関連ワード

見当識障害とブレインフォグの関係とは? せん妄との違いは?

高齢者問題

新型コロナウイルス感染後の気になる症状

新型コロナウイルス感染症の5類への変更から半年以上が経過しました。ウイルスの流行は落ち着いてきたイメージがありますが、継続して少なからず感染者は出ており、感染後に後遺症の症状を訴える人が相次いでいます。新型コロナ感染の後遺症の症状には倦怠感や頭痛、味覚障害などがみられますが、岡山大学病院の集計によると、昨年から流行が続くオミクロン株による感染とそれ以前のデルタ株との比較では、オミクロン株にり患した患者様のほうがブレインフォグの症状を訴える人が多いことがわかりました。

ブレインフォグは日本語にすると「脳の霧」。頭の中にもやもやと霧がかかったような感じで集中できない、ものごとを思い出せないといった状態を指します。実は、ブレインフォグは正式な病名ではなく、記憶障害などの脳機能障害の症状を総称する呼び方で、ブレインフォグの症状のひとつに、認知症でもよくみられる見当識障害があります。見当識障害とはどのようなものか、ブレインフォグとの関係とこれと混同しやすいせん妄についても説明します。

日常生活に支障をきたす見当識障害

見当識とは、時間や場所、人間関係、自分の周囲の環境や状況を全体的にとらえて理解する能力のことで、人が日常生活を支障なく送るために欠かせないものです。見当識が正常に保たれていることで「今日は何月何日か」「今日の何時に、誰とどこで会うのか」「自分とその人とはどのような関係なのか」といったように、置かれた状況や関連性を認識し行動できるのです。

しかし、なんらかの原因で脳の神経細胞がダメージを受けると、この能力が低下することがあります。そうなると、周囲の環境や状況にあわせて適切に行動することができず、社会活動や日常生活をスムーズに営むことができなくなってしまいます。こうした状態が見当識障害です。見当識障害が起こると、時間や場所、人などについての感覚(見当識)が失われます。初期の段階では、時間の感覚から損なわれていくといわれています。

時間の見当識がなくなると、いまが何時かといったように時間がわからなくなり、季節や昼夜も認識できなくなることがあります。また、場所の見当識障害では、自分がいまいる場所や行こうとしている場所がわからなくなります。人の見当識障害では、目の前にいる人が誰か認識できず、症状が進むと家族の顔もわからなくなってしまいます。

これらの症状は見当識障害の本人にとっては不安やパニック、徘徊などにもつながるため周囲の人も混乱しますし、生活上の大きなトラブルにもなりかねません。

ブレインフォグの原因は新型コロナウイルスの脳感染

見当識障害の原因の多くがアルツハイマー型などの認知症ですが、劇症肝炎や統合失調症などでも起きることがあります。新型コロナウイルスの流行以降は、感染後の後遺症であるブレインフォグの症状として見当識障害があらわれることがわかってきました。

見当識障害の原因の多くがアルツハイマー型などの認知症ですが、劇症肝炎や統合失調症などでも起きることがあります。新型コロナウイルスの流行以降は、感染後の後遺症であるブレインフォグの症状として見当識障害があらわれることがわかってきました。ウイルスがどのように脳に侵入し、どの程度脳細胞を破壊するのかなどはまだ解明されていません。また、脳への感染のケースは非常に少ないものの、新型コロナ感染では脳がダメージを受ける可能性もあるということです。

見当識障害と似ている? せん妄とは

ここで、見当識障害と混同されやすい「せん妄」と、その違いについてみておきましょう。せん妄は脳機能が乱れることで起こる、軽い意識障害・注意障害です。病気や手術、薬剤、痛みなどによる体への負担が脳の機能を乱れさせる原因になります。

せん妄はどの世代でも起きる可能性がありますが、特に高齢者によくみられ、錯乱や幻覚、幻視、落ち着きがなくなるといった症状があります。

こうした症状から、周囲からは見当識障害と混同されることが少なくありませんが、せん妄は急性で一過性の意識障害です。また、せん妄は急激に発症し、1日の中で症状が変化しますが、多くの場合、治療により数時間から数日程度で症状が落ち着きます。
これに対し、見当識障害は基本的に意識ははっきりしており、徐々に発症し、症状は継続して進行していきます。

せん妄は入院患者の一定数にあらわれるとされ、上述の通りほとんどが一過性のものです。認知症やブレインフォグによる症状とは異なりますが、認知症の人が入院の際にせん妄を起こすケースもあります。逆に残念ながら、コロナウイルスの後遺症によるブレインフォグは明確な原因が分かっていないため、現時点では治療法は明らかになっていません。

高齢者のコロナ感染では感染後も症状の見守りを

ブレインフォグの原因は新型コロナウイルスによる脳細胞へのダメージで、その症状の多くは、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)に共通しています。したがって、高齢者が感染した後に認知症を発症したと思ったら、実はコロナの後遺症だったということもありえます。
以上のことから、高齢者がコロナに感染した際は、感染後も気になる症状がないか見守りが必要でしょう。
後遺症について不安がある場合は、最寄りの保健所や自治体の窓口に相談してください。


▼簡易版認知症チェック!認知症の初期症状?それともただの物忘れ? 
▼認知症の初期症状が出たら、要注意! 
▼嗅覚の衰えは認知症の初期症状 
▼一人暮らしは寂しい? 生きがいと認知症予防 
▼多剤服用が認知症につながる? サプリメントの取りすぎに注意?
▼ワーキングメモリーを鍛えて認知症を予防改善 
▼アルツハイマー型認知症の初期症状を見逃さないために 
▼アルツハイマー型認知症の予防法 
▼BPSDって、なに? 周辺症状とは 
▼これは認知症なのか? 噂のコロナ後遺症「ブレインフォグ」とは
▼花粉症だと思っていたら、コロナ感染? オミクロン型の症状に要注意!
▼高齢者のブレイクスルー感染に注意!面会や帰省に不安?
▼新型コロナとインフルエンザの同時流行? 高齢者は予防接種が必須!

その他のおすすめ記事

  • これは認知症なのか? 噂のコロナ後遺症「ブレインフォグ」とは

  • 認知症の初期症状が出たら、要注意!認知症予防のためには「卒酒」した方がいい?

    認知症の初期症状が出たら、要注意!認知症予防のためには「卒酒」した方がいい?

見守り支援システム「いまイルモ」

キーワード