インフルエンザ流行に備える 高齢者が特に注意するべき症状のサインとは
高齢者問題

高齢者はインフルエンザに感染しても気づきにくい?
本格的な冬の到来を前に、全国では複数の自治体でインフルエンザ流行が警戒レベルを超えています。厚生労働省の調査では、今年は例年より流行が早く、11月の時点で全国の小中学校で学級閉鎖・学年閉鎖が相次いでいます。通常は1月前後にピークを迎えることが多いインフルエンザですが、今季は感染拡大が前倒しで進んでおり、予防接種前に罹患してしまった人も増えていると報告されています。
いつもに増して、この冬はインフルエンザ対策を徹底したいものです。特に高齢者はインフルエンザに感染すると重症化しやすいといわれていますが、感染しても気づきにくいケースがあるのをご存知でしょうか?
「隠れインフル」と呼ばれるものですが、インフルエンザに感染しているのに典型的な症状がみられないため、感染に気づかないまま、受診が遅れ症状が悪化してしまったり、ふだん通りに生活するうちに感染を広めてしまったりすることがあります。これでは、感染した本人にとっても、周囲にとっても、健康リスクを高めることになってしまいます。このような冬の健康リスクを防ぐためのインフルエンザ対策を紹介します。
高齢者に多い「隠れインフル」、その理由は?
インフルエンザの一般的な症状といえば、38℃を超えるような急な発熱、せき、のどの痛み、強い倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛などですが、高齢者には感染してもこうした症状が出にくいケースが見受けられます。高齢者は、いわゆる「隠れインフル」になりやすく、その大きな理由は免疫機能の衰えです。人の体の免疫力は20歳代をピークに年齢を重ねるごとに低下し、60歳代ではピーク時の半分程度になってしまうといわれています。
免疫機能が低下すると、体温を上げるなどウイルスと戦う力が弱まり、症状が出にくくなります。また、高齢になると、体内で熱をつくる機能が弱くなり、基礎体温が低くなる傾向にあります。そのため、高齢者はインフルエンザに感染しても高熱が出ないケースが少なくありません。実際、2010〜2011年の調査では、B型インフルエンザに感染した65歳以上の人のうち、5人に1人は37.5℃以上の発熱がみられなかったと報告されています。
ここで注意したいのが、熱が高くないからといって軽症とは言い切れないという点です。高齢者の場合は、むしろ体がウイルスに十分に対抗できていないサインと考えるべき場合もあります。症状が出にくいことで感染に気づかず受診が遅れ、肺炎などを併発するおそれがあります。また、高齢者には慢性的な疾患を持つ人も多く、そのような人がインフルエンザにかかった場合は、重症化のリスクがさらに高まるとされています。
高齢者のこんな症状に要注意 インフルエンザのサインかも

こうしたことから、インフルエンザ流行期には、本人だけでなく家族など周囲の人も高齢者の感染を見逃さないよう気を配ることが大切です。では、どのようなことに注意すればいいのでしょうか?
高齢者の感染対策では、体調の「ふだんとは違う」変化に注目することが重要です。高熱をはじめとする典型的な症状がなくても、これらのサインがみられればインフルエンザが疑われることがあります。
<高齢者向けインフルエンザチェックリスト>
・微熱
・ふだんより元気がない、倦怠感
・ふだんより食欲がない
・水分を摂る量が減った、尿量が減った
・息切れ、呼吸数の増加、胸の痛み
・ふだんより反応がにぶい
・せん妄(幻覚が見える、興奮、ぼんやりするなど一時的な意識の混乱)
このような症状があらわれたら、すみやかに医療機関を受診しましょう。特に、息切れや胸の痛み、意識の混乱は重症化のサインとなる場合があります。早めの受診が悪化を防ぐことにつながります。
なぜ、高齢者にとってインフルエンザ対策が重要なのか
奈良県立医科大学の統計資料によると、2017年9月から2020年8月までのインフルエンザの年代別死亡率は59歳以下が0.03%なのに対し、65歳〜69歳は0.12%、85歳〜89歳は1.77%、90歳以上は3.06%と急上昇していることがわかりました。年代別の重症化率も同様の傾向にあります。また、心臓病、慢性呼吸器疾患、糖尿病、腎臓病、肥満などの基礎疾患があると、インフルエンザにかかった際に肺炎など死亡につながる合併症を起こしやすくなります。高齢者には、これらいずれかの基礎疾患を持つ人が少なくありません。
このことから、インフルエンザは高齢者にとって生命を脅かすおそれのあるリスクといえます。特に基礎疾患のある高齢者にとって、生命を守るためにインフルエンザ対策をしっかり行う必要があります。
*こちらもご参照ください。
▼インフルエンザによる死亡者の多くが高齢者ってホント?
感染と重症化を防ぐために大切なこと
高齢者のインフルエンザ対策では、「かからないようにする」、「かかってしまっても重症化させない」ことが大きなポイントになります。感染を予防するための基本の対策は、手洗い、手指の消毒、マスクの着用です。これら基本の対策を日常生活の中で徹底しましょう。また、栄養バランスのよい食事、適度な運動、良質な睡眠といった健康的な生活習慣により、体力や健康状態を保つことが大事です。
さらに、感染そのものを防ぐだけでなく、罹患しても症状を軽くしたり、重症化や合併症を減らす効果があるとされているのが、ワクチンの予防接種です。高齢者や慢性疾患を持つ人では、毎年の接種が特に推奨されています。
また、もし「接種予定だったがその前にインフルエンザにかかってしまった」という場合でも、回復後の再接種や次期シーズンに向けた接種をあらためて検討する価値があります。年齢や既往などの条件にもよりますが、ワクチンは重症化予防の重要な手段です。接種時期や健康状態については、かかりつけ医と相談してください。
*こちらもご参照ください。
▼新型コロナとインフルエンザの同時流行? 高齢者はインフル予防接種が必須!
重症化を防ぐためには、早期受診もカギになります。万一、インフルエンザと疑わしいサインに気づいたら、早めに受診するようにしましょう。
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