溶連菌感染症に高齢者は警戒を! 劇症化しやすい「人食いバクテリア」感染症とは?
高齢者一人暮らし

非常に高い致死率、人食いバクテリア感染症とは
最近、ニュースなどで話題となっている「人食いバクテリア」という感染症をご存じですか? この「人食いバクテリア」と呼ばれる「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の感染者はこの数年間で急増しており、国立感染症研究所の報告によると2023年には患者数がこれまでで最多となり、2024年ではさらに増え続けています。
この「溶血性レンサ球菌」とはいわゆる溶連菌のことで、溶連菌(以下、「溶血性レンサ球菌」と同義)は誰でも持っている常在菌の一種として、鼻の穴や喉に存在します。一般的な溶連菌の感染症では喉の炎症や発熱、発疹などの症状で済むことがほとんどで、無症状の場合も少なくありません。しかし、ふだん細菌がいない血液や筋肉などに菌が侵入すると、まれに「劇症型溶レン菌感染症」を引き起こすことがあります。劇症とは、激烈な症状をともない体の組織が壊れやすくなった状態です。
劇症型溶レン菌感染症になると、きわめて短時間のうちに症状が悪化します。手足の壊死や多臓器不全などを起こし、発症から2日以内に亡くなってしまうケースも多く、致死率はおよそ30%。インフルエンザの致死率が0.01%ともいわれることを考えると、この劇症型の感染症がいかに恐るべきものであるかがわかります。こうした激烈な症状や高い致死率といったことが「人食いバクテリア」と呼ばれるゆえんです。
ささいなキズから人食いバクテリアに感染、重篤な症状に
劇症型溶レン菌感染症はどのようにして起こるのでしょうか?
通常の溶連菌感染症はどの世代にもみられ、子どもが咽頭炎を発症することもあります。咽頭炎を起こすような溶連菌感染症では、唾液の飛沫などに含まれる溶連菌を吸い込むことで感染します。劇症型の場合、手足のキズなどから菌が体内に侵入することで感染し、発症すると考えられています。手足のキズ、すりキズ、床ずれ(褥瘡:じょくそう)、虫刺され跡、靴ずれ、水虫(足白癬)などから菌が侵入しますが、キズやケガの大きさは関係なく、ささくれ・あかぎれといったほんのささいなキズが侵入経路になることもあります。しかし実際には感染経路がよくわからないケースも多く、飛沫感染への注意も呼びかけられています。
まず溶連菌が体内に入ってくると、手足のキズが痛んだり、腫れたりします。次いで、39度を超える高熱、意識障害が起き、さらに感染が進行すると筋肉の壊死が始まり、肝臓や腎臓などの臓器が機能しなくなります。進行が非常に速いのがこの感染症の特徴で、壊死が始まるまで数日、早ければ1日で進行します。
治療には、ペニシリンなど抗生物質の投与と壊死部分の切除が必要になります。壊死の範囲が広ければ手足の切断も行われます。進行の速さと30%という致死率の高さを考えると、人食いバクテリアから命を守るには、速やかに医療機関を受診することが何よりも重要です。
高齢者は特に注意が必要? 感染の条件は?
劇症型溶レン菌感染症は60歳代から80歳代の高齢者が多く、高齢になるほど死亡リスクも高くなります。また、糖尿病などの基礎疾患がある人も劇症化しやすいとされています。高齢者は若い世代に比べ抵抗力が低く、基礎疾患がある人も多いため、総じて劇症化のリスクが高いといえるでしょう。持病のない健康な人がちょっとしたキズから感染した例や、寝たきりの高齢者が床ずれのキズから感染した例も報告もされています。
また、専門家によると、劇症型溶レン菌感染症を発症した人のうち足周辺から感染した人が多く、水虫や靴ずれなど、小さなキズ口から感染したとみられています。
予防と早期の治療につなげるポイント

以上のことから、高齢者は特に感染に注意が必要ですが、溶連菌はどこにでもいるため完全に遮断することはむずかしく、この感染症を予防するワクチンもありません。
感染の予防法は、手洗いとアルコール消毒が基本となります。また、マスクの着用も有効です。以下の点も加えて、注意してください。
<予防法>
・手足をこまめに洗い、清潔に保つことが最も大切です。水虫や靴ずれなどの足の異常があれば、早めに治療しましょう。
・手足にケガやキズ、虫刺され跡、腫れがないか日常的にチェックし、キズなどがあれば適切な処置や治療を施し、キズ口を清潔に保つことが必要です。
・屋外では素足で歩かないようにし、キズのリスクを避けましょう。
・寝たきりの人を介護する際は、床ずれが起きないよう定期的に確認します。
感染した場合、生命を守るためには一刻も早く適切な治療を受けることが欠かせません。早期治療に必要なポイントも抑えておきましょう。
<早期治療のために>
・発熱や意識障害がなくても、手足の腫れや痛みが急速(1時間単位)に広がる場合は、早めに医療機関を受診します。
・39度を超える高熱や意識障害(ぼーっとする、うわ言を言うなど)がある場合は、ただちに救急車を呼びましょう。
劇症型溶レン菌感染症は進行が速いため、早期発見と早期治療が重要です。手足に強烈な痛みやしびれが出た場合はためらわず救急車を呼ぶなど、速やかに医療機関を受診しましょう。
劇症型溶レン菌感染症の予防法は、基本の感染症対策に加え、なるべくケガをしない、ケガやキズがあれば適切な処置と清潔に保つことが重要になります。これからの季節は裸足になることも多く、虫刺されなどのリスクもあります。以上の予防と早期治療のためのポイントを参考に、高齢者だけでなく周囲の人たちも一緒に情報を共有し、家庭や施設ごとでも対策をしていきましょう。
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