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孤食が生活習慣病の原因に? 高齢者の孤食対策を考える

高齢者一人暮らし

一人の食事は心と体の健康に悪影響?

一人暮らしのため、または家族がいてもなんらかの理由から一緒に食事をしないなど、現代では多くの人が一人で食事をしています。一般的には一人で寂しく食事をすることを孤食といいますが、農林水産省では「週の半分以上1日のすべての食事を一人で食べている」こととしています。
孤食の背景にあるのが一人暮らし世帯の増加などですが、近年の研究で孤食は生活習慣病やうつなど心身の健康被害を招くことがわかってきました。特に問題とされるのが高齢者の孤食のケースです。

高齢化が進むにつれ単身で暮らす高齢者の割合が増えた結果、多くの高齢者が孤食をしていると考えられており、高齢単身世帯の増加は今後も続くことから、高齢者の孤食はよりいっそう増えることが予想されています。
高齢者の健康を守っていくためにも、孤食への対策は必要といえるでしょう。孤食が増えた背景を探り、孤食が高齢者の健康に与える影響とその対策について考えます。

高齢者の孤食が増えている原因は?

高齢者の孤食が増加している背景には何があるのでしょうか?
まず、大きな要因として考えられるのが核家族化や単身世帯の増加など、家族構造の変化と生活や働き方スタイルの多様化です。子世帯と離れて一人で暮らしている高齢者は、当然ながら一人で食事をする機会が多くなります。その上で、加齢による身体的な制約から外出することがむずかしくなり、外食や会食の機会が以前よりも減ったという人もいるでしょう。

また、家族と暮らしていても子世代は共働きで忙しかったり、時差勤務などで生活時間が異なることから、一人で食事をするというケースもあります。
内閣府では、65歳以上の高齢者のうち一人で暮らす人の割合は、2020年には男性が15.0%、女性が22.1%でしたが、2040年には男性20.8%、女性24.5%になると推計しています。この増加傾向は今後も続くとみられ、孤食のケースも増えていくと考えられます。

孤食が高齢者の心と体の健康に与える影響

本来、家族や友人・知人と囲む食卓は、人と交流しコミュニケーションを楽しむ場でもあります。農林水産省の「平成29年度食育白書」によると、世代を問わず、一人で食事をすることについて「生活のペースが違うため仕方がない」「一人で食べたくないが、一緒に食べる人がいない」と答えた人がそれぞれ30%を超えていました(複数回答)。一人の食事を寂しく感じる人が一定数いるということです。

誰かと食事を共にすることを「共食」といいますが、共食の機会が減り孤食になることで、社会的な孤立や孤独感を招くことが懸念されます。孤立や孤独は心の健康によくないのに加え、孤食は生活習慣病など身体の健康にも影響することが国内外の調査研究により報告されています。
農林水産省が2017年に行った「食育に関する意識調査」では、孤食をすることがほとんどない人は孤食の頻度が週2日以上ある人に比べて、食事内容のバランスがよく、食生活において生活習慣病の予防や改善を実践しているケースが多いことがわかりました。
また、2021年に発表された韓国の研究結果から、孤食をしている高齢女性は心疾患のリスクが高くなる傾向にあることが指摘されています。一人の食事は食事の内容が偏りやすく、早食いになりがちなため、肥満や高血圧、コレステロール値の上昇を招き、心臓病を引き起こす可能性が高くなるとのことです。

これらの調査結果にもあるように、一人の食事は栄養が偏ったり、不足しがちです。食材を揃えたり、調理が面倒だったりするのに加え、家族などに偏食を指摘される機会がないためですが、高齢者の場合、栄養の偏り・不足は生活習慣病に加え、フレイルのリスクも高まります。フレイルとは心身が衰弱した要介護一歩手前の状態のことです。

孤食を避けるための支援や工夫とは

わが国では、今後も継続して長寿化と単身高齢者の増加が予想されています。健康寿命を伸ばすためにも、孤食への対策が必須といえるでしょう。

そこで、行政や民間企業・団体による孤食を避けるための取り組みが行われています。そのうちの一つが、地域の高齢者に向けた食事会です。各地で福祉団体や民間企業などが行政の支援を受けながら、共食の場を提供しています。
また、一人で食べることに問題を感じていなくても食事内容が偏っていたり、食材の買い物や調理が困難というケースもあります。そのような場合には、個人の身体の状態に合わせた栄養バランスのよい食事を届けてくれる配食サービスもあり、自治体によっては、介護保険対象者に向けた利用の補助を行なっています。
こうした共食や配食の支援について、詳しくは自治体の窓口や地域包括支援センターなどに問い合わせてください。

さらに、一人の食事を寂しくないようにする工夫も大事です。名古屋大学大学院の研究において、一人で食事をするときに人の話し声を聞きながら食べるのと、聞かずに食べるのとでは、人の声を聞きながら食べる方がよりおいしく感じ、より多く食べられることがわかりました。映像がなくても人の話し声を聞きながらだと、食事をおいしく感じられるとのことです。

このことから、スマホやタブレットなどを使ったオンライン会食でも同様の効果が得られることが期待されるので、離れて暮らす家族や友人・知人とのオンライン会食が孤食の対策になると考えられます。スマホなどがなければ、電話のスピーカー機能を使って会話をしながらの食事もよいでしょう。
まずは、お住まいの自治体などの支援や身近にあるものを活用して、孤食を避ける工夫をしていきましょう。


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