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介護保険制度はいつ利用する? 高齢者のADLとQOL向上のために知っておきたいこと

高齢者一人暮らし

介護保険制度について知っておこう

介護保険制度がスタートしてから20年以上が経ちました。超高齢社会の現代、在宅介護を介護保険の利用なしに継続していくことは極めて困難です。高齢者の生活の質を維持し、介護する側の負担をできるだけ減らしていくには、制度を上手に利用したいものです。

まだ介護を必要としていない高齢者やその家族の場合、「介護保険は家族での介護がむずかしくなってから利用すればいい」と考えていたり、制度の仕組みや利用の仕方がよくわからないという人も少なくないようです。介護保険を利用したサービスを受けるためには介護認定を受けなければなりませんが、実は、介護保険を上手に利用するには早めに介護認定を受けることが重要です。そこで、介護保険制度の基礎知識と、利用のために欠かせない介護認定について解説いたします。

介護保険制度の理念とADL、QOLの関係

介護保険制度とは、介護を必要とする高齢者が手ごろな費用で介護サービスを受けられるよう、社会全体で支えあうための仕組みのことです。身の回りの世話だけではなく自立も支援し、介護者である家族の負担を少なくしながら誰もが安心して暮らせる社会を目指し、2000年から運用が始まりました。この制度はこちらの3つの理念を中心としています。

・自立支援:介護を受ける人の自立を支える
・利用者本意:介護される本人が受けたいサービスを自由に選ぶ
・社会保険方式:保険料を納付し、給付金やサービスを受ける

介護保険制度ができる前は「できないことの手助け」が介護の基本的な考え方でした。しかし、それだけでは「できる能力が残っているのに、周囲がすべて世話をすることでその能力をうばってしまうのではないか?」という指摘もありました。このような背景から、障害があっても高齢者が自尊心を保ち、自立して自分らしく暮らしていける社会の実現を目指し、この制度がスタートしたのです。

こうした理念と大きく関係するのがADLとQOLの 概念です。
ADLは「日常生活動作」とも呼ばれ、歩行や食事、排泄など人が日常生活をする上で最低限欠かせない身体の動作のことで、どのような介護が必要かを判断する客観的な目安となります。これに対し、QOLは「生活の質」といわれ、その人が満足して幸福に暮らせているかといった指標となる概念のことです。
誰でも歳を取るとADLは低下していきますが、適切な介助でADLが向上すれば自分でできることも増えます。そして、趣味やリハビリなど、意欲的に取り組めるようになればQOLも向上します。ADLとQOLの向上を目指すのが現代の介護の考え方で、介護保険制度はそれを支える土台ともいえます。

介護保険制度の仕組み

介護保険制度とは、全国の市区町村が運営主体および保険者となり、保険に加入する人全員が保険料を納め、介護を必要とする人にその費用が給付される仕組みのことです。40歳以上になると誰もが介護保険に加入する義務があり、保険料を納めなければなりません。

介護保険料の納め方は、40歳から64歳までの人は加入している健康保険の保険料とあわせて徴収され、保険料の額(料率)は健康保険組合によって異なります。65歳以上の人の保険料は、通常、年金から差し引く形で市区町村が徴収しますが、要介護者数などの状況は自治体によってまちまちなことから、こちらの料率も自治体によって違いがあります。

この制度では、65歳以上の加入者は第1号被保険者、40歳から64歳までの加入者は第2号被保険者に分類されています。いずれも保険料の納付義務があり、原則として第1号被保険者だけがサービスや給付の対象者(受給者)となりますが、実際にサービスを利用するためには介護認定をはじめ、さまざまな手続きが必要となります。第2号被保険者で特定疾病による介護認定を受けた場合のみ、受給者となることができます。

介護保険を使ったサービスとは

要介護認定を受け「要介護」と認定された場合、介護保険を利用して受けられるサービスは次のものです。

<ケアプラン(介護サービス計画書)の作成>
以降の介護保険適用の各種サービスを受けるための計画書の作成

<居宅サービス>
自宅を生活拠点として受けられるサービス
・訪問介護:介護福祉士などが訪問して日常生活をサポートする
・訪問看護:看護師などが訪問して医療行為を行う
・通所介護(デイサービス):日帰りで外部の施設で介護を受ける
・短期入所生活介護(ショートステイ):施設に短期間宿泊し介護を受ける

<施設サービス>
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などへの入居

<福祉用具関連>
車イスや介護ベッドなどのレンタル、排泄・入浴のための福祉用具の購入助成

<住宅改修の補助>
手すりの取り付けやバリアフリー改修などに必要な工事費用の一部補助

<地域密着サービス>
住み慣れた土地で続けて生活していくための地域ぐるみのサポート

*介護保険からこれらのサービスへの給付は月ごとに限度があり、また、所得に応じて1?3割の自己負担金が発生します。

早めの要介護認定が大切な理由

介護サービスを利用するために欠かせないのが要介護認定ですが、早めに受けることをお勧めしています。介護認定の申請は、市区町村の担当窓口、または地域包括支援センターで行います。その後、調査、審査・判定ののち、選定されたケアマネジャーと契約し、サービス開始といった流れになります。

この申請から認定までおおむね一カ月程度かかるといわれており、高齢者の場合、この待機期間に思わぬケガや病気など少しの間寝込むことで、一気に身体機能が低下したり、認知症が進行することも少なくありません。身体機能の低下や認知症はADLの低下を招き、いったん低下したADLを向上させることは、現状を維持するよりむずかしいことです。徐々に心身の機能が低下していく中、随時適切なサポートをしていくことでQOLも維持できます。必要になったときにすみやかに適切な介護を受けられるようにしておくことが大切です。

そこで、本人や周囲の家族が「まだ、大丈夫かな?」と感じたときが、もはや要介護認定申請のタイミングといえるのかもしれません。審査により「要介護」の認定を受けられなくても、「要支援1または2」と認定されれば、介護予防のためのサービスと一部の介護サービスや福祉用具のレンタルなどが利用できます。

高齢者が自分らしい生活を続けられるよう、以上を参考に介護保険制度を上手に使っていきましょう。


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