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水疱瘡ウイルスが引き起こす帯状疱疹に要注意! 高齢者はワクチンによる予防の検討を

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高齢になるほど発症リスクが高まる帯状疱疹

ここ数年間で帯状疱疹を発症する人が増えています。帯状疱疹の原因を引き起こすのは水疱瘡(みずぼうそう)と同じウイルスです。幼少期にかかった水疱瘡のウイルスが体内に潜伏し続け、成年後に激痛や発疹を発生させるのです。帯状疱疹は重症化すると神経痛、失明、難聴につながったり、後遺症として痛みが残ったりする場合もあるので、予防と早期治療が重要な対策となるのです。
帯状疱疹の発症率を年代別にみると、50歳代から増え始めて70歳代がピークとなります。帯状疱疹にかかりやすいのは高齢者であり、重症化もしやすいため注意が必要です。そんな帯状疱疹とはどのような病気なのか、また、高齢者の発症を防ぐための対策を紹介します。

帯状疱疹とは、どんな病気? 発症のメカニズム

水疱瘡と帯状疱疹を引き起こすのは水痘・帯状疱疹と呼ばれる同一のウイルスですが、それぞれの症状が現れる際の状況は異なります。水痘・帯状疱疹ウイルスが体内に入り込んでしまうと、水疱瘡という疾病となって現れます。多くの場合、水疱瘡は子どもの頃に罹患する疾病であり、主たる症状であるかゆみを伴う水ぶくれ状の発疹と発熱が続きますが、こうした症状は1週間ほどで回復します。

しかし、このウイルスは水疱瘡が治っても体内から完全に排除されず、一生にわたって背骨付近の神経に潜伏し続けます。そうして体内で休眠状態となって潜んでいるウイルスは、疲れが溜まるなどして免疫が低下すると再び活性化するのです。再活性化したウイルスは神経をたどって、痛みや発疹を伴いながら皮膚に到達します。これが帯状疱疹の発症メカニズムです。

免疫というのはウイルスや細菌などから体を守るため、私たちの体に本来備わっている防御システムです。この機能はストレス・疲労・加齢などによって低下するため、ウイルスなどを攻撃する力が弱まり、感染症などにかかるリスクも高まります。
水疱瘡の潜伏期間(感染から発症までの期間)は2週間程度ですが、水疱瘡が治癒してから帯状疱疹が発症するまでの期間は人によって異なります。いつ発症するかわからないのはやっかいですが、きっかけとなるのは免疫の低下であり、発症を防ぐには免疫を落とさないことが対策のひとつとなります。

痛みから始まる帯状疱疹の症状

帯状疱疹の初期症状にはどのようなものがあるでしょうか。

・皮膚の違和感、痛み、かゆみ
・発熱、リンパ節の腫れ
・発疹
・水ぶくれ

ピリピリ、ツンツンするような痛みやかゆみが主に体の片側を通っている神経に沿って現れ、その症状が数日から1週間続きます。その後、赤い発疹(皮疹)があらわれますが、このとき、発疹とともに発熱やリンパ節の腫れ、頭痛を伴うことがあります。そして、水ぶくれ(水疱)が増えていきます。水ぶくれは透明から少しずつ黄色い膿が溜まった膿疱に変わり、6〜8日後に潰瘍となって約2週間でかさぶたができた後、それが3週間目以降に取れて快方に向かいます。

軽症なら2〜3週間で自然治癒するケースもありますが、高齢者や免疫が低下している人は重症化しやすく、激しい痛みを伴う後遺症や深刻な皮膚潰瘍が残る可能性もあるので、予防と早期治療は欠かせません。

高齢者が帯状疱疹に注意するべき理由とは

帯状疱疹は発症しやすいことに加えて重症化もしやすい傾向があり、体力が衰え始めている高齢者は特に気をつけたほうがよいでしょう。

帯状疱疹は免疫の低下で発症しますが、免疫は加齢によって低下していくことが知られています。さらに、年齢とともに増加するがんや糖尿病などの免疫力低下を引き起こす病気がある人も帯状疱疹になりやすいといわれており、高齢者が帯状疱疹を発症しやすい理由のひとつと考えられます。

帯状疱疹は重症化による後遺症を考えると発症そのものの予防がベストです。重症化してしまうと、ウイルスが引き起こした炎症で神経が損傷して生じる後遺症のひとつ「帯状疱疹後神経痛」を起こす可能性があります。この後遺症は高齢者に多くみられるもので、いったん症状が落ちついた後に強い痛みが現れて続きます。通常は1〜3カ月で消えますが、10〜20%は1年以上、場合によっては10年以上も症状が続く人もいます。長引く痛みはストレス・不眠・うつの原因になり、QOL(生活の質)を低下させます。

このような観点からも、特に高齢者は帯状疱疹の発症を避けたいものです。また、免疫の低下が発症の引き金になるということを考えれば高齢者だけでなく、高齢者を介護している人も疲労をため込まないようにする必要があるでしょう。

効果的な予防法と重症化させないための対策

帯状疱疹の予防法としては、十分な睡眠と休養をとり、疲労やストレスを溜めないことと、50歳以上を対象にしたワクチン接種が挙げられます。持病がある、疲れやストレスをため込みがちなど、体力に不安のある人はより確実に予防するため、ワクチン接種の検討をおすすめします。ワクチンには弱毒化したウイルスや細菌を使い、体内で増殖させて免疫をつくる生ワクチンと、ウイルスや細菌から必要な成分を取り出し、毒性をなくして作った不活化ワクチンの2種類があります。どちらを選ぶかはかかりつけの医師に相談し、自分の体に合ったワクチンを適切に接種してください。

発症した場合は早期治療が何より大事ですが、帯状疱疹の初期症状は痛みだけです。この段階では肩こりや腰痛と間違え、受診した時に帯状疱疹と診断されないケースも多々あります。そこで知っておきたいのが、痛みとともに発疹が現れたら必ず3日以内に皮膚科を受診するということです。症状に気づいたのが休日の場合は、休日診療所や救急外来を訪ねましょう。

発症のメカニズムからもわかるように、帯状疱疹は人からうつることはありません。ただし、まだ水疱瘡にかかったことのない人だと、患者の水ぶくれ液や唾液を介して接触感染するおそれがあるため、身近に水疱瘡になったことのない小さなお子さまがいる場合は接触を控えるなど、十分ご留意ください。

帯状疱疹は早期発見・早期治療によって後遺症なく治癒可能で、抗ウイルス薬を中心とした治療が有効な疾病です。受診を先延ばしにすると薬の効果が満足に得られなかったり、症状が長引いたりしてしまいます。症状に気づいたらすぐに受診し、十分な休息を心がけましょう。


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