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健康寿命を伸ばすために! 変形性膝関節症について知っておこう

高齢者問題

健康寿命を伸ばすために大切なこと

厚生労働省によると、2019年の日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳と、世界でも有数の長寿率です。一方で、同年における健康寿命は男性72歳、女性75歳でした。健康寿命とはWHOが提唱したもので、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。
平均寿命と健康寿命の差は、健康上のトラブルにより通常の生活が困難な期間になります。健康寿命が長いほど介護を必要とする期間が短く、本人にとっては生活の質=QOL<Quality of life(クオリティ オブ ライフ)>が保てますし、周囲の負担も少なくて済みます。

健康寿命を伸ばすことは、国全体としても社会保障制度を維持するためにも重要な課題です。
健康寿命を伸ばすには、飲酒喫煙を控えたり、バランスの良い食事や純分な睡眠をとることが重要です。また活発な身体活動を行うことも大切で、そのためにも寝たきりを防ぐことが重要になります。高齢者が寝たきりになる原因として、近年、注目されているのが変形性膝関節症という病気です。変形性膝関節症の主な原因は加齢で、高齢化が進むのと同時に患者数も増えると考えられています。

寝たきりを予防するにはその原因を知り、対策することが大切です。
変形性膝関節症とはどのような病気か、原因や予防法などについてお伝えします。

国民病? 高齢化とともに増える変形性膝関節症とは

変形性膝関節症は、膝関節内の軟骨がすり減ったり変化することで、膝関節が変形する病気です。変形にともない関節内部で炎症が発生し、腫れや痛みが起こりますが、症状が悪化するとひざをまっすぐ伸ばせなくなり、立つことや歩行が困難になります。
この病気の主な原因は老化であることから、患者は50歳以上に多く、年齢が上がるに従い患者数は増加していきます。60歳以上の有病率では男性はおよそ45%、女性は70%を超えると推計されています。また、自覚症状がなく受診をしていない潜在的な患者も含めると、日本の全人口の4?5人に1人がかかっているとの推計もあり、まさに「国民病」といえるでしょう。

日本人の平均寿命と健康寿命のギャップをみると、おおよそ男性は9年、女性は12年と長期にわたって介護が必要になる可能性が高いことが考えられます。できるだけ長く自立して暮らしていくには健康寿命を伸ばすことが必要ですが、そのために欠かせないのがロコモティブシンドロームへの対策です。

ロコモティブシンドロームとは、体を動かすことに関わる骨や筋肉、関節、神経などの運動器の衰えによる要介護、もしくはそれに近い状態を指します。運動器症候群とも呼ばれ、その主な原因は加齢です。
変形性膝関節症はロコモティブシンドロームに陥る主な要因の一つと考えられ、年をとると誰でも発症する可能性があります。
そのため、ロコモティブシンドロームを防ぎ健康寿命を伸ばすには、変形性膝関節症の予防がカギといえるのです。

ひざの構造と変形性膝関節症が起きるメカニズム

変形性膝関節症を予防するには、病気についての理解を深めることが大切です。
膝関節の構造と発症のメカニズムについて説明しておきましょう。
ひざの関節は、脛骨(すねの骨)と大腿骨(太ももの骨)、膝蓋骨(ひざのお皿)の3つの骨と、軟骨、じん帯、筋肉、腱などで構成されています。膝関節は、蝶つがいのように、脛骨と大腿骨で曲げ伸ばしができる関節です。脛骨と大腿骨の間には「関節軟骨」と「半月板」と呼ばれる軟骨があり、関節をなめらかに動かしたり、ひざに伝わる衝撃や負荷をやわらげる緩衝材として機能しています。
ひざには立っているだけで体重分、ウォーキングでは体重の2~4倍、階段の昇り降りでは体重の4~7倍ほどの負荷がかかることがわかっています。健康増進のために階段昇降を行う方もいらっしゃいますが、人によっては高齢になると、足への負担が大きくなればなるほどひざの痛みが出やすく、さらに階段の上りがつらくなってしまうこともあります。
普段の生活や活動の中で膝関節への負担が重なっていくと関節軟骨や半月板がすり減ったり、加齢により弾力がなくなることで、腫れや痛みが起こるようになります。これが変形性膝関節症の発症や進行のメカニズムです。

変形性膝関節症は誰でもなる可能性? 積極的に予防を

誰でもなり得る変形性膝関節症ですが、予防のポイントは次のようになります。

・普段からひざに負担をかけないようにする
床に直接座る、しゃがむ、ひざを捻って方向転換するなどの動作や階段の昇り降りなどはひざへの負担が大きいため、椅子に座る、エレベーターを利用するなどして、これらの動作を避けるようにします。ひざへの負担を減らすには、畳に布団といった和式よりも、椅子とベッドなど洋式のライフスタイルがおすすめです。

・体重管理をする
肥満は変形性膝関節症の原因になります。体重が増えるほど、日常の動作においてひざへの負担が増します。バランスのよい食事と適度な運動で、適正体重を維持しましょう。

・ひざを冷やさないようにする
ひざが冷えると筋肉の動きが鈍くなり、痛みを感じやすくなります。ひざを出さない服装、ひざ掛けや保温効果のあるサポーターの使用、毎日の入浴など、ひざを冷やさない工夫を心がけましょう。ただし、急な疼痛や腫れ、熱を伴う痛みがある場合は痛む部分を冷やすようにします。

・適度な運動でひざの筋肉や柔軟性を高める
ひざに痛みがあると動くのが億劫になりがちですが、動かずにいるとひざを支える筋肉の衰えや体重の増加を招き、かえってひざへの負担が増すため症状が悪化してしまいます。この悪循環に陥らないためにも、多少痛みを感じても適度に体を動かすことが大切です。筋力をつけて減量もできれば症状は改善され、さらに動きやすくなります。
おすすめはウォーキングや水中ウォーキングなどの有酸素運動です。ただし、やりすぎや無理は禁物です。目標とする歩数や時間は決めずに、疲れや痛みが出る前に休むかやめるようにしましょう。

変形性膝関節症は重症化すると人工関節の置換手術などが必要になりますが、早期に治療につながれば、症状の緩和や進行を遅らせることが可能です。
予防を意識しながらも、ひざを動かすたびに音がしたり、こわばりなどの違和感があれば、早めの整形外科への受診をおすすめします。


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