心拍数の平均は? パルスオキシメーターの正常値とは? 高齢者の突然死を防ぐために知っておこう
高齢者一人暮らし
知っておくことで役立つバイタル情報
「バイタル」という言葉をご存知でしょうか?
バイタルとは「バイタルサイン」の略で、人の生命維持について最も基本的とされる情報を意味します。バイタル情報は、多くの場合、体温、血圧、心拍数、呼吸数を指します。急な体調の異変はこれらの数値にあらわれることが多いため、高齢者の日ごろからのバイタル情報を知っておくことは、いざというときの備えになります。
また、最近パルスオキシメーターというものもよく耳にしますが、これもバイタルに関係するのか知りたいところです。この機会に、バイタル情報とはどのようなものか知り、パルスオキシメーターなどについても知識を深めておきましょう。
バイタル情報とは何を数値化したもの?
まずは、バイタル情報とはどのようなものか少し詳しく説明します。通常は、この4つをいいます。
・体温:言葉どおり体の温度のことで、生命を維持するために欠かせないものです。人間の体には、体温の変化を一定の範囲内に保とうとする機能があります。これが体温調節ですが、調節できる範囲を超えてしまうと生命が脅かされます。
・血圧:心臓から送り出された血流が動脈の内側に加える圧力のこと。上下の血圧とよくいわれますが、上の血圧は収縮期(最高)血圧とも呼ばれ、心臓が収縮し、血液を最も勢いよく送り出すときの血圧です。下の血圧は拡張期(最低)血圧とも呼ばれ、心臓がゆるみ、いったん送り出した血液が心臓に帰ってくるときのものです。
・心拍数:一定の時間内に心臓が拍動する回数を指します。拍動は、ポンプのように収縮と拡張をくり返す心臓の動きのことです。脈拍は心臓の拍動に連動します。
・呼吸数:一定の時間内での呼吸の回数です。呼吸は、肺を通して生きていく上で欠かせない酸素を体内に取り込み、消費したあと不要な老廃物である二酸化炭素を排出する働きです。
バイタルの正常値とは? どんな数値だと要注意?
このようにバイタル情報は、生命維持に欠かせない基本的な働きを数値であらわすものです。年代別に正常値とされるものが学会などにより示されており、測定したバイタル値が正常でない場合は、健康上何らかの異常があると考えられます。
例えば、突然死の原因の多くとされる心不全は高血圧によって引き起こされることがありますし、心不全に陥ると安静時でも心拍数が増えるようになります。
とはいえ、同じ年齢でも人によって正常値はバラつきがあるため、バイタルの正常値は一定の範囲として示されます。そこで、健康トラブルに早めに気づくためには、年代別バイタルの正常値の範囲と自身の正常値を知っておくことが必要です。65歳以上の高齢者の正常/異常とされるバイタル値の目安はこのようになります。
<体温>
正常値:36〜37℃ 前後
異常値:38℃ 以上、または35℃ 以下
<血圧(家庭での測定)>
74歳未満
正常値:収縮期125/拡張期75mmhg 未満
異常値:収縮期125/拡張期75mmhg 以上
75歳以上
正常値:収縮期135/拡張期85mmhg 未満
異常値:収縮期135/拡張期85mmhg 以上
<心拍数(脈拍数)>
正常値:1分間につき60〜70回
異常値:1分間につき100回以上、または60回以下
<呼吸数>
正常値:1分間につき12〜28回
異常値:1分間につき24回以上、または12回以下〜無呼吸
*その他、高齢者の呼吸の異常については、速さやリズム、1回の呼吸の深さなどにも注意が必要です。いつもの呼吸との違いに気づいたら、早急に医師に相談しましょう。
バイタルチェックで自身の正常値を知ろう
バイタルサインを測ることをバイタルチェックといいます。バイタルチェックは家庭でも行うことができ、その方法を紹介します。いずれも安静で落ち着いた状態で計測してください。
<体温>
体温計で、できるだけ毎日同じ時間帯に測るのが基本です。食事や運動などの後は体温が上がるため避け、朝起きた直後に測るのがおすすめです。
<血圧>
家庭用血圧計を用意しましょう。食事や運動などの後は避け、毎日同じ時間帯に測ります。
<心拍数(脈拍数)>
血圧計のほとんどは血圧と同時に心拍数も測れます。血圧計がない場合は、手首や首のつけ根などに指や手のひらを当て測ります。安静にして15秒間心拍数を数え、その回数を4倍します。
<呼吸数>
「吸う、吐く」を1回として、1分間での回数を数えます。リラックスしているときに計測を意識しないようにして、家族など誰かに測ってもらうとより正確です。
このような方法で、ふだんから体温や血圧などを測る習慣づけが大切です。なるべく毎日測定し記録すれば、血圧や心拍数などの平均値を出すことができます。この平均値が自分の正常値です。ただし、異常値が出たときは、すみやかに受診するようにしましょう。
パルスオキシメーターは何を測定するもの?
ところで、最近、注目されているパルスオキシメーターとは、どのようなものでしょうか? パルスオキシメーターは動脈血酸素飽和度(SpO2)と心拍数を計測するための医療機器です。酸素飽和度は肺から血液中にどれだけ酸素を移し体へ送られているかを示すもので、肺炎になると肺がダメージを受け、酸素飽和度は下がります。パルスオキシメーターによるSpO2の測定値は肺炎の重篤化の可能性を知るための手がかりとなり、96〜99%が正常値とされていますが、これをもとに病状を判断するのは専門家でなければむずかしいものです。 新型コロナウイルス感染症により自宅などで療養する人に配布されたことから、感染の有無を知るために家庭でもパルスオキシメーターを求める動きがありましたが、本来、医療の専門家の判断にもとづき使用するもので、感染したかどうかを調べるものではありません。
新型コロナの感染リスクも残る現在、医療や健康に関するさまざまな情報が発信されていますが、高齢者の健康を守る上で大切なのは日ごろの積み重ねです。バイタルチェックを続けることで、異常をいち早く見つけ受診につなげるようにしていきましょう。
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