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60歳以上の一人暮らし 孤独死の不安にどう備える? 後期高齢者になる前の心構え

高齢者問題

60歳から一人暮らしの不安に備える

少子高齢化が進むにつれ、わが国では高齢者の単身世帯が増え続けています。国勢調査によると、1980年にはおよそ60歳以上の一人暮らし世帯は約123万世帯でしたが、2020年には約786万世帯となりました。まさに6倍以上の上昇率です。
今後も一人暮らしの高齢者は増えていくことが予想されますが、40年前と共通してみられる現象として、60歳代以降に配偶者との死別により一人暮らしになる人が急激に増えるということです。

60歳代は定年退職や子どもの独立など多くの人にとって節目となる時期ですが、特に女性の場合はこの年代を境に配偶者の死別が原因で一人暮らしをする人が増えていきます。現代では60歳代は現役で働く人も多くまだまだ元気な世代ですが、長寿社会ではここから先の人生も長くなります。一人暮らしの不安へは、60歳代の元気なうちから考えておくべきでしょう。

高齢者が安全に一人暮らしをしていくためのリスク対策や、知っておきたい医療制度に関するポイントなどを紹介します。

不慮の事故に備えるには家の中を安全に

一人暮らしの高齢者にとって、最も避けたいリスクは孤独死ではないでしょうか?
孤独死を防ぐには、不慮の事故や体調の急変への対策をしておくことが欠かせません。

ここでまず、不慮の事故への予防について考えてみましょう。
実は、高齢者の死亡につながる不慮の事故は家庭内で最も多く起きており、事故の種類として多いのが「転倒・転落」「誤嚥による窒息」「溺水」となっています。2022年にはこうした家庭内事故で亡くなった人の6割近くが80歳以上でした。

高齢になるにつれ家庭内事故の死亡率が上がっていきますが、早いうちから自宅内をバリアフリー化し安全性を高めておくのに越したことはありません。
例えば、転倒・転落を防ぐために床を滑りにくい材質のものに替える、床の段差をなくす、階段や段差のある場所には手すりを設置するなどしたいものです。

手すりについては、横手すりは必要になったときにつけた方がいいのですが、玄関の段差や浴室の出入口と浴槽付近、トイレの便器付近などの縦手すりは溺水対策を含め、誰にとっても安全対策になります。

また、誤嚥を防ぐためには日ごろからゆっくりよく噛んで食べることに加え、食べ物を小さく切る、やわらかくするなど、自分の噛む力や飲み込む力に合わせた食事スタイルにしていきましょう。それとともに、歯の治療や口の筋肉を鍛えるなど、口腔機能や嚥下機能の低下を防ぐことも対策になります。

高齢者の事故対策については、こちらの記事もご覧ください。
▼60歳から備えておこう、高齢者のひとり暮らしに潜む様々な危険とは

突然死のリスクを抑えるには 孤立対策も大事

一人暮らしの場合、突然死がそのまま孤独死になってしまう可能性が高いため、突然死対策も孤独死の予防になります。
突然死とは何らかの疾患を発症し、24時間以内に死亡するケースのことです。

突然死の直接的な原因として最も多いのが「心臓・血管系」、次いで「脳血管系」「呼吸器系」の疾患となっており、「心臓病」「高血圧」「高脂血症」「糖尿病」などがリスク要因と考えられていますが、いずれも高齢者に多い病気です。
高齢者は日ごろ元気にしていても、突然の体調不良が起きやすいといわれています。
突然死につながるような急変を避けるためにも、これらの持病がある場合は、しっかりと治療しておくべきです。

また、喫煙も突然死のリスク要因となるため、喫煙習慣のある人は禁煙を心がけましょう。
さらに、暑い時期の熱中症、寒い時期のヒートショックにも注意が必要です。
一年を通してこまめに水分をとるようにし、家の中の温度と湿度を適切に保ち、居室と浴室、トイレなどとの寒暖差をできるだけなくすようにします。

加えて、孤独死対策では体調急変や事故の際の早期発見が大きなポイントとなります。
日常的な安否確認や緊急時の連絡方法について、離れて暮らす家族と相談しておく、近隣コミュニティと関係性をつくっておくなどして、有事の際には孤立を避けられるようにしたいものです。

孤独死対策については、こちらの記事もご覧ください。
▼孤独死をなくしたい! 官民あげての孤独死・孤立死対策とは

高齢者医療制度についても知っておこう

長い老後を安心して暮らしていくためには、医療制度について知っておくことも大切です。
日本の高齢者医療制度では、65歳以上74歳以下の前期高齢者と75歳以上の後期高齢者を対象として分類されていますが、どう違うのでしょうか?
また、65歳、75歳になったときには何らかの手続きが必要なのか気になるところです。

前期高齢者医療制度では、実はそれ以前に加入している健康保険制度とあまり変わりはなく、65歳になったからといって手続きも必要ありません。医療費の自己(一部)負担割合は、一定以上の所得のある人を除き69歳までは3割、70歳以降は2割負担です。

75歳になると後期高齢者制度に加入することになります(65歳以上75歳以下で特定の障害がある人も認定を受け加入できます)が、それまで国民健康保険に加入していた人は自動的にこの制度に加入することになるため、切り替え手続きの必要はありません。
ただし、勤め先の健康保険組合などに入っていた人は、従前の保健組合からの脱退手続きなどが必要になるケースがあります。
どのような手続きが必要かは加入している保険組合にご確認してください。

後期高齢者制度についての問い合わせ先は、居住する市区町村か後期高齢者医療広域連合になります。
後期高齢者制度での自己負担割合は原則1割で、所得に応じ2割、もしくは3割負担になりますが、医療費の自己負担を抑える高額療養費制度があるので、上手に活用したいですね。
こうした制度についても、詳しくは市区町村か後期高齢者医療広域連合に確認してください。

医療制度については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
▼後期高齢者医療を考える。認知症で高額療養費、自立支援医療制度は使える?

人生100年時代と呼ばれて久しく、健康寿命の延伸も進むなか、老後と呼ばれる時期がとても長くなりました。
老後を一人で安全に暮らしていくためには、後期高齢者になる前から備えていくことが大切です。

▼高齢者の孤独死が増加? 原因と対策を考える
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