若年性アルツハイマーになりやすい人とは? 性格や病歴にも関係あり?
高齢者問題
増えているのは、高齢者の認知症だけじゃない?
超高齢社会の日本では、高齢者人口の増加に伴い認知症患者が増え続けていることは、社会にとっての課題となっています。
高齢になるほど認知症の有病率は上がることから、認知症は65歳以上の高齢者の病気といったイメージが強いものの、64歳以下の世代でも発症するケースもあります。
64歳以下で発症する認知症を若年性認知症といい、近年、若年性認知症を患う人が増えているのです。
若年性認知症の症状は高齢者の認知症と変わりなく、原因疾患もアルツハイマー病が最も多いなど高齢者の認知症と共通することが多い一方で、また違った問題が伴います。
アルツハイマー病を原因とする若年性認知症を「若年性アルツハイマー」と呼びますが、近年の研究ではこの病気になりやすい人の傾向がわかってきました。
若年性アルツハイマーの症状や原因、発症リスクなどを知り、予防につなげましょう。
若年性認知症の現状と特徴は?
若年性認知症は64歳以下で発症する認知症ですが、患者数はどの程度なのでしょうか?
2017年〜2020年にかけて行われた東京都健康長寿医療センター研究所の調査によると、2018年時点での18歳から64歳の患者数は3.6万人、人口10万人に対する有病率は50.9人と推計されています。また、厚生労働省による推計では、2009年時点の18歳から64歳までの有病率は47.6人/10万人でした。
全体としてはおよそ10年で若干の増加になりますが、有病率は45歳を過ぎたあたりから年代ごとに増加し、60歳から64歳までの有病率をみると2009年は189.3人だったのに対し、2018年には274.9人と約1.5倍となっています。
若年性認知症は高齢者の認知症と同じように、原因となる疾患によってタイプ分けされます。
2017年?2020年の調査では若年性認知症の原因疾患の60%近くをアルツハイマー病が占めており、高齢者の認知症と同様の傾向を示しています。
若年性認知症に特有の問題とは
原因や症状、加齢とともに発症リスクが高まるのは高齢者の認知症と共通するものの、若年性認知症には特有の問題がいくつかあります。
一つ目の問題として、初期症状に気づきにくく早期発見しづらいということです。
若年性認知症は進行が速いものの、早期に治療を始めることで進行を遅らせることができます。
高齢者の認知症と同様に早期発見・早期治療が重要ですが、認知機能の衰えから仕事や家事でミスをしても現役世代の場合、疲れのせいと思い認知症に思いいたらないことがあります。ほかにも、うつや更年期障害ではないかと受診をためらうことで診断や治療が遅れてしまい、気づいたときには症状が進行していたというケースがあります。
二つ目に、経済的な負担も問題となります。
64歳以下では多くの人が就労していますが、認知症発症のために休職や退職を余儀なくされることが少なくありません。
加えて、同居する家族も介護のために仕事を減らすなど、世帯で経済的に大きな負担を抱えることになってしまいます。
三つ目の問題としては、就学中の子どもいる人が発症した場合、介護や経済的な負担が子どもの進学や就職などに大きく影響することが考えられます。
このように、若年性認知症の発症は本人のみならず、周囲の家族への大きな負担となる可能性があるのです。
このようなことから、国も若年性認知症の本人や家族への支援を進めており、都道府県ごとに相談窓口を設け「若年性認知症支援コーディネーター」を配置しています。
全国の相談窓口はこちらをご覧ください。
https://y-ninchisyotel.net/wp-content/uploads/jyakunen_coordinator20230511.pdf
また、40歳以上で認知症と診断された場合、介護保険によるサービスの利用申請が可能です。
詳細は、居住する市区町村の介護保険課や地域包括支援センターにご相談ください。
若年性アルツハイマーの発症リスクを知る
若年性認知症は、発症すれば本人および家族の生活に大きく影響することから、何よりも予防が大切です。
ここからは、若年性認知症の大半を占める若年性アルツハイマーの予防についてみていきましょう。
アルツハイマー病は、脳内にアミロイドβというタンパク質が蓄積することで発症します。
この蓄積が起こる理由として考えられるのが、運動不足と思考・記憶・判断などの知的活動の低下です。
加えて、糖尿病や高血圧、肥満などの生活習慣病や、喫煙、不規則で偏った食事、睡眠不足、アルコールの過剰摂取といった生活習慣も発症に影響します。
これらの病歴や生活習慣に加え、協調性のない人や引きこもりがちな人は他者とのコミュニケーションによって脳を活性化する機会が少ないため、アルツハイマー病に限らず若年性認知症になりやすいといわれています。
こうしてみると、若年性アルツハイマーになりやすい人の傾向、つまり何が発症リスクになるのかがわかりますね。逆にいえば、これらの発症リスクが予防のヒントになります。
現役時代も老後も生活習慣が認知症予防のカギ
認知症予防のカギは生活習慣の見直しです。
生活習慣病がある場合はきちんと治療し、「適度な運動」「十分な睡眠」「バランスのよい食事」「禁煙」「適度な飲酒」を心がけ、健康的な生活を目指しましょう。
また、脳を活性化させるためには、「新しいことやものに興味を持つ」「考え方を柔軟にする」「人づきあいをする」ことも有効です。
これらは高齢者のアルツハイマー型認知症の予防にも共通します。
アルツハイマー病の原因物質「アミロイドβ」は病気発症の20年前から溜まり始めるといわれています。
したがって、アルツハイマー病の予防には、年代を問わず長年にわたり生活習慣を整えていくことが基本といえるでしょう。
現役時代の健康的な生活習慣が、老後の認知症予防にもつながるのです。
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