高齢者施設の暖房設定温度はどれくらい? 寒さ対策は?
高齢者一人暮らし
感染症が心配? 高齢者にとっての寒さ対策の注意点
寒い時期には何かと体調をくずしやすくなりますが、高齢者は特に注意が必要です。高齢になると、寒暖差によるヒートショックを起こしやすく、体温調節機能に衰えもみられるからです。そのため、高齢者の住環境では暖房の設定温度などについて周囲の配慮も欠かせません。適切な温度で暖かく過ごすためには、湿度との関係も大事です。
さらに、コロナ禍を経て、この冬はインフルエンザなどの感染症の流行がみられることから、引き続き、この冬もひんぱんに部屋の換気をすることが推奨されています。冬期には室内の温度を下げないで換気することが求められますが、実は、このとき湿度管理にも注意する必要があります。いまだ感染対策が必要とされる中、エアコンを使った高齢者のための寒さ対策についての注意ポイントを知っておくことが大切です。
また、エアコンは夏にも活用しますが、今年の夏も災害級の暑さになると予測されています。エアコンの設定温度だけではなく、お手入れ、お掃除に付いても是非ともご留意ください。こちらの記事もご参考にいただけますと幸いです。
▼高齢者の夏風邪・肺炎にご用心!エアコンのカビは大丈夫?冷房の温度設定をする前に暖房設定温度に注意して、適切な温度・湿度管理を
高齢者の健康を守るためには、室温と湿度の適切な管理が欠かせません。では、冬には暖房を入れますが、何度くらいに保てばいいのでしょうか? WHOは冬の室温を18℃以上に保つことを推奨し、高齢者にはさらに暖かい環境が望ましいとしています。具体的には、暖房の設定温度として参考にしたいのが高齢者施設です。実は、高齢者施設での温度管理について法律などで正式に定めた基準はありません。施設ごとに管理基準を設けていますが、20〜22度を冬期の室温の目安にしていることが多いようです。
適切な室温に保つには暖房効率を高めることが大事です。それには、エアコンを上手に活用しましょう。エアコンは風量・風向きを「自動運転」に設定し、フィルターを月に1〜2回掃除することで性能を最大限に引き出せます。サーキュレーターを併用して暖かい空気を循環させれば、効率よく部屋全体の温度を均一に保てます。窓に断熱シートを貼る、厚手のカーテンを使用する、床にカーペットを敷くといったことで、暖房効果をより高めることができます。
加えて、気をつけたいのが湿度です。冬場の適切な湿度は45〜55パーセントとされていますが、温度が上がれば湿度は下がります。湿度が40パーセントを下回るような乾燥した環境では、インフルエンザなどのウイルスが活性化するだけでなく、鼻や喉の粘膜の防御機能が弱まり感染症にかかりやすくなるといわれます。暖かくすることばかりに気を取られて、湿度が低くならないようにすることも大切です。
エアコンの暖房では、温風によって室内は乾燥しやすくなります。したがって、エアコンの暖房を使用する時期は湿度が低くなりすぎないよう注意する必要があります。そのためには、加湿器を使用するのが最も効果的ですが、濡れタオルや洗濯物を室内に干すといった方法も有効です。
一方、湿度が高すぎるとアレルギーや感染症のもととなるカビやダニの繁殖を招くため、湿度を適切な範囲に保つことが推奨されます。湿度を適切に管理するためには、温湿度計を用いてこまめにチェックし、実際の環境に合わせて調整することが大切です。以上のことから、目安にしたい温度は20〜22度ぐらいになります。ただし、高齢者は寒がりの方も多いので、これよりも温度を上げる場合、熱中症予防の観点から28度を超えないようにしてください。
熱中症予防という点では、「かくれ脱水」にならないようにすることも重要です。かくれ脱水とは、自覚症状がほとんどないまま体内の水分が不足している、脱水症の症状が出る一歩手前の状態を指します。強い喉の渇きやめまいなどの明確なサインがないため、本人も周囲も気づきにくいのが特徴です。乾燥した環境では、空気中の水分が少ないため、皮膚や呼吸から失われる水分が増え、気づかないうちに体内の水分が失われるので、かくれ脱水は冬にも注意するべきです。このことからも、温度に加え湿度管理が重要になります。特に高齢者は体内の水分量がもともと少なく、喉の渇きを感じにくいため、かくれ脱水になりやすいです。そのため、加湿に加え、意識してこまめに水分補給をする必要があります。
なお、適切な湿度の範囲は45〜55パーセントが目安ですが、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスが湿度に弱いことも考えると、60パーセントぐらいに保つのが良いでしょう。また、実際の室温がエアコンなどの設定温度と同じとは限りません。温度計と湿度計を設置して、温度と湿度のチェックをすることが大切です。
寒暖差をなくすことも大事
さらに気をつけたいのが、家の中の寒暖差です。居室やリビングルームなどは暖かく快適な温度に保っていても、トイレや廊下、洗面所などが寒いといったことはありませんか? 家の中で場所によって極端に温度が異なっていると、ヒートショックの不安があります。ヒートショックは、寒暖差による健康被害のことです。例えば、暖かいリビングルームから冷え切ったトイレなど、極端に温度の違う場所から場所へ移動したときに血圧が乱高下し、心筋梗塞や脳出血などを起こします。
