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高齢者がうまく体温調節できない理由は自律神経の乱れ? 高齢者特有の健康問題とは

高齢者問題

加齢による体温調節機能の低下と健康リスク

高齢になると体温を調節する機能が低下するといわれています。それは、暑さ寒さに体がうまく対応できなくなるということです。 環境の変化にあわせスムーズに体温調節できないと、さまざまな健康リスクを招きます。また、やっかいなことに体温調節機能が落ちていることに、自分では気づきにくいのです。

こうしたことから、体温調節機能の低下は高齢者特有の健康問題につながりますが、その対策には温度環境を整えるなど周囲の配慮も必要になります。なぜ、加齢により体温調節機能が衰えるのか説明し、高齢者特有の健康リスクと周囲が配慮するべき対策をご紹介します。

高齢になると体温調節がうまくできないのはなぜ?

歳をとると寒暖差を感じにくく、うまく体温調節ができなくなるのはなぜでしょうか? それには、加齢にともなう次のような理由があげられます。

●温度に対する皮膚の感度が弱くなる
人の体は皮膚が気温を感知し、それを脳に伝えて体温を調節しますが、歳をとると皮膚の感知機能が衰え、温度の情報が正しく伝わらなくなります。その結果、体温調節機能が損なわれ、気温の変化に対し適切な対応ができなくなる可能性があります。
そのため、猛暑の日に体感的に温度が高くないと感じていても、実際には熱中症になってしまうなどのリスクがあるので注意が必要です。

●汗や血流の増加スピードが遅くなる
高齢になると発汗や血流の量の増加が遅くなります。
本来であれば、体内に熱がたまると汗をかいたり皮膚の血流量を増やして熱を発散します。血液には全身に熱を伝える役割があり、暑い時などは血管を拡張させて血流を増やし、皮膚から体外に熱を放出させています。しかし、歳をとるうちに汗腺が小さくなり、血液量も少なくなっていきます。それにしたがい、汗や血流の増量のスピードが遅くなり熱を放出する働きが低下し、体温調節ができにくくなります。

●体内に溜めておく水分量が少なくなる
汗や血液になる水分量の少なさも、高齢者の体温調節を妨げる要因のひとつです。
加齢により喉の渇きを感じる機能や体内に水分を溜めておく能力が衰えるため、高齢者は水分不足になりがちです。

●自律神経の乱れ
自律神経は体のほとんどの器官を意識とは関係なく自動的にコントロールする神経で、呼吸や血圧、体温などを調節しています。加齢により自律神経も老化し、季節の変わり目などにはその働きが乱れやすくなるといわれています。
また、認知症も自律神経に影響します。自律神経の乱れによって、暑くないのに体が熱くなり大量に汗をかくなどといった症状が起きることもあります。

体温調節できないと、こんな健康リスクが!

体温調節がうまくできないと、さまざまな健康リスクを招きます。体温調節機能の異常はちょっとした体の不調だけでなく、生命に関わるような深刻な事態につながることを知っておきましょう。

例えば、夏の暑いときに体内の熱を発散するために適度に発汗できなかったり、喉の乾きに気づかず水分補給が遅れると熱中症になってしまいます。2022年の総務省のデータでは、熱中症により救急搬送された人のうち約55%が65歳以上の高齢者でした。

また、冬場など冷え込みに気づかず、じゅうぶんに着込まなかったり部屋を暖めないでいると、低体温症や感染症のリスクが高まります。熱中症ほど知られていませんが、低温による死亡の懸念もあります。毎年1000人以上の人が低体温症により死亡していますが、この死亡者数のうち高齢者の占める割合が年々増加しています。

さらに、体温調節機能の衰えは感染症の重症化リスクも高めます。若い人であればインフルエンザなどの感染時には高い熱が出るものですが、高齢者の場合、熱が高くならず重症化に気付くのが遅れたというケースが多くみられます。特に新型コロナなど重症化の危険性がある疾病にり患しても、気が付かずに医療機関への受診が遅れる場合もあるので、十分な注意が必要です。

高齢者の健康管理 体調のチェックポイント

高齢者は他の世代と比べ体温調節がうまくできないことから、以上のようなリスクへの対策を含めた健康管理をしたいものです。しかし、体温調節機能の変化は自覚しにくく、高齢者自身のみで体調管理とリスク対策をするのはむずかしいといえます。
そのため、周囲の人が本人の体調や生活環境を観察しながら、配慮することが重要です。

高齢者の体調管理のために、日々、このようなポイントを観察しましょう。
・体温、顔色、食欲の有無
・心拍数、血圧、体重(いつもと変化がないか)
・適度に水分が取れているか(1日分の摂取量目安/2〜2.5リットル)

高齢になると、体調がよくなくても体温がさほど高くならないことがあります。顔色や血圧、食欲など、ふだんと比べて変化がないか全般的に見るようにしましょう。
また、喉の渇きを自覚していなくても、定期的な水分補給を習慣づけることも大事です。65歳以上の1日あたりの水分摂取目安は食事で1リットルに加え、それ以外で1〜1.5リットルです。起床時や食事、入浴前後など、1日のうちで水分をとるタイミングを決めると習慣化しやすくなります。

高齢者の生活環境では温度管理が大切

体温調節機能の低下にともなう高齢者特有の健康リスクへの対策では、生活環境への配慮も欠かせません。
家の中では次のポイントに気をつけ、健康的に過ごせるよう環境を整えていきましょう。

●室内の温度・湿度を適切に保つ
・温度・湿度の目安:夏期25〜28℃/45〜55% 冬期20〜22℃/45〜55%
・場所による寒暖差をなくす
・日あたりのよさ、換気はできているか
・気候に適した服装をしているか

高齢者は寒暖差を感じにくくなっているため、日々の生活環境での室温管理が重要になります。加えて、湿度も暑さ寒さに大きく影響するため同様に管理が必要です。
温度・湿度の管理にあたっては、エアコンの設定温度に頼るのではなく、室内に温度計や湿度計を設置して客観的にチェックするようにしましょう。
また、同じ部屋でも日あたりのよい場所とそうでない場所があるのと同様に、風通しや部屋の間取りによっても温度が違うことがあるので、複数温度計を用意します。
冬場は感染症予防の観点からじゅうぶんな換気が必要ですが、その際に室温が下がり過ぎないよう工夫しましょう。さらに、ヒートショック対策として家の中での寒暖差(例:冬場、寝室は暖かいのにトイレは寒いなど)をできるだけなくすことも必要です。

冬に流行しやすい感染症や温度と湿度の管理についてはこちらもあわせてお読みください。
▼高齢者が注意するべき冬の健康トラブルとは
▼室温と湿度 高齢者一人暮らしの大敵を考える
▼高齢者施設の暖房設定温度はどれくらい? 寒さ対策は?

加齢によりうまく体温調節できないのは仕方のないこととはいえ、以上のような深刻な健康リスクにつながる恐れもあります。高齢者本人だの自覚や対策だけではむずかしい問題もあるので、周囲もサポートと生活習慣や環境を整えていくことが大切です。

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