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ブレイクスルー感染が懸念されるオミクロン型 高齢者への3回目のワクチン接種は?

高齢者問題

急激に拡大する新型コロナ感染第6波

2021年の秋ごろには落ち着きつつあるように思えた新型コロナウイルスの流行ですが、2022年の年始以降、感染第6波とみられる流行が急激な勢いで拡大しています。新型コロナウイルス感染症は、これまでに何度も感染拡大と収束の波を繰り返してきました。今回の第6波の大きな特徴は、その拡大スピードのかつてない速さです。

例えば、2022年に入ってからの東京都の感染者数をみると、1月6日までの週平均の感染者数は1日あたり218人でしたが、翌週13日までの同じく平均感染者数は1503.48人、前週と比較すると約690%という増加率でした。さらに、14日の20日までの平均感染者数は5386.15人で、前の週の358%増加しています。

日本では、国民のおよそ80%が2度の新型コロナワクチン接種を完了したとされています。それにもかかわらず、こうした爆発的な感染拡大が起きる背景として考えられているのが、ウイルスの新たな変異株「オミクロン型」です。非常に高い割合でワクチン接種が普及したにもかかわらず、感染が急拡大している理由のひとつとなっているのが、ワクチン接種したのに感染するブレイクスルー感染です。
そう聞くと不安になりますが、一方で、オミクロン型変異株による感染では重症化しづらいともいわれています。しかし、特に高齢者は、まだまだ油断はできません。現在までにわかっているオミクロン株の特徴と高齢者の感染対策が重要な理由に加え、高齢者に向けて、前倒しして始まることとなった3回目のワクチン接種についてお話しします。

オミクロン型変異株とブレイクスルー感染

ブレイクスルーとは通り抜けるという意味です。したがって、ブレイクスルー感染はワクチン接種を済ませているのに、ワクチンの効果をすり抜けるようにしてウイルス等に感染してしまうことです。新型コロナワクチンでは、2度目の接種をしてからおよそ2週間以上経てから感染するケースをブレイクスルー感染としています。愛知県の調べによると、オミクロン型変異株が確認されてからの新型コロナ感染者のうち90%の人が2回のワクチン接種を終えていました。

非常に高い割合でブレイクスルー感染が起きていることになりますが、その理由として考えられるのがワクチン効果の持続期間です。海外の治験などによると、新型コロナワクチンは接種してから4カ月以降も重症化を防ぐ効果は持続するものの、発症を抑える効果は減少していくといわれています。ワクチン接種を完了した人のうち多くの人の発症予防効果が弱まってきた時期に、海外から入ってきたオミクロン株が拡大し始めたと思われます。

ブレイクスルー感染が多発しているとなると、「せっかくワクチン接種をしたのに、感染してしまうかもしれない」と不安になりますが、その一方で、接種完了から4カ月以降も、かなりの割合でワクチンの重症化を予防する効果は保たれるようです。これが理由のひとつとなっているのか、今回の感染第6波では、以前の波と比較すると、重症および中等症になる感染者が減少しています。

2022年1月10日までの愛知県の統計によると、2020年冬の第1波のときには、重症・中等症患者が感染者全体の32%にのぼりました。これに対し、第6波では、肺炎の症状があるなどの中等症患者は2.7%、人工呼吸器が必要になるような重症患者は0.1%以下となっています。

やはり重要な高齢者の感染対策

ワクチン効果に加えて、オミクロン株は感染力は強いながらも、感染しても肺まで到達せずに喉などにとどまることが多いといったこともあり、重症化するリスクは少ないことがわかってきました。そのため、「重症にならないのであれば、それほど感染を恐れなくてもいいのでは……」と思いたいかもしれませんが、それは早計といえるでしょう。

特に、高齢者や基礎疾患のある人などは一定の割合で重症化すると考えられており、重症化率が低くても分母にあたる全体の感染者数が大きくなると、それに比例して入院が必要な中等症や重症患者も多くなります。そうなると、医療のひっ迫につながりかねません。実際に、都市部の医療機関では通常の検査などが制限されるという事態も起きはじめています。また、軽症や中等症で済んでも、後遺症がみられるケースも報告されています。

過去の感染拡大からわかっているのが、若年層を中心に感染が広がり、当初は軽症患者が多いものの、高齢者などに感染が広がるとその後から重症患者が増えるということです。したがって、高齢者の感染や重症化を抑えることが非常に大切で、今後も感染対策は怠らないようにしたいものです。

3回目の追加接種が第6波を抑えるカギになるか

これまでの変異株に比べ重症化しにくいとされるオミクロン株ですが、高齢者や基礎疾患がある人に加え、ワクチン接種をしていない人も重症化する可能性が高まると、WHOは指摘しています。また、ワクチン接種をしない人たちに感染が広がると高い割合で重症者が増えることも考えられます。重症化を防ぐ上でワクチンは有効ですし、接種から一定期間は感染予防効果も期待できるので、今後もワクチン接種が感染拡大を抑えるカギとなってくるでしょう。

こうしたことからも、当初、2回目接種から8カ月以降とされていた、医療従事者に続く高齢者向け3回目の追加接種を6カ月以降に前倒しして行われることになりました。2回の接種が完了している高齢者には、順次、住民票のある市区町村から「追加(3回目)接種のお知らせ」と「接種券」が発送されます。具体的な時期や接種を受けるための予約方法などは自治体によって異なります。市区町村からのお知らせなどで確認してください。


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