このようにヒートショックは深刻な事態につながることが多いのですが、寒暖差の対策をすることで予防できます。一般的に寒暖差が10度を超えると、ヒートショックが起きやすくなるといわれています。家の中のいろんな場所がこのような寒暖差になっていないかチェックし、トイレなど寒い場所があれば、小型の暖房を設置するなどしましょう。また、居室やリビングルーム以外の場所にも温度計と湿度計を設置し、温度・湿度の管理をすることが大事です。
▼ヒートショックの症状とは? 後期高齢者は心配? なりやすい人や予防方法など感染対策で換気は有効だけど
温度が15度を下回ると呼吸器系疾患、12〜9度では血圧の上昇や心臓疾患のリスクが高まるという報告もあり、高齢者の健康維持のためには、適切に温度管理をすることが非常に大切です。しかしながら、昨今は新型コロナウイルス感染対策のため、特に換気が重要視されているのが悩ましいところではないでしょうか。
換気は室内の空気を外の空気と入れ替えるのですから、何も対策しないで換気をすると当然ながら、部屋の温度は下がります。つまり、部屋を暖かく保ちながら空気を入れ替える必要があります。 感染対策のために換気が欠かせない現状ですが、温度も湿度も下げないように注意しましょう。
気温が低くなる冬場は空気中に含まれる水分量の割合が低く、湿度の保たれた暖かい室内に外気が入ると、ほとんどの場合、湿度は下がってしまいます。換気は感染対策として有効とされていますが、例えば、新型コロナウイルスは湿度に弱く、湿度60パーセント以上で感染力が弱まることがわかっています。そのため、湿度も保ちながら換気をするのが大切になりますが、それには、どのようにすればいいのでしょうか?
湿度を下げずに換気をするには
窓を開けて換気をする場合、部屋の温度を保つためには、エアコンなど暖房器具をつけたまま行うのがよいとされています。そこで、湿度を下げないためには、加湿器を活用しましょう。エアコンと同じように、つねに加湿器を稼働させておくのです。
ある調査によると、冬の朝から夜までの間、加湿空気清浄機をつけたままの状態で30分ごとに5分間の窓あけ換気を行ったところ、平均して40パーセント前後の湿度を保つことができました。また、暖房に加湿をプラスすることで、加湿しないときよりも、体感的に暖かく思えるものです。適切に加湿して、寒いと感じない程度に設定温度を下げれば、省エネにもなりますね。
温度や湿度をセンサーで監視する「いまイルモ」とは
適切に室温と湿度管理をするには、温湿度計で温度と湿度を実測しチェックすることが欠かせません。しかしながら、これを人が随時行うのは煩雑ではないでしょうか? そこで、検討したいのがセンサー見守りシステムの利用です。温度・湿度などに反応する複合センサーによる見守りシステム「いまイルモ」なら、サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームなどの高齢者施設、あるいは住宅での高齢者の居室の温度・湿度管理の自動化をバックアップします。
「いまイルモ」の施設向けシステムでは、複数の居室に設置したセンサー端末を一括して管理できるのが大きな特長です。モニター上にすべての居室の温度・湿度・照度・人の移動のデータが一覧表示され、見守る側の介護スタッフはひと目で確認できます。また、温度・湿度の一定範囲を設定した上で測定値がその範囲を超えた場合、スタッフに通知することも可能です。さらに、ナースコールシステム「Vi-nurse」と連動させることで、こうした通知をナースコールで受け取れるようになります。
このように、「いまイルモ」を導入すれば、スタッフが各居室の温度・湿度を直接確認する必要がなくなり業務の効率化を図れます。特に、少人数で対応することが多い夜間の見守り業務でのスタッフの負担を大きく減らせるでしょう。
⇒ポストコロナの感染症対策! 介護施設の温度・湿度の管理の重要性とは?
「いまイルモ」は自宅で暮らす高齢者の健康管理もサポートします。高齢者の自宅にセンサー端末を設置すれば、見守る側の家族はスマホやパソコンなどで、いつでもどこからでも温度や湿度、また安否の確認が可能です。センサー端末は複数設置できるので、例えば、離れて暮らす高齢の家族の自宅の居室やトイレ、廊下などに設置すれば、生活環境が適切な温度・湿度になっているか、居室とトイレなどの寒暖差が大きくなっていないか、加えて、トイレの回数や一定時間動きがないといったことをいつでも遠隔でチェックできます。
「いまイルモ」は安否確認だけでなく、このように高齢者の健康的な環境づくりもサポートする見守りシステムですが、設置に際しては施設向け、住宅向けとも特別な工事は必要ありません。手軽に設置でき、見守る側の負担を軽減します。
高齢者の健康にとって寒さ対策は重要ですが、感染対策も必要な現在、何かと注意するべきことがあります。上記を参考に適切な温度と湿度管理をしていただければと思います。そして、効率よく温度・湿度管理を行うには、センサー見守りシステムの導入を検討されてはいかがでしょうか?
この記事は2021年12月27日に新規作成し2025年2月28日に更新したものです。
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