バリアフリーとユニバーサルデザインの視点から考える 高齢者のための安全な住環境とは
高齢者問題
高齢化と住環境づくりに欠かせないもの
高齢化が進むにつれ、公的な空間のバリアフリー化やユニバーサルデザイン化も進み、一般住宅にも取り入れられるようになりました。
バリアフリーとユニバーサルデザインは、一人ひとりが安全で快適に暮らせることを目指すものです。
高齢者が安全に暮らしていくために、まず大切になるのが住環境。
高齢者にとって、家の中は最も事故に会いやすい場所といわれており、安心して暮らすための住環境づくりには、バリアフリーとユニバーサルデザインは欠かせない概念です。
こうしたことから近年、一般的に使われるようになったバリアフリーとユニバーサルデザインという言葉ですが、実はその概念は似ているようで異なるものです。
今回はバリアフリーとユニバーサルデザインの違いについて説明し、その視点から高齢者にとっての安全な住環境づくりについて考えます。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違いとは
バリアフリーとユニバーサルデザインの共通点は、他者へのリスペクトやお互いを思いやり、助けあう心がベースとなっています。
街や建物、製品づくりなどにおいて、単に機能を提供するだけではすべての人がうまく使えるとは限りません。それを使う人の立場で思いやりを持って考えることで、真の意味で使いやすく快適な環境やものになるのです。
この考え方をもとに、バリアフリーとユニバーサルデザイン、それぞれの定義をみていきましょう。
<バリアフリーとは>
バリアフリー(barrier-free)は「段差などの障壁や障害となるもの(バリア=barrier)から解放される(フリー=free)」という意味で、本来は建築用語として使われています。
日常的に暮らしていく上で、なんらかの支障を抱える高齢者や障害者を対象に、その支障(バリア)となるものを克服する形でデザインや設計をすることで、バリアフリーは実現されます。
その際に、日常生活を送る上で歩行が困難など一定の障害に着目し、そうした障害を抱える人を優先した造りとなるため、それ以外の健常者などへの利便性にはあまり配慮されません。
そのため、バリアフリーの対象者はあくまでも特定の人に限られることから、その製品や設備の大量生産はむずかしく、市場性の低いものになりがちです。
この限定された対象者と市場性の低さがバリアフリーの特徴であり、ユニバーサルデザインとの大きな違いになります。
<ユニバーサルデザインとは>
ユニバーサルデザインはバリアフリーとは違い、あらゆる人を対象に、年齢・性別・人種・障害の有無などで区別することなく、誰もが使いやすいことを前提にデザインされたものです。
ユニバーサルデザインでは障害を特別なものとは考えず、誰でも一生のうちに、ケガなどによる一時的な障害、災害などによる環境の悪化、乳幼児や高齢者にとっての不便さなどを経験することを前提にしています。
その上で、あらゆる人があらゆる場面でわかりやすく便利に使えることを目指すデザインの考え方です。
また、これもバリアフリーと異なる点ですが、ユニバーサルデザインでは市場性も重要なものと考えます。
あらゆる人にわかりやすく使いやすい製品や環境は広く普及するべきですが、そのためには少しでもたくさんの人にとって魅力ある商品でなければなりませんし、継続して製品を供給し続けることも重要になります。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違いについて、おおよそ把握できたでしょうか?
駅や商業施設などの公的スペースでは、当初、障害者や高齢者を対象としたバリアフリー化が進められてきましたが、その後、すべての人にやさしいユニバーサルデザインが取り入れられるようになりました。
例えば、車イス利用者のために駅の階段にリフトが以前から設置されていますが、これは車イス利用者の使用に特化したバリアフリー設備で、杖などを使う障害者やベビーカーの利用者は対象になりません。
近年は、どのような人もスムーズに駅の垂直移動ができるように、すべての駅でエレベーターの設置が進められています。
高齢者のための住環境づくりに活かしたい視点とは
高齢者にとって安全で快適な住環境づくりにも、バリアフリーとユニバーサルデザインの視点は欠かせません。
将来介護が必要になった場合に備えて住環境をバリアフリー化しておくケースが増えていますが、その際にバリアフリーとユニバーサルデザインの視点があると、何をいつ取り入れるべきかが見えてきます。
床面の段差解消は、誰にとっても転倒を防ぎ、安全性を高めるものです。
ほかにも、玄関の段差部分、浴室の出入口や浴槽付近、トイレの立ち座り用などの縦手すりは、高齢者のみならず荷物を持っての移動時やケガをしたとき、また小さな子どもが使うときなど、誰にとっても役立ちます。
これらの設備はいつでも誰にでも便利で安全性を高めるものです。
上記以外にも、手の力が弱い人でも押しやすい電源スイッチや開け閉めしやすいスライドドアなど、誰でも使いやすい住環境のためのユニバーサル製品が数多く登場しているので、必要に応じて取り入れてみてはいかがでしょうか。
一方で、障害や身体の状態にあわせて整備するべき設備もあります。
その代表的なものが廊下などで歩行を助けるための横手すりで、使う人の身体の状態に合わせて設置することが基本です。
身長や体型は加齢によって変化するため、必要になった時点での設置が推奨されます。
高齢者のための安全な住環境づくりが、同居する家族の利便性や安全性の向上につながることがあります。
そのためには、バリアフリーとユニバーサルデザインの視点から、高齢者本人の状態に合わせる必要があるものと、家族みんなが便利に使えるものを見きわめることが大切です。
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