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高齢者の一人暮らしへの自治体の支援、どんなものがある?

高齢者施設

高齢者の一人暮らしで大切なことは

少子高齢化と長寿化が進む中で、一人暮らしの高齢者が増加しています。しっかりと自立して元気に暮らしている高齢者も多い一方、健康面などに不安を抱えながら一人で生活している方もいます。現時点では元気であっても、年齢を重ねるにつれて体力は衰え、不安要素が増えていくのは避けられません。また、離れて暮らす家族も、高齢の親族や親戚の生活状況に不安を感じることがあるでしょう。

高齢になっても健康で安全に一人暮らしを続けるためには、周囲からの配慮や支援が必要です。現在、介護保険によるサービスに加え、多くの自治体では一人暮らしの高齢者を対象とした支援策が提供されています。

自治体の支援、どんな配慮があればいい?

自治体の支援を利用したい場合は、高齢者本人やその家族が、本人の住む市区町村の窓口に相談するのが基本です。その前に、一人暮らしの高齢者にとって、どのような配慮や支援が必要か、またはあった方が良いかを把握しておきましょう。高齢者が安全に一人暮らしを続けるために注意すべき点は、以下の通りです。

●人とのつながりを保ち、常に安否確認ができる体制を整える
家族と連絡を取る、近所の人と挨拶を交わす、定期的に外出するなど、常に誰かとコミュニケーションをとることは「生きがい」につながる大切なことです。また、緊急時にすぐ連絡が取れるよう、見守りや安否確認の仕組みを整備しましょう。

●食事をきちんと取り、健康を維持する
低栄養による体力低下や疾病を防ぐため、毎日3食、バランスの良い食事を心掛けることが必要です。また、食事中の窒息事故などを防ぐ工夫や、何か事故があった場合の早期発見、そして日々の食事がきちんと取れているかの確認も重要です。

●転倒による怪我を防ぐ
高齢者は転倒により骨折などの大けがを負いやすく、回復に時間がかかる場合や、その結果、寝たきりになることもあります。そのため、転倒を防ぐ取り組みと、万が一転倒事故が発生した際の迅速な対応が重要です。具体的には、事故に備えた緊急通報システムの設置、必要に応じたバリアフリーリフォーム、杖などの補助具の使用を検討しましょう。

自治体支援の最も大事なポイントはやはり「安否確認」

こうしてみると、高齢者への配慮や支援の具体的なポイントが明確になります。高齢者が安心して一人暮らしを続けるためには、先に述べた以下の3点を抑えておくことが大切です。

その中でも、自治体が最も重要な支援と考えているのは、やはり1つ目の「安否確認」ではないでしょうか。全国のほとんどの市区町村では、「人とのつながり(見守り・安否確認)」を維持するためのサービスを提供しています。このサービスの内容は、電話を利用した確認、緊急通報装置の設置、委託業者による見守りなど、自治体により異なりますが、IT技術を積極的に取り入れるなど、各地域でさまざまな創意工夫が行われています。

例えば、2つ目の「きちんとした食事」に関しては、多くの自治体で高齢者向けの食事宅配サービスが実施されており、これが安否確認の一助としても活用されています。

さらに、3つ目のポイントである「転倒による怪我の防止および早期発見」については、転倒事故の早期発見には見守りや安否確認が不可欠です。手すりの設置や段差の解消といったバリアフリーリフォーム、福祉用具や補助具の活用に加え、介護保険サービスや自治体の支援が提供されていますが、いざというときに特に重要なのは、日常的な見守りによる事故の早期発見です。安否確認サービスは、一人暮らしの高齢者支援の最も基本的なポイントと言えるでしょう。

自治体の安否確認サービスの事例

ここで、実際の事例をご紹介しましょう。
北海道亀田郡七飯町では、行政と近隣住民の協力員が連携して一人暮らしの高齢者を見守るコミュニティづくりを目指し、「独居老人等見守り支援事業」を実施しています。この事業では、見守り支援システムとしてIT技術を組み込んだ複合センサー「いまイルモ」が導入されています。

「いまイルモ」は高齢者の自宅に設置され、日常の行動や状況をモニタリングします。そして、そのデータは家族、近隣住民、町の職員によって確認され、何か異変があればすぐに対応できる体制が整えられています。また、「いまイルモ」は現在の状況を観察するだけでなく、センサーの履歴データをグラフ化して確認できるため、生活習慣の見直しや病気予防にも役立ちます。

自治体の高齢者見守りサービス! 最新の状況は?

この他にも、自治体による高齢者見守りサービスに最新のIoT技術が活用されるケースが増えています。緊急時の迅速な通報伝達や、簡単に操作できる連絡手段が導入され、デジタル技術を用いて高齢者の安心・安全な生活を支援する仕組みが整いつつあります。

例えば、2023年に石川県能美市では、複数の家電メーカーやクラウドサービス企業が連携し、エアコンなどIoTを搭載した家電を活用したマルチベンダー型見守りシステムを構築しました。家電に搭載されたセンサーから得られる温度、湿度、明るさなどのデータをもとに、対象者の生活リズムや室内環境を分析します。異常があればただちにケアマネジャーや行政へ通知され、データはクラウド上でグラフ化されることで、安否確認や体調管理に活用されています。

