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ブレインフォグとはなにか? コロナ後遺症の現状と期待される治療法は

高齢者一人暮らし

新型コロナの後遺症に悩む人は意外と多い

5月から季節性インフルエンザと同等の5類感染症に分類されることになった新型コロナウイルス感染症。
もはや、それほど恐れる必要のない病気といった印象がありますが、依然として高齢者が感染した場合の重症化率や致死率は高いままです。
また、一定数の人が回復後の後遺症に悩まされています。

国内外のデータによると、新型コロナに感染した20歳以上の人のうち、女性の10.6%、男性の5.4%が後遺症を経験しているとのことです。 新型コロナ感染症の後遺症は数ヶ月にわたり長引く傾向にあり、WHO(世界保健機関)では、「新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2カ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないもの。通常は発症から3カ月経った時点にもみられる(*)」と定義しています。

新型コロナの後遺症は、人によってさまざまな症状がみられますが、大きくはこの3種類に分類されます。
・循環呼吸症状:息切れなど
・耳鼻咽喉症状:味覚障害、嗅覚障害など
・脳神経症状:いわゆるブレインフォグなど

これらの症状のうち、ブレインフォグに代表される脳神経に関する症状は治りにくく、放置すると認知症に移行する可能性があるといわれています。
コロナ後遺症についてはまだわかっていないことが多いものの、コロナ禍から3年が経った最新の治療法はどうなっているのでしょうか?
気になるブレインフォグと認知症の関係や、治療の現状などについてお伝えします。

*引用:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000992352.pdf

コロナ感染でブレインフォグが起きる原因

直近の新型コロナウイルス感染症第8波はオミクロン株によるものでしたが、この変異株では感染後、多くの人が後遺症を経験しています。 そのうちおよそ22%の人が記憶障害や認知機能の低下などのいわゆるブレインフォグを訴えています。ブレインフォグは、集中力や注意力、思考力が低下し、脳の働きが鈍くなる、まさに頭の中に霧がかかったような状態です。

コロナ感染の後遺症としてブレインフォグなどの脳神経症状が起きるのは、ウイルスが脳や神経に影響を与えるためです。その理由として、現在ではまだ仮説の段階ですが、有力な説とされているのが「持続感染」です。
持続感染とは、感染後、PCR検査などで陰性になっても体のどこかに潜伏したウイルスが継続して感染や炎症を起こさせることをいいます。
この持続感染によって後遺症が長く続くケースがあるのです。
アメリカでの研究によって、最長230日にわたり肺以外の場所で増殖したウイルスが確認されたり、感染後に軽症だった人の脳の血管に炎症が起きることがわかりました。つまり、脳の血管で慢性的な炎症が起き、それにより脳神経がダメージを受けると考えられます。

コロナ後遺症の治療法の現状は?

一年近く症状が続くこともある脳神経系のコロナ後遺症ですが、今のところ治療法は確立していないため、患者それぞれの症状にあわせた対症療法を行なっていくことになります。
また、日常生活の中でできる改善の取り組みとして「よく休息をとる」「有酸素運動」「バランスの取れた食事」「睡眠の質の改善」などがあげられます。
カウンセリングや薬物療法が有効な場合もありますが、個々の症状に応じた適切な治療を受けるためには、医師による診断が欠かせません。

やっかいなことに、ブレインフォグの症状は本人・周囲ともにわかりづらいことも少なくありません。
なんとなくぼーっとすることがあっても、疲れのせいと思い見過ごしてしまうこともあるようです。

コロナ感染後に違和感や倦怠感が続く場合は、ためらわずに受診することをおすすめします。
また、コロナから回復した人の様子が感染前とは少し違うなと感じられる場合には受診を促すようにするなど、回復後も家族など周囲による見守りは重要になります。

ブレインフォグやそれに伴う疲労感に対しての治療法の研究は進められており、直近では「rTMS」と呼ばれる新しい治療法が注目されています。
これは、患者の頭皮の上から磁気の刺激を与え、脳内の神経の活動を調節するという治療法です。rTMSによる治療はすでにいくつかの医療機関で行われており、これまで薬物治療などであまり改善がみられなかった患者への効果が認められています。
ただし、この治療を行うかどうか、また脳のどの部位に治療を施すかは医師による事前の検査や診断が必要です。
ブレインフォグなどの治療については、この他にも動物実験でワクチン接種が脳のダメージを抑える効果があることがわかりました。また、治療薬の臨床試験の動きもあります。

コロナ後遺症の治療法が確立するまでには今しばらく時間がかかりそうですが、今後もコロナ後遺症とその治療法に関する研究は進んでいくと考えられます。
後遺症の種類にもよりますが、症状が長く続いてもたいていの場合、改善していくので、医師と相談しながら治療を続けることが大切です。

新型コロナは認知症の新たなリスク?

加えて知っておきたいのが、脳神経系以外の後遺症に限らず、新型コロナ感染は認知症のリスクになり得ることです。
最近の研究では、新型コロナに感染した人がアルツハイマー病になるリスクはそうでない人と比較すると2倍以上といわれています。
また、感染した人のうち「高齢者」「重症だった人」「3ヶ月以上にわたり嗅覚障害がある人」は認知症になる可能性が特に高いとされています。

こうしたことから、新型コロナ感染症の予防は認知症予防にも繋がるといえるでしょう。
また、重症化のリスクを避けるためにも、高齢者はできる限り新型コロナに感染しないことが何より重要です。
これからも感染状況をみながら、ワクチン接種と感染対策をしっかりと続けていきましょう。


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