関連ワード

自律神経の乱れと体温調節障害! 高齢者の大敵「季節の変わり目」に注意

高齢者問題

高齢者は季節の変わり目が苦手?

年齢とともに季節の変わり目に体調を崩すことが多くなった?― そう感じることはありませんか?

そうであれば、その原因は自律神経の乱れによる体温調節障害かもしれません。自律神経は、生命を維持するためのさまざまな体の機能や働きをつねにコントロールしている神経です。自律神経の乱れがあるといろいろな形で体調不良としてあらわれるといわれています。

寒暖差がはげしい季節の変わり目には、自律神経が乱れやすく、他の世代に比べ高齢者は不調を訴える人が多いようです。

季節の変わり目の体調不良と自律神経の関係について説明し、この時期を高齢者が元気に過ごすためのヒントを紹介します。

季節の変わり目の体調不良の原因は?

季節の変わり目は高気圧・低気圧の入れ替わりに伴い、気温の高低差が大きくなることが多く、高齢者に限らず、体調を崩しやすくなるものです。

1日のうちや日ごとの寒暖差が大きいと体温の調節がむずかしいからですが、体に備わった体温を調節する機能は年齢を重ねることで低下していきます。そのため、若い世代にはさほど影響しない程度の寒暖差が、高齢者には負担になってしまうことが少なくないのです。

また、高齢者は、皮膚の感覚の衰えなどから、暑さ寒さを感じにくくなっていますので、自覚がないままに体温調節障害の状態におちいり、本人も周囲も気づいたときには重度の熱中症になっていたというケースもあります。

この他にも、体温調節がうまく機能しないことによる心身への悪影響はさまざまとあり、それが高齢者の場合は、ちょっとした体調不良で済まず、大きな健康被害につながることもあるので注意が必要です。

このように、体調を維持していく上で体温のコントロールはとても重要になりますが、これに大きく関わっているのが自律神経です。

高齢者にとって特に危険な季節の変わり目は?

高齢者は体温調節機能が低下しているため、温度が大きく変化すると体調を崩しやすくなります。そのため、高齢者にとって季節の変わり目は自律神経のバランスが乱れやすく、健康リスクが高まるため注意が必要です。

特に冬から春へと季節が移る時期は、「三寒四温」と呼ばれるように暖かい日と寒い日が交互に訪れ、気温が激しく上下します。この急激な寒暖差が「寒暖差疲労」と呼ばれる体調不良を引き起こすことがあります。

寒暖差疲労とは、体温調節を担う自律神経が気温の変化に対応しようと過剰に働くことで、エネルギーを多く消費し、心身に不調をもたらす状態を指します。具体的な症状には、疲労感や倦怠感、頭痛、めまい、肩こりなどの身体的不調に加え、イライラや気分の落ち込みといった精神的な影響も見られます。

こうした不調を防ぐためには、バランスの良い食事を心がけることが重要です。特に、エネルギー回復に役立つ良質なタンパク質やビタミンB群を積極的に摂取しましょう。良質なタンパク質を多く含む食品には、肉、魚、乳製品、卵、大豆製品があります。ビタミンB群はレバー、肉、魚介類、野菜、未精製の穀物などに含まれています。

また、質の良い睡眠をとり、規則正しい生活を送ることも大切です。入浴時にはゆっくりお湯に浸かってリラックスし、自律神経を整える習慣を心がけましょう。

体温調節ができない! 高齢者特有の原因とは

高齢になると体温調節がうまくできなくなるのはなぜでしょうか?主な理由は以下の通りです。

・皮膚の温度センサーの感度低下:皮膚には気温を感知して脳に伝えるセンサー機能があります。皮膚の温度センサーが感知した情報を基に、脳が血流や発汗を調整して体温を維持します。しかし、高齢になるとこのセンサーの感度が低下し、脳に正確な温度情報が伝わらなくなるため、体温調節が難しくなります。

・発汗量や血流量の調整の遅れ:通常、暑い時には発汗や血流量を増やして体の熱を放出しますが、加齢により汗腺が萎縮し血液量も減少するため、発汗や血流の増加が遅れ、熱の放出機能が弱まります。

・体内の水分量減少:高齢になると体内の水分保持能力が低下し、水分不足になりやすくなります。これにより汗を十分にかけず、体温を効果的に下げられなくなります。

・認知症による自律神経への影響:認知症が自律神経に影響を与え、体温調節が困難になる場合があります。例えば、アルツハイマー型認知症では日時や環境の認識が困難になり、季節に適した衣類や寝具を使用できないケースがあります。一方、レビー小体型認知症では、不適切な温度環境、皮膚の血管拡張、多汗、寝汗といった症状が現れ、低体温を引き起こす可能性があります。

このように、高齢者は体温調節が困難になるため、暑さ・寒さに対する十分な対策が必要です。

生命維持に欠かせない自律神経の働きとは?