このシステムは、今後に向けて、平時のデータを災害などの緊急時にも活用できるようにフェーズフリー化を進めるとともに、新聞アプリなど民間の見守りサービスとの連携やコールセンターの整備により、支援者がいない高齢者も利用可能な形での拡充を目指しています。

また、兵庫県加古川市では、認知症が疑われる、または認定された高齢者を対象に、IoTを活用した屋外の見守りサービスを提供しています。電波を発信する小型の見守りタグを携帯した対象者が外出中、見守りカメラや市の公用車など、2,000か所以上の市内検知ポイントで位置情報を取得し、その履歴を管理します。見守り対象者の家族はスマホアプリを通じて現在地や行動履歴を確認することが可能です。また、市民のスマホを検知ポイントとして活用する「見守りボランティア」活動も行われています。

「一人暮らし」に限定されない自治体の支援

高齢者本人の住自治体にこのような見守りや安否確認サービスがあれば、ぜひ利用したいものです。ただし、支援の内容や利用資格は自治体によって異なります。さらに、高齢者の個々の状況に応じ、介護保険サービスなど他の支援と併用した方がよいケースも少なくありません。

したがって、自治体の支援やサービスを探す際には、「一人暮らし高齢者」向けに限定せず、高齢者全体に向けた支援策も幅広く確認することが大切です。詳しくは、役所の福祉関連窓口や地域包括支援センターに相談してください。

地域ボランティア・NPO連携の交流プログラム拡充

高齢者が生活の質を落とさずに一人暮らしを続けるためには、地域社会での孤立を防ぐことが重要です。高齢者の孤立解消のために、地域のボランティアやNPO法人による支援も行われています。

NPO法人とは「特定非営利活動法人」の略称で、公共の利益となる活動を行う非営利団体のことを指します。NPO法人の活動分野は、教育、福祉、環境保護、国際貢献など団体ごとにさまざまで、地域社会の課題解消を目指して設立されるケースが多いです。全国には地域密着型の活動を行う団体が少なくなく、近年では自治体や自治体の委託を受けた企業と連携し、各地域で高齢者のサポートに取り組むNPO法人が増加しています。

一人暮らしの高齢者支援に取り組む団体は、調査やヒアリングなどをもとに地域の高齢者のニーズを把握し、それに応じた活動を展開しています。具体的な支援事例としては、以下の活動が挙げられます。

・訪問型サービス
スタッフやボランティアが定期的に高齢者宅を訪問し、話し相手になったり健康チェックを行ったり、買い物や掃除の手伝いを通じて日常生活をサポートします。

・コミュニティサロン、デイサービス
高齢者が地域の人々と交流することで孤立を防止し、健康相談やレクリエーションなどを楽しめる場を提供します。

・地域ネットワークの構築
自治体、医療機関、福祉施設、住民ボランティアなどと連携し、必要な支援がスムーズに届けられる体制づくりに取り組みます。

・情報提供・相談サービス
介護や福祉に関する情報を提供し、適切なサービスへアクセスできるよう支援します。加えて、生活の困りごとを相談できる窓口としても機能します。

・見守り・安否確認サービス
緊急時に迅速に対応できるよう、緊急連絡先や専用の窓口を提供するとともに、見守りカメラやセンサーなどのIT機器を活用して生活状況を把握します。
高齢者が安心して暮らせる地域づくりを目指し、こうした取り組みが各地でNPO法人によって行われています。市区町村によっては、地域で活動する団体のリストをホームページなどで公開している場合もあります。自分が居住する地域でどのようなNPO活動が行われているか知りたい場合は、ぜひチェックしてみましょう。

多世代交流と包括的地域ケアシステムの展開

一人暮らしの高齢者が社会とのつながりを維持し、孤独を解消するためには、地域における世代を超えた交流(多世代交流)が有効です。多世代が参加する交流イベントや地域活動は、包括的なケアシステムづくりにもつながります。

その事例のひとつとして、東京都杉並区の「ケア24と町会の連携」を紹介します。都市部の中でも同区では孤立の問題が深刻で、多世代間のつながりの希薄さが課題となっていました。そこで、「ケア24」は地域包括支援センターとして杉並区に設置され、地域の社会福祉法人、医療法人、NPO法人などの委託を受けて運営され、地域の福祉活動と連携して多世代交流および包括的な支援体制の構築に取り組んでいます。

具体的な活動としては、「ケア24」の職員が町会、子育て団体、高齢者クラブなどと連携し、多世代参加型の「地域まつり」や「ふれあいカフェ」を定期的に開催しています。これらのイベントで出会った方々に対して、後日、個別訪問や支援につなげる仕組みも整っており、保健師、看護師、社会福祉士、ケアマネジャーなどの専門職が中心となって介護や福祉に関する相談や支援を行います。このように、地域の町会や多様な団体と連携し、高齢者を地域で支えるネットワークづくりを進めることで、「ケア24」は杉並区の地域包括ケアシステムの中核を担い、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう支援しています。

*地域包括ケアシステムについては、こちらもご覧ください。
⇒「地域包括ケアシステムとは? 終の棲家で高齢者が安心して暮らすための5つの構成要

こうした人のつながりによる地域ネットワークとIoT技術が融合されることで、医療・福祉・生活支援が連携し、高齢者を含む全世代が安心して暮らせる環境整備がよりいっそう進むと考えられます。


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見守り支援システム「いまイルモ」

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