バイタルサインとは何? 在宅介護に役立つ知識と測定スキル
高齢者問題
在宅介護に備えて知っておきたいこと
在宅で家族の介護をすることになったら、介護される人の状態を観察し把握することが大切になります。
そのために役に立つのが、本人の病気に関する理解とバイタルサインの知識や測定の仕方などです。バイタルサイン(Vital Signs)とは生命兆候とも呼ばれ、生きている身体の状態を示すもので、体温・呼吸・血圧・脈拍のことです。
バイタルサインは患者や利用者の身体の状態を知るための基本的な情報ですから、医療機関などでの診察では必ずといっていいほどバイタルサインを測定しますが、診察時だけでなく、普段から家庭でも測定することが推奨されます。それが要介護者の健康上の異変に早めに気づき、スムーズな対処につながるからです。
そこで、在宅介護に役立つ知識として、バイタルサインとその測定の仕方などについて知っておきましょう。
要介護者の状態を観察・把握することが大事
在宅介護ではまず、介護対象者の病気や治療について把握しておくことが役立つと考えられます。例えば、病気についての概要やどんな治療を受けているか、これまでの治療の経過と今後の予想などです。
また、食事制限など生活上必要とされることや、リハビリなどを行った方がよいのかなども、主治医や訪問看護師に聞いておきましょう。
その上で、普段から要介護者の状態を観察し、把握することがとても大切です。
要介護者の病気やその症状を頭に入れて日ごろから観察していると、安定したいつもの状態、つまり正常な状態がわかるようになります。正常な状態がわかっていれば、いつもと違うこと、つまり、なんらかの異変や兆候があることにすぐに気づけます。
そのために非常に役立つのがバイタルサインで、毎日、要介護者の体温・呼吸・血圧・脈拍の数値を測定し記録することで、病状と全身の状態を把握することができます。
バイタルサインは1日のうちでも食事や運動、入浴などによって変動しますが、通常は毎日朝夕の2回ほど測定し、メモをするようにしましょう。
バイタルサインに加えて、要介護者について以下の項目も観察・記録しておくことで、受診の際などに役に立ちます。
・表情や顔色
・食欲
・排泄(回数・量・尿や便の状態)
・睡眠
・日常の生活動作
・服薬
・体重(測定が可能であれば)
・気になる症状など
バイタルサインを測定しよう
では、実際に体温や血圧などバイタルサインを測ってみましょう。
家庭でも行いやすい測定の仕方を説明しますが、まず共通して気をつけたいのが、毎日、決まった時間帯に測定することです。また、運動や食事、入浴の後や、精神的な緊張があると測定結果に影響するので、そのようなときは30分から1時間程度安静にし、落ち着いた状態で測るようにします。
<体温>
体温計で計測します(検温)。使用する体温計は扱いやすく、安全なデジタル式がおすすめです。
測る場所は、わきの下や口などになりますが、つねに同じ体の部位で測るようにします。
体温計は、検温する部位ごとに専用のものが販売されているので、購入の際はよく確認してください。
体温はわきの下で測ることが一般的です。その場合、わきの下に汗をかいていると正しく検温できないので、必ず汗を拭いてから、上腕とわきの間にすきまができないように体温計をはさんで測りましょう。
片麻痺のある人は麻痺のない方のわきで検温します。
最近では、耳の穴の入口に先端を軽くあてるだけで検温できる耳式体温計も市販されており、手軽に使えるのでおすすめです。
<呼吸>
胸もしくは腹部が1分間に何回上下するか数えます。
呼吸は測定を意識すると変化することがあります。そのため、本人が気づかないようにそれとなく測定することが大切です。
また、測定時は呼吸の深さに加え、表情や顔色なども同時にチェックしましょう。
<血圧>
血圧は運動や疲労、心身のストレスなどで変動するので、気分が落ち着いた状態でゆっくり深呼吸をしながら測ります。
測定には家庭用の血圧計を用意しましょう。デジタル式の自動血圧計が使いやすく、脈拍も同時に測定できるのでおすすめです。
血圧は通常、ひじの内側で測ります。その場合、マンシェット(腕に巻く帯状のパーツ)の中心部分(血圧計本体とつなぐエア管の接合部)がひじの内側の動脈にあたるように巻き、その部分が心臓と同じ高さになるようクッション等で調整したあと、測定部位を動かさずに測定します。
血圧計によっては手首など他の部位で測るタイプもあり、詳しい測定方法については製品の取扱説明書をよく確認してください。
<脈拍>
デジタル式自動血圧計があれば血圧といっしょに測定できますが、血圧計が使えないときなどに備えて、人の手で測る方法を知っておきましょう。
手首の手のひら側のやや外側、もしくはひじの内側の動脈を探し、利き手の人差し指から薬指の3本の指を添えて1分間の脈拍数を数えます。脈のリズムに乱れがないか、脈が弱くなっていないかも確認しましょう。
介護される本人の病状や治療の経過を踏まえ、これまでご紹介したバイタルサインなどに加えて観察すべきポイントが他にもあるか主治医や看護師に確認しておきます。
そして、日々の観察やバイタルサインの測定でいつもと異なる状態や症状に気づいたら、そのときの状況や期間、どう対処したか、またその経過などをメモし、すみやかに主治医や訪問看護師などに相談しましょう。
そうすることで、早期の適切な治療やケアへとつなげることができます。
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