自律神経とは、どのようなものでしょうか?

私たちの体には、大きく分けて2種類の神経ネットワークがあります。その2つとは、脳や脊髄から全身に指令を出す中枢神経と体中にくまなく張りめぐらされた末梢神経で、自律神経は末梢神経のひとつです。自律神経は、体温の調節をはじめ、内臓の動きや呼吸、代謝、血液の循環など、全身のすべての内臓や器官の働きを休むことなくコントロールしている、生きていく上で欠かせない神経です。

自律神経は交感神経と副交感神経から成り立ち、その連携によって体の機能を調整します。交感神経は主として日中に優位になり、脈拍を速める、血圧を上げる、筋肉を緊張させるなどして、心身の活動を促します。

一方緊張が続くことによってぜんどう運動のバランスが乱れて腸の働きが低下することもあります。

これとは、逆の働きをするのが副交感神経で、夜間に優位になり、脈拍や血圧を下げ、筋肉をゆるめるなどの働きで心身を休ませます。また、副交感神経には胃腸を活発化させ消化をうながし、免疫力を高める作用もあります。

体温を調節することも自律神経の役割のひとつです。

人の体は暑いときには汗をかいたり、寒いときには血管を収縮させて熱を発生させたりすることで体温を調節します。これは、交感神経と副交感神経がバランスよく作用することで、気温の変化にあわせて体温を同一に保とうとする働きです。

このバランスが崩れると、寒暖差にうまく適応できなくなってしまいます。いわゆる自律神経のバランスが悪い状態です。

自律神経の乱れによるこんな症状に要注意

高齢者は自律神経の働きが低下しているので、少しの寒暖差に適応できず、心身へのダメージを受けやすくなっています(皮膚の機能も低下し、寒暖差を感じにくくもなっている)。

季節の変わり目には、自律神経の乱れによって、食欲がなくなったり、下痢、便秘などの胃腸の症状、うつ、無気力、睡眠障害など精神的な症状、発熱、だるさなどの全身症状が起きることがあります。このうち、高齢者に起きやすい3大症状といわれているのが食欲不振、発熱、だるさで、次のような注意が必要です。

・食欲不振:脱水や低栄養につながる恐れがあるので、食事制限がない限りは、多少偏食になっても、食べやすい、好むものを食べるようにしましょう。

・発熱:感染症や脱水症が原因の可能性も。高齢者は急激に悪化することもあるので、こまめな見守りと水分補給が必要です。

・心身のだるさ:特に、心臓病、貧血、うつ病などがある人は悪化しやすいとされています。

加えて、体温調節がうまくできないと、低体温症(異常に体温が低くなる)や熱中症のリスクが高くなり、インフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。
若い人では、季節の変わり目に体調不良があっても少し休養をとれば回復することが多いのですが、高齢者の場合は休んでも回復しなかったり、急に悪化することもあるので、以上のような症状があれば、経過をよく観察し、変化があればすみやかに受診することをおすすめします。

自律神経の乱れを予防しよう

加齢による自律神経の衰えは仕方ないように思えますが、少しでも元気に季節の変わり目を乗り切るために、自律神経の乱れを予防する方法があります。そのポイントは次の3つですが、いずれも毎日の生活の中に取り入れて予防にお役立てください。

・生活のリズムを整える:規則正しい食事、睡眠を心がける
・体を冷やさない:(適切な温度と時間で)ゆっくりと入浴する、飲食物は冷たいものは控えめにして温かいものを
・適度に体を動かす:ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を1日15分程度行う(激しい運動は逆効果)

高齢者の場合、季節の変わり目のちょっとした不調が寝たきりのきっかけになってしまうことがあります。日ごろからの生活習慣を整えて、自律神経の乱れを予防して健やかに過ごしましょう。

寒気あり! 熱なし! 自律神経の乱れで体温調節ができない?

