、適度な湯温・時間で入浴するなど、体を冷やしすぎない
・睡眠をじゅうぶんとる
・ストレッチ、ウォーキングなど1日15分程度を目安に適度な運動をする
季節の変わり目や猛暑の夏を乗り切るには、通常の熱中症対策に加え、日ごろから自律神経を整えることが大切です。室温調節や生活習慣に注意して、健康的に過ごすようにしてください。
※高齢者の熱中症対策については、こちらもお読みください。
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