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高血圧だと認知症になりやすいって、ホント? 高齢者の血圧対策を考える

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高齢者に高血圧が多い理由

日本人に多いとされる高血圧。その患者人口のほとんどを65歳以上の高齢者が占めています。高齢者が高血圧になりやすい主な理由に、年をとるにしたがい血管の柔軟性が損なわれることがあげられます。血管が柔軟でなくなると血液の流れが悪くなり、血液を送り出すために心臓が収縮したときの収縮期血圧が高くなってしまうのです。

平成26年度の厚生労働省による統計調査の結果では、高血圧で治療を受けた全ての人のうち、実に76%が65歳以上でした。とはいえ、このデータは高血圧の治療を受けた(受けている)人を対象にしたもの。加齢により血圧が高めになるのは自然なことです。高血圧の状態になっていても特に自覚症状がないことが多いため、気づいていない・気づいていても何もしないで放置している人もいると考えられます。

自覚症状がないとはいえ、高血圧はさまざまな健康リスクにつながり、そのリスクには重篤な病気も含まれます。また、高血圧だと認知症になりやすいこともわかってきました。健康で長生きするためには、高血圧の予防や治療をしっかりと行うことが大切です。そこで、高血圧にともなうリスクと予防・改善のための血圧対策を知っておきましょう。

高血圧にはリスクがいっぱい?

高血圧の状態になると、つねに血管の壁に強い圧力がかかることで、徐々に血管壁は硬く厚くなり動脈硬化が進みます。そうなると、血管はより硬く、血管の内部はせまくなり、さらに血圧が上がります。こうした悪循環におちいると、いろんな臓器に合併症(障害)を引き起こしますが、細い血管の多い臓器ほど早い段階から影響を受けます。その合併症には、次のようなものがあります。

脳:脳の血管が詰まる脳梗塞、血管が破れる脳出血
眼(網膜):眼底出血などによる視力低下
心臓:冠状動脈の動脈硬化による狭心症、心筋梗塞、心臓の壁が厚くなることによる心不全
腎臓:腎機能の低下

これらの合併症には死に直結するものもあり、いったん起きてしまうと治すのがむずかしく、命が助かっても後遺症が残ることも少なくありません。そのため、合併症を発症する以前に高血圧の治療をすることが重要なのです。

認知症の発症リスクも

このように高血圧の合併症はいずれも重篤なものになりますが、このうち脳梗塞などの脳血管障害は脳血管性認知症の発症につながります。したがって、高血圧であると脳血管性認知症を発症する可能性が高いことが、以前から指摘されていました。認知症には、脳血管性の他に、アルツハイマー型、前頭側頭型、レビー小体型の3つのタイプがあります。最近の研究では、高血圧の人はこれらすべてのタイプの認知症になりやすいことが明らかになってきました。

とはいえ、たとえ高血圧になっても、高齢になる前から適切に服薬するなどして血圧をコントロールしておけば、将来の発症リスクを低減できることもわかってきています。

健康的な血圧値は?

高血圧の合併症である脳卒中や心筋梗塞は死にいたることも多く、また認知症は生活の質を著しく低下させます。いずれも高齢者が発症しやすい深刻な病気なので、ぜひとも予防したいものです。そのためには、高血圧にならないよう血圧対策をすることが大切です。

では、具体的には、血圧をどの程度にコントロールすればいいのでしょうか?
詳しくは、個別のケースにあわせて医師が患者と相談して決めますが、一般的には、高齢者の場合、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」による目標値は次の通りです。

・74歳まで  診察室血圧:140/90未満  家庭血圧:135/85未満
・75歳以上  診察室血圧:150/90未満  家庭血圧:145/85未満
*収縮期血圧(最高血圧)/ 拡張期血圧(最低血圧)、単位=mmHg
*糖尿病や腎臓病などがある場合、目標値はより低くなることがあります。

血圧がこの目標値より高ければ治療が必要になります。これ以下の場合でも、健康的な生活を続けて血圧値を維持していきましょう。

血圧対策の基本ポイントを知ろう

高血圧の主な原因はかたよった生活習慣、特に塩分の取りすぎです。そこで、高血圧治療の基本はこの3つがポイントになります。

・食事療法
食塩は血管壁を厚くするなどの作用があるため、食事による血圧対策では、減塩が最も重要になります。塩分の摂取量は1日6g未満に抑える必要があります。調理の際には必ず調味料を計量する、味つけを工夫する、加工食品は成分表をチェックするなど習慣づけましょう。また、野菜を多くとり、脂肪の多い肉や乳製品は控えめに、肉・魚などバランスよく食べるようにします。

・適度な運動
ウォーキングや水泳など適度な運動をすることで、血行をよくし血圧を下げる効果が期待できます。ただし、急に激しい運動をするのは却ってよくありません。運動の仕方や症状によっては適さない場合もあるので、医師と相談の上、始めてください。

・服薬治療
食事療法や運動などで生活習慣を改善しても、あまり効果がない場合は薬も使って血圧をコントロールすることになります。服薬治療は医師の指導のもと、最初は数ヶ月かけて少しずつ血圧を下げていきます。血圧が下がっても、自分の判断で薬をやめてはいけません。

まとめ

高齢者の高血圧では、温度差や水分不足などが引き金となり重篤な病状を引き起こすこともあります。
温度差のある、冬の入浴時やトイレに気をつける・季節に関係なく水分補給を心掛け、脱水症状にならないように注意する・ゆっくりと行動し、ストレスの少ない状態を保てるよう日々平穏な気持ちで生活するようにしてください。

これらのポイントに加え、禁煙とほどほどな飲酒も重要になります。高血圧とその合併症の予防・改善は、早期から血圧対策を始めることでより効果が期待できます。血圧について気になることがあれば、早めに医師に相談しましょう。

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