高齢者の夏風邪・肺炎にご用心!エアコンのカビは大丈夫?冷房の温度設定をする前に
高齢者一人暮らし
冷房シーズンの前に、エアコンのカビに注意
蒸し暑い日が多くなりました。これからは熱中症予防やコロナ対策での換気の必要性もあり、エアコンの冷房をフル稼働させることが多くなるかと思いますが、その前にエアコンのお手入れは済んでいますか? 内部にカビが発生したままエアコンを使っていると肺炎を発症する恐れがあります。これは、アレルギー性疾患のひとつ、夏型過敏性肺炎と呼ばれるもので、高齢者は特に注意が必要です。
暑い季節を元気に乗り切るにはエアコンが欠かせませんが、そのためにはエアコンにカビを発生させないことが重要になります。本格的な冷房シーズンの前に、夏型過敏性肺炎とはどのようなものか、エアコンのお手入れの重要性やその方法などについてお話しします。
夏風邪と思っていたら…、夏型過敏性肺炎とは?
冷房を入れるようになってから、冷やし過ぎないように温度設定も気をつけているのに、なぜかせきが続く、体がだるいということはありませんか? こうした夏風邪のような症状が続く場合、それは夏型過敏性肺炎かもしれません。夏型過敏性肺炎とは、「トリコスポロン」と呼ばれる白カビが原因となるアレルギー性肺炎の一種です。
トリコスポロンは、温度20?35℃、湿度60%以上の環境で、ホコリ、ヒトのフケやアカなどを栄養源として発生し、6月から10月ごろにかけて胞子をつくります。ホコリなどが溜まったままの場所が高温多湿になると、どんどん繁殖していくのですが、このカビが発生しやすい典型的な場所とされるのがエアコン内部。
特にホコリが溜まりやすいフィルターは要注意です。内部にカビが発生したまま、エアコンを使用するとカビの胞子を撒き散らすことになります。トリコスポロンの胞子は非常に小さく、空気中に舞ったものを吸い込むと肺の奥まで届き肺炎を引き起こすことがあるのです。
このトリコスポロンによる夏型過敏性肺炎の主な症状は、せき、息切れ、だるさ、微熱で、夏風邪によく似ています。しかし、重症化すると少しの動作でも息切れしたり、息苦しくて眠れないといった状態におちいることもあり、慢性化により肺機能が著しく衰え死にいたることもあります。
主婦(夫)など家にいる時間が長い人がこの肺炎にかかりやすいといわれています。高齢者も家にいることが多く、他の世代に比べ免疫も弱くなっていることから、注意するべき病気です。もし、夏場に夏風邪のような症状が2週間以上続くといった場合は呼吸器の専門医に相談することをおすすめします。
冷房運転の前にエアコン掃除を!
エアコンをつけると肺炎の原因になるカビの胞子が部屋中に舞う…、そう考えると恐ろしいですね。そんなことにしないためには、エアコンのお手入れをしっかり行うことが肝心です。使っていない間にもエアコン内部にはホコリが溜まりますし、温度や湿度によってはカビが繁殖することがあります。冬期の暖房時には内部に部屋の匂いが付着することもあるので、暖房で使用したあとしばらく間をあけて冷房運転を始める前には、エアコンの掃除をしておきましょう。ここで、通常、家庭でできるエアコン掃除の手順を紹介しておきます。
*掃除の前には必ず電源を切ってください。
<フィルター>
フィルターは本体から取り外し、掃除機で付着したホコリを吸い取りましょう。汚れがひどい場合は、中性洗剤を薄めて清潔な柔らかいブラシで洗い、すすいでよく水を切り、陰干しでしっかりと乾かします。
<ルーバー>
ルーバーはエアコン吹き出し口の羽状の部分です。この部分についた汚れは柔らかい布で乾拭きします。
<エアコン本体>
清潔な布で乾拭きが基本ですが、汚れが取れにくい場合や溝など細かい部分の汚れは水またはぬるま湯で濡らした布で拭きます。掃除用ブラシやエアダスターを使うのもいいでしょう。
以上が家庭でできるエアコンのお手入れ方法です。この手順通りにやってもルーバーの汚れが取りきれなかったり、本体内部の汚れが気になる場合、また、すでにカビが発生している場合は自分で掃除してはいけません。汚れの悪化や故障、カビによる健康被害などの恐れがあるので、エアコンクリーニングの専門業者に依頼しましょう。1カ月に数回のエアコンフィルターの掃除、1〜2年の一度の本体内部のクリーニングをするのが望ましいとされています。
さらに、各エアコンメーカーでは冷房シーズン前に家庭での試運転を推奨しています。試運転の方法はメーカーによって異なるので、自宅のエアコンメーカーの取扱説明書やホームページを参照してください。
この夏、気持ちよくエアコンを使うために
ところで、体への負担なく快適に過ごすには、冷房の温度設定はどうすればいいのでしょうか? 環境省が推奨する夏の室内の温度の目安は28℃ですが、これは実際の室温です。エアコンの設定温度と実際の室温が同じであるとは限りません。また、人によって暑さ寒さの感じ方は違いますが、28℃を超えると熱中症のリスクがいっきょに高まります。そこで、室内には温度計を設置し、実際の室温が28℃を超えない範囲で快適になるようエアコンの設定温度を調節しましょう。
このように、夏に向け気持ちよくエアコンを使うためには準備が必要です。とはいえ、高齢者にとっては、自分で試運転の方法を調べたり、高い場所に設置されたエアコンのフィルターを外して手入れするのがむずかしいケースもあると思われます。植木の剪定などと同様に、危険な高所での無理な作業は高齢者にとって禁物。ご自身で危険な高所作業はなさらないようにくれぐれもお気を付けください。転倒によって寝たきり生活に移行してしまう事さえしばしば。お手入れ業者への相談や、フィルター掃除機能がついたエアコンへの買い替えの検討も含め、本格的に暑くなる前に、家族とエアコンの使い方について相談しておきましょう。
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