後期高齢者が急増! 2025年問題と2040年問題が迫るなか、介護難民にならない・させないためにやっておきたいこと
高齢者問題
2025年と2040年に起こる深刻な介護の問題
「2025年問題」として以前から話題になることが多かった2025年まで、あと残りわずかとなりました。そして、その15年後には「2040年問題」がやってくるといわれています。 2025年には日本の人口の多くを占める団塊の世代と呼ばれる人たち全てが75歳以上の後期高齢者となり、国の人口の約30%が65歳以上、そのなかの約18%が75歳以上の高齢者が占めるようになります。 2040年にはその子ども世代にあたる団塊ジュニアが後期高齢者に達します。この時点での65歳以上の高齢者の比率は約35%で、そのなかでも75歳以上の割合は約20%を突破し、高齢化のピークを迎えます。
これから20年以内に高齢者、特に後期高齢者の人口が激増するわけですが、それによって介護に関するさまざまな課題が深刻化することが懸念され「2025年問題」「2040年問題」と呼ばれているのです。
この時期、後期高齢者となっていく人たちとそのご家族にとってとりわけ重要とされるのが、介護難民の問題です。介護難民とは、介護を必要としているのに介護を受けられない人たちのことを指します。 2025年以降、後期高齢者人口の急増とともに介護難民の増加も予想されています。 今後よりいっそう高齢化が進むわが国では、介護難民は多くの人が直面する可能性がある課題です。「2025年問題」「2040年問題」に大きく関わる介護難民とはどのような問題か、そしてその背景とともに介護難民にならないために本人や家族がやっておくべきことをご紹介します。
介護難民の問題とその背景にあるもの
介護難民とは、介護を必要とする要介護状態にも関わらず、誰からも介護サービスを受けられず困っている人のことをいいます。その背景にあるのが「高齢者だけの世帯や高齢者の単身世帯の増加」「介護の人材不足」「介護サービス事業所の不足」「特別養護老人ホーム(特養)などの入所施設の定員不足」などです。 現在でも、高齢者だけの世帯で高齢者が高齢者を介護する「老老介護」や全国の特別養護老人ホーム(特養)に入所申込をしているのに入所できていない待機者が約30万人(2019年時点)に至っているなど、すでに介護難民は発生しています。 こうした介護難民の問題が2025年以降、さらに深刻化すると予想されているのです。
2025年に介護難民が激増! その理由は?
その主な理由としてあげられるのが、後期高齢者人口の急増と介護の人材不足です。国は65歳から74歳までを前期高齢者、75歳以降を後期高齢者としていますが、2019年には65歳から74歳までの要介護認定率は約3%なのに対し、75歳以上の認定率は約23%でした。このことから、後期高齢者になると介護を必要とする人の割合が非常に高くなることがわかります。 また、2019年の時点で65歳以上の要支援・要介護認定を受けている人はおよそ656万人なのに対し、介護職員の数は約210万人です。多くの施設の介護職員の人員配置基準は「3:1」の比率になっており、この時点で基準を上回る状況だと言えます。
同年の介護労働安全センターの調査によると、全国の半数を超える介護事業所がスタッフ不足を問題視しており、介護の人材と施設不足は特に首都圏や近畿圏などの大都市において深刻化しています。
このように現在、顕在化している介護難民の問題ですが、2025年には約800万人の団塊の世代が後期高齢者になるのです。激増する要介護者に対し、少なくとも250万人程度の介護スタッフが必要と試算されており、早急に介護の人材不足を解消することが課題となっています。国としても、介護事業所へのICTやロボットの導入、外国人スタッフの受け入れ、介護スタッフの給与体系などの処遇改善といった支援策や、地域包括ケアシステムによる地域の特性にあわせた在宅高齢者のサポート体制の整備を進めています。ほかにも、自治体レベルですが大都市圏から要介護高齢者を地方に受け入れる事例も増加しているようです。
介護難民にならないためにやっておきたいこと
高齢の家族だけでなく自分たちの老後も考えると、介護難民は誰にとっても避けがたい課題といえます。 介護難民にさせない・ならないためのヒントをお伝えします。
●介護についての情報を集める 要介護状態になる前から「どのように介護されたいか」「家族の誰が介護に関することをとり仕切るのか」を考えたうえで、介護に関する情報を収集しておくことが大切です。介護が必要になったとき、まず「どこに相談すればいいのか」「どのようなサポートが受けられるのか」、地域包括支援センターをはじめ地元の公的な介護支援サービスや福祉施設、介護事業所などを前もって調べておきましょう。また、生活スタイルや経済状況にあわせて必要となる費用や手続きも知っておくのがベターです。
●健康と生活機能を維持して介護予防を 体に問題がなければジムに通うなど自分で日常的に健康維持・生活機能向上のトレーニングをするのもよいですが、介護(予防)サービスや自治体などによる健康教室などを積極的に利用することをおすすめします。 介護予防サービスや健康教室は、住み慣れた地域の中で、自立した生活を続けるための支援です。できるだけ自力で生活できる訓練を行うので、いわゆるADL(日常生活の中で必要な動作ができる自立度)の向上に役立ちます。 また病気・ケガなどで生活機能の向上が困難な場合は医療機関やデイサービスなどでリハビリに取り組み、寝たきり防止を目指しましょう。
●地方への移住も考える 現在から今後に向け、首都圏や関西圏などの都市部に集中して高齢者人口の急増が続きます。その一方で、地方によっては施設や介護スタッフに余裕のあるケースもあり、介護費用も都市部より低めの傾向です。施設への早めの入居を希望される場合には、地方への移住も選択肢のひとつになるでしょう。
●介護の資金を準備する 特養や介護老人保健施設など、低額の公的施設は入所希望者が多く、入所条件も厳しいことは今後も変わりないと思われます。介護に使える資金が少ないと選べるサービスの選択肢は限られます。必要なときに必要な介護サービスを受けるためには、介護保険や公的サービスだけに頼るのではなく、介護保険外や民間サービスの利用も視野に老後の資金を蓄えておくことが大切です。
家族も自分もまだ介護は関係ないと思っていても、老後は誰にでもやってきます。また、これから先しばらくは介護については厳しい状況が続くと考えられています。国や自治体の施策などの情報を収集しつつ、できるだけ早いうちから自分たちでも介護難民にならないためにできることからやっていきましょう。
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