自律神経が乱れると体温調節がうまくいかず、発熱していないのに寒気がするなどの症状が現れることがあります。

例えば、風邪などの病気ではないにもかかわらず寒気があり、熱がない場合は、自律神経の乱れが原因かもしれません。

自律神経が乱れて寒気がするのは、体温調節機能が正常に働かないためです。自律神経は気温の変化に応じて体温を調整しますが、ストレスや不規則な生活習慣によりバランスを崩すと、交感神経が過剰に働き、血管が収縮し続けて血流が低下します。その結果、手足や内臓の温度が下がり、全身が冷えて寒気が起きるのです。

この寒気は数分で収まる場合もあれば、数日続くこともあります。また、じっとしているときに寒気を感じやすいのも、自律神経の不調による特徴です。体温が低下すると免疫が弱まり、風邪などの感染症にかかりやすくなるだけでなく、下痢や不眠、肩や首のコリなどの症状が現れることもあります。

自律神経の乱れでは、寒気以外の症状も多岐にわたります。それらは身体的症状と精神的症状に分けられます。

<身体的症状の例>
頭痛・めまい・耳鳴り
動悸・息切れ
食欲がない・胃痛
便秘・下痢
手足のしびれ
疲労感
不眠 など

<精神的症状の例>
興奮しやすい・イライラする
気分の落ち込み
焦燥感・不安 など

寒気とこれらの症状がある場合は、自律神経失調症が疑われます。ただし、自律神経の乱れによる症状は個人差が大きく、必ずしもこれらの症状が出るわけではありません。

また、人によっては、ほてりやのぼせといった異なる症状が現れることもあります。一方で、強い頭痛や吐き気、高熱を伴う場合は、別の病気の可能性があるため、早めに医療機関を受診してください。

自律神経の乱れによる寒気を改善するにはどうすればよいでしょうか?
寒気の原因は体の冷えです。したがって、改善には体を温めることが重要です。特に自律神経の不調による寒気では、手足だけでなく内臓も冷えがちなので、体の内外を温めるよう心がけましょう。

具体的な方法
・体内から温める:冷たい飲食物を控え、飲み物は白湯や常温の水を。ごぼう、にんじん、かぼちゃ、玄米、納豆、キムチ、紅茶など、体を温める食材を積極的にとる
・適度な運動をする:血流をよくし、体温を上げるためにウォーキングや水泳などの有酸素運動を行う
・腹巻やカイロでお腹を温める:内臓の働きをよくし、冷えによる下痢を防ぐ
・入浴時はお湯にゆっくりつかる:38〜40℃の浴槽に20分程度つかり、血流を促す
・入浴中や入浴後のマッサージでさらなる血行改善を図る

これらの対策を実践し、冷えを放置せず早めにケアすることが大切です。
自律神経の乱れによる心身の不調は、高齢者に限らず誰にでも起こり得ます。早めのケアが重要ですが、つらい症状を感じた場合は、生活の質が損なわれる前に無理をせず受診することをおすすめします。


こちらもあわせてお読みください。
▼熱中症が原因? 白内障リスクが4倍に? 高齢者のセンサーで見守りを
▼えっ、こんな意外な原因も? 一人暮らしの高齢者こそ熱中症にご用心!
▼高齢者は特に注意が必要! 熱中症かなと思ったら、何をするべき?
▼高齢者の熱中症対策、「かくれ脱水」に要注意!
▼高齢者安否確認に欠かせない熱中症対策 センサー見守りでさらに安心
▼熱中症の季節到来! 高齢者の一人暮らしに限界?
▼高齢者の熱中症は重症化しやすい!? 謎の発熱、うつ熱に気をつけて
▼ヒートショックにご用心! 高齢者の安全な住まいは浴室がポイント?
▼ヒートショックの症状とは? 後期高齢者は心配? なりやすい人や予防方法など
▼ヒートショックによる突然死を防ぐために 見守りのカギはバイタルサイン

その他のおすすめ記事

  • RSウイルス感染症に要注意! 慢性呼吸器・心疾患がある高齢者は警戒を

  • 高齢者の孤独死が増加? 原因と対策を考える

    高齢者の孤独死が増加? 原因と対策を考える

見守り支援システム「いまイルモ」

キーワード