看取りと孤独死の現実 高齢者が安心して最期を迎えるために必要なこと
安否確認
孤独死と多死社会 誰もが安心して最期を迎えるために
超高齢社会となったいま、高齢の単身世帯が増え、孤独死が社会問題となっています。また、今後、年間死亡者数が大幅に増加し、病院だけでは看取りのニーズに対応できなくなると見込まれています。いわゆる多死社会の状況です。
すべての高齢者が安心して最期を迎えられるようにするには、孤独死につながる孤立対策と自宅や施設における看取りへの対応が求められます。孤独死を防ぎ、増大する看取りニーズにどう応えるか、社会全体で持つべき視点、地域における連携や見守りの重要性について考えます。
社会問題化する高齢者の孤独死 原因と対策は
孤独死と似た概念の言葉に孤立死がありますが、実は、いずれも統一された定義はありません。行政や報道などでは、「誰にも看取られずに亡くなり、ある程度の日数を経過した後に発見される」といった意味合いで使われています。政府による孤独・孤立対策のワーキンググループでは、単身世帯で亡くなった人のうち、死後8日以上経って発見された事例について、生前からコミュニティで孤立していた可能性が非常に高いとしています。自宅で一人で亡くなったまま、何日もたって発見されるということは、日常の中でときどき様子を見に来たりする親戚や友人がいなかったと推察されるのです。
全国の統計をみると、孤独死した人が最も多いのは東京都で、次いで大阪府、神奈川県、愛知県となっており、人間関係が希薄になりがちとされる都市部で多く発生していることがうかがえます。東京都監察医務院の統計によると、東京23区内における65歳以上の単身高齢者のいわゆる「不審死」のケースは、2012年には2,733件でしたが、2022年には4,868件とおよそ1.8倍に増えていることがわかりました。これらの案件すべてかどうかは不明ですが、孤独死のケースが多く含まれていると思われます。
こうしたことから考えられるのが、定期的に出かける場所がない、会う人がいないといった社会的孤立の延長線上に孤独死があるということです。したがって、孤独死を防ぐには、地域コミュニティにおける人と人との連携と見守りが重要になります。
*孤独死対策については、こちらもご参照ください。
▼孤独死をなくしたい! 官民あげての孤独死・孤立死対策とは
多死社会の到来 看取りの場所が足りない?
少子高齢化と人口減少がかつてない速さで進むなか、孤独死と同様に見過ごせないのが「多死社会」の問題です。2023年には高齢化率が29%を超え、年間を通して非常に多くの人が亡くなっています。
これまでは看取りのほとんどが病院で行われてきましたが、国の医療費抑制や地域包括ケア推進を目的とした診療報酬改定など政府方針による早期退院の促進が背景となり平均在院日数が短縮し、医療依存度の高い高齢者が自宅へ戻るケースが増えているのです。そのため、これからは病院だけでは看取りの需要に追いつかないことが予想され、家庭や介護施設での終末期ケアが不可欠といえます。
さらに、核家族化や単身世帯の増加、老老介護などによって家族による介護の負担も大きくなり、伝統的な家で看取るという形もむずかしくなっています。その一方で、住み慣れた場所で尊厳を保ち最期を迎えたいと望む人は少なくありません。
このような状況に対応するために、国も地域包括ケアを通じて看取り体制の整備を進めています。地域包括ケアシステムとは、「医療・介護・予防・住まい・生活支援」が一体となって、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし、最期を迎えることができる体制を整える仕組みです。その中で、在宅や施設での看取り介護は、多死社会において誰もが自分らしい最期を迎えるための重要な基盤の一つとされています。
看取り介護は、利用者の「人生の最終段階」として、本人の意思・価値観をふまえて、できるだけ苦痛を減らしながら、尊厳を保って住み慣れた自宅または施設で最後を迎えるためのケアです。本人と家族をとりまく状況が変化していくのに応じ、マンパワーを含む地域の資源を結集し、医療、介護、療養場所などを柔軟に選べる体制づくりが進められています。
*こちらもご参照ください。
▼看取り介護とは? いま、特養やグループホームに求められる役割
家族同居でも孤独死のリスク? 孤独死対策も看取り介護も見守りが基本
看取り介護も孤独死対策も、根本にあるのは高齢者を地域から孤立させず、日常的に見守り合えるつながりを築くことといえます。ここで注意したいのが、見守られるべきなのは単身高齢者だけに限らないことです。同居人がいるにもかかわらず孤独死が起きるケースが報告されています。一人暮らしではなくても孤立や孤独死のリスクがあるのです。
その背景となっているのが、老老介護(高齢者同士の介護)や認認介護(認知症の人同士の介護)。介護する側である同居人が入院したり、認知症になってしまうなどにより、体調変化に気づけないまま発見が遅れるケースがみられます。これにも社会的孤立が深く関わっているといえます。
こうした孤独死を防ぐために最も大切なのは「見守り」です。単身世帯はもちろん、夫婦や家族と暮らしている世帯でも、地域やサービスとのつながりが希薄であれば孤立死のリスクは高まります。普段から介護サービスや地域との交流を持ち、民生委員や近隣住民の目が届く環境をつくることが予防につながります。
さらに、離れて暮らす家族を支える手段として、ITを活用した見守りシステムの有効性も指摘されています。例えば、センサーを活用した見守りシステム「いまイルモ」はプライバシーに配慮しながら、安否確認や生活状況のモニタリングを行い、社会的孤立のリスク低減や安心感の提供に役立つ補完的な仕組みとなり得ます。
結局のところ、孤独死を防ぎ、安心できる最期を迎えるためのカギは「地域で高齢者を孤立させないこと」です。その第一歩として、日常的な見守り体制の構築が不可欠だと考えられます。
*こちらもご参照ください。
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