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認知症薬「レカネマブ」が保険適用に! 若年性アルツハイマーにも光明!

認知症見守り

保険適用によりレカネマブが臨床現場へ

アルツハイマー型認知症の新しい治療薬「レカネマブ」が保険適用の対象となりました。中医協(中央社会保険医療協議会)は患者1人あたり年間約298万円の薬価(薬の公定価格)で保険適用とし、2023年12月20日から臨床での使用が始まっています。非常に高額な薬という印象がありますが、保険適用などにより実際の費用負担は小さくなります。

レカネマブはアルツハイマー病の原因物質に直接作用し排除する治療薬で、これまでこうした働きをする認知症薬はありませんでした。
今回の薬の投与対象は軽度認知障害の人や早期のアルツハイマー病患者に限られており、すべての認知症患者の約10%未満に相当するとみられています。
このように治療対象について制限はあるものの、若年性認知症の関連団体からはレカネマブによる治療への期待も寄せられています。

それでは、費用や使用条件などのレカネマブにまつわる課題と、特に期待される若年性アルツハイマー病の治療についてご紹介します。

若年性アルツハイマー病の治療への期待

保険適用の決定に先立ち、レカネマブは2023年9月にアルツハイマー病による軽度の認知症などの進行を抑える効能で、製造販売の承認を受けていました。今回、保険適用されたことで、国の医療保険制度により医療機関や薬局に支払われる薬の値段である薬価が決まり、臨床現場で実際の治療に使われるようになったのです。

レカネマブの価格は、患者1人あたり(体重50kgの場合)一年間でおよそ298万円となり、実際の投与にあたっては健康保険と高額療養制度が適用されます。70歳以上で、年収156万円から380万円程度の一般所得層とされる人の場合、実質的な自己負担額の上限は年間で14万円ほどになります。このような補助により患者や家族の負担は軽減されるものの、この認知症薬は依然として高額であることに変わりありません。

一方で、認知症患者とその家族や医療関係者の多くがレカネマブの臨床での使用を待ち望んでいました。特に大きな期待を寄せているのが、若年性アルツハイマー病の患者とその家族です。
若年性アルツハイマー病患者は総じて若く、予後が長い傾向があります。つまり、認知症になってからの人生が長いため、なるべく早期の段階で病気の進行を抑えられるかどうかが大きなポイントとなります。

やはり、費用が課題? 金額に見合った効果があるのか

新薬レカネマブによる効果的な治療が早い段階でできれば、長く仕事を続けられたり、生活の質を維持し続けることが期待できます。そのため、高額な費用は課題ではありますが、治療の効果が見込めれば、将来にわたって長期的な医療費の削減や患者の生活の質向上につながるというメリットが得られるでしょう。

若年性認知症の家族会では、保険適用によるレカネマブの臨床での有効利用に期待しながらも、価格については将来的により使いやすい金額になることを希望しています。国によっては、製薬会社が自由に薬の価格を決められるケースもありますが、日本では、医療用医薬品の公定価格は原則として2年に1度価格改定されることになっており、改定ごとに価格が引き下げられます。そのため、わが国では医療用医薬品は比較的安価な傾向となっています。

今後、レカネマブの価格が患者にとって手の届きやすいものになっていくことが望まれますが、その金額に見合った効果が得られるかどうかを検証していくことも必要です。
認知症の専門医によると、レカネマブの効果については医療的な側面に加え、介護者の負担や患者の社会生活への影響など、幅広い視点での検証の必要性が指摘されています。

必要な人が治療を受けられるための今後の課題

費用以外にもレカネマブの活用には課題があります。
この薬が認知症の臨床現場で有効に使われるには、必要とする人に適切に届かなければなりません。ここで、注意したいのがレカネマブによる治療の対象となる認知症患者には一定の条件があることです。

一口に認知症といっても、その原因になる疾患はいろんな種類があります。そのなかでも、レカネマブを投与できる人はアルツハイマー病を原因とする認知症患者で、脳内にアルツハイマー病の原因物質である「アミロイドβ」の蓄積が認められた人になります。

しかしながら、レカネマブ投与の条件はこれだけではありません。認知症の進行の状況も関わります。
認知症になると、軽度から重度まで、次のように認知機能が低下し進行していきます。

・軽度認知障害(MCI:認知症と診断される前段階)
・軽度の認知症
・中等度の認知症
・重度の認知症

このうち、レカネマブによる治療の対象となるのは、軽度認知障害(MCI)と軽度の認知症の人に限られます。つまり、認知症が中等度以上に進んでしまっている場合は、投与しても効果は見込めないということです。

レカネマブは認知症発症の前段階、もしくは初期の段階で投与することで効果が期待できると考えられています。効果が見込める人へ着実に薬が届くように、健診や検査で条件に当てはまる人を適切に見つけ出すことが大切です。しかし、現状ではそうしたシステムはまだじゅうぶんには構築されていません。
また、レカネマブは脳出血などの副作用の可能性もあるため、こうした新薬による副作用への対応ができる医療機関は限られています。
今後、新しい認知症薬が必要な人に利用されるには、MCIや軽度認知症の検査と副作用も含め治療ができる医療機関の情報、地域での医療連携が重要になるでしょう。包括的な認知症医療の早急なシステムづくりが望まれます。


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