寒の戻りに要注意、高齢者の春の入浴 ヒートショックが起こる原因は寒暖差?
高齢者一人暮らし

「ヒートショック」とは? 交通事故死者数より多い入浴関連死
入浴中、またはその前後に発生する予測しない突然死のことを「入浴関連死」といいます。日本は高齢者の入浴関連死数が多く、「厚生労働省人口動態統計」によれば2023年の浴槽内での死亡者数だけでも6500人以上となっています。
これは交通事故による死者数(2116人)のおよそ3倍にものぼります。
入浴関連死にはいくつかの要因がありますが、そのひとつとして考えられるのが「ヒートショック」です。
ヒートショックは医学的に正式な病名ではありませんが、急激な寒暖差により血圧が大きく変動することで起こる病態です。
消費者庁の資料では、2019年に起きた高齢者の入浴中の死亡事故は冬季に集中しており、1月に最も多く発生しています。
しかし、冬が過ぎれば安心というわけではありません。3〜4月も入浴中の死亡事故は夏場の3〜5倍という高い数値で発生し続けています。これはどうしてでしょうか?
3月・4月も入浴関連死が多いのはなぜ? ヒートショックの危険性は続く
ヒートショックに対しては、家の中の温度差をなくすことが基本の対策です。
こうした理解が広まってきていることもあり、寒い冬には浴室暖房やシャワーなどを使って入浴前に浴室を暖めたり、脱衣所にヒーターを設置したりするご家庭も増えてきました。
しかし春になり暖かくなってくると、冬の間に使っていた暖房器具を早めに片付けてしまったり、浴室を暖めることをうっかり忘れたりするケースもあるでしょう。夜間の浴室・脱衣所はまだ冷え込むことが多く、そうしたなかで無防備な状態で入浴してしまい、ヒートショックによって意識を失い、結果として「家庭内溺死」を招くケースが少なくないのです。4月末ごろまでは、引き続き脱衣所や浴室を暖めるなどの注意が必要です。
「寒の戻り」とは 春特有の寒暖差が血管に与えるダメージ
この時期特有の気象の変化も、入浴関連死に関係していると考えられます。冬の終わりから春先にかけては、寒い日と暖かい日がくり返し入れ替わる、いわゆる「三寒四温」があります。春先は日によって気温が大きく上下するということを表す言葉です。
また、しばらく春らしい陽気が続いたかと思うと、突然、真冬に戻ったかのように寒くなる「寒の戻り」も春特有の現象です。地域にもよりますが、例年、寒の戻りは3月から4月前半にかけて起こります。さらに一日のうちでも、昼間は暖かく夜間は急激に冷え込む日が多いのもこの時期の特徴です。
三寒四温や寒の戻りによる急激な寒暖差は、部屋や浴室の室温にも影響を及ぼします。部屋は暖かくしていても脱衣所や浴室が寒ければ、暖かいリビングから脱衣所に移動した際に血管が急激に収縮して血圧が上昇し、その後、熱い湯に浸かることで今度は血管が拡張して、血圧が急激に低下する危険性があります。
こうしたお風呂での急激な血圧変動は、高齢者のもろく硬くなった血管や心臓に大きな負担をかけ、意識障害や体調の急変につながるおそれがあります。寒い時期が過ぎて春先になってもヒートショックへの対策はおろそかにできないのです。
長湯はダメ? 入浴時の「熱中症」にも要注意
浴室での事故としてもうひとつ注意しなければならないのは、入浴中の熱中症です。長い時間、熱いお風呂に浸かっているうちに熱中症になり、意識をなくしてしまうケースもあります。ある研究報告によると、37℃の体温の人が42℃のお湯に全身浸かった場合、26分で体温が40℃に達することもあるそう。体温が40℃以上になると、熱中症の症状による意識障害のリスクが、さらに42.5℃になると生命に危険が及ぶリスクが高くなるといわれています。

引用:冬の入浴事故に気をつけて(鳥取県)
加齢によって皮膚が熱さを感じにくくなることもあって、「熱めのお風呂で長湯をしないとお風呂に入った気がしない」という方は多いかもしれません。しかし浴室内での熱中症リスクを避けるためにも、湯温は41℃以下、お湯に浸かる時間は10分以内が推奨されています。
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三寒四温、寒の戻りなどにより体が冷えると、お風呂でゆっくりと温まりたいと思うことも多いでしょう。
しかし、暖かい季節になってからの入浴も、ヒートショックや浴室内熱中症への油断は禁物です。季節の変わり目にこそ、入浴環境を見直してみませんか。
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