脳トレで快適な老後を! 高齢者の脳トレとワーキングメモリの関係とは
認知症見守り
加齢とともに低下するワーキングメモリとは
脳は使っていないと衰えるといわれています。脳にはさまざまな機能がありますが、その中でも特に老化が早いとされているのがワーキングメモリです。
ワーキングメモリは読み書きや計算をはじめ、問題解決や意思決定など自立して生活する上で欠かせない能力ですが、加齢とともに低下していきます。また、アルツハイマー型認知症では、ワーキングメモリが低下し続けていくことが知られています。
そういわれると歳をとることが不安になりますが、脳トレなどで脳を刺激することで、ワーキングメモリの維持や改善が可能です。
脳トレによってワーキングメモリを鍛えることで認知症の予防効果も期待でき、近年では初期の段階であればアルツハイマー型認知症の症状を改善する可能性もわかってきました。
そこで今回は、ワーキングメモリとはどのようなものか、その維持や改善のために大切なことや、ワーキングメモリの改善に効果的な脳トレ法などをご紹介します。
生活していくために欠かせない能力
人間の脳はいくつかの領域に分かれていますが、そのうち前頭前野と呼ばれる領域の機能のひとつがワーキングメモリです。
ワーキングメモリは、目の前にある課題を解決するために必要な情報を一時的に保管し、活用する能力のことで、作業記憶などとも呼ばれます。つまり、短期的な記憶と考えるプロセスを統合する能力といえるでしょう。
ワーキングメモリでは言語的な情報、視覚や空間に関する情報に加え、作業記憶や自分自身の行動・考えといった情報を短期的に保持します。例えば、読書をしているとき、すでに読み終えたページの内容を把握しながら次のページへと読み進めることができるのは、ワーキングメモリの働きによるものです。
ワーキングメモリは「読み書き」「計算」「言葉の理解」「学習」「課題解決」「計画立案」「判断」など、認知機能を使う多くのタスクに欠かせない能力です。その能力が高いほど、複雑な認知的タスクをこなせるとされています。
一方、その能力が低下すると、日常生活を送る上でさまざまな支障が出てくると考えられます。
ワーキングメモリをつかさどる前頭前野には、脳の他の領域をコントロールする機能も持ち合わせています。そのため、ワーキングメモリを鍛えることで前頭前野を刺激し、脳全体の活性化につながることが期待されているのです。
ワーキングメモリの維持・改善に大切なこと
自立した快適な老後を送るためには、認知症の予防が大切です。
そのためにも、ワーキングメモリの維持・改善をしていきましょう。
まず、生活習慣を見直すことから始めます。
改善には次のようなポイントがカギとなります。
・アルコールの摂取を控え、禁煙する
高血圧や糖尿病、心臓病などの生活習慣病は脳にも影響があるため、コントロールすることが推奨されます。
・健康的でバランスのよい食生活を心がける
特に抗酸化物質を含む緑黄色野菜や柑橘類・イチゴ・キウイフルーツなどの果物、ビタミンBを含む肉類や魚類、ナッツ類などの食品が有効とされています。
・質のよい睡眠をしっかりとる
睡眠が足りていないとワーキングメモリは低下します。
・適度な運動
ウォーキングなどの有酸素運動を行うことで、脳の血流が活発になり、脳機能の改善が期待できます。
・ストレスの少ない生活を心がける
不安な状態が続くと慢性的なストレスにより、ワーキングメモリの容量を占領されてしまいます。リラックスできる時間をつくるなど、ストレスがかからない生活を心がけましょう。
・認知的トレーニング(脳トレ)を行う
ワーキングメモリの改善が期待できます。
ワーキングメモリを鍛える脳トレとは
脳トレとワーキングメモリの関係について、もう少し詳しく説明しましょう。
国内外の研究により、脳トレにはワーキングメモリの働きを向上させることが明らかになっています。また、脳トレによるワーキングメモリへの効果は短期間で得られ、数年以上にわたり持続することもわかりました。
このことから、脳トレには認知症の予防効果が期待できるといわれています。
では、具体的にワーキングメモリをきたえるための脳トレには、どのようなものがあるのでしょうか?
実は、脳トレにはそれほど特別なものは必要ありません。例えば、一人でもできるものでは、クロスワードパズルや計算ドリル、語学学習などがあります。複数の人数で行うものでは、しりとりなどがワーキングメモリの改善に有効とされています。語学学習などをグループで行うのもよいでしょう。
何かの作業に集中したり、手を動かしたりすることでも前頭前野は活性化します。
そういうことでは、ぬり絵やなぞり書きもおすすめです。
認知機能が衰えると指先の動きも鈍くなってくるので、手や指、肩を動かすことは身体的なトレーニングやリハビリにもなります。
認知的トレーニングは半年に1回行うだけでも効果が望めるといわれていますが、専門家によると、1回15分程度のトレーニングを週3?4回行うのが最も効果的とのことです。こちらを目安に継続して行うようにしましょう。
脳はワクワクしたり、楽しいと感じているときに活性化し、気持ちも積極的になります。そのため、脳トレは楽しんで行うことが大事です。いやいやながら取り組んでも効果はありません。自分からやってみたいと思うこと、興味の持てることに取り組んでみましょう。
ワーキングメモリの維持・改善のためには、体の健康も欠かせません。
バランスのよい食事と適度な運動などに脳トレを加えて、健康的な生活習慣づくりを心掛けることが大切です。
▼認知症予防に効果がある脳トレ!どんなものがある?
▼アルツハイマー初期に光明? ワーキングメモリーを鍛えて認知症を予防改善
▼脳トレで快適な老後を! 高齢者の脳トレとワーキングメモリの関係とは
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