バリアフリーな高齢者賃貸も増加 高齢者施設以外の選択肢が増えている?
安否確認
長寿社会では、老後の住み替えは当然?
わが国は世界でも有数の長寿社会といわれています。厚生労働省の統計によると、日本人の平均寿命は2020年には、女性は87歳、男性は81歳を超えることがわかりました。長寿化の傾向は今後も続くと考えられ、「人生100年時代」が来るともいわれています。多くの人が60歳から65歳で定年退職をすることを考えると、人生のうち老後と呼ばれる時代が非常に長くなりました。
こうした傾向は日本人の住まいについて大きな影響を与えています。ひと昔前は「家は一生モノ」といわれていましたが、長生きするうち、ライフスタイルや心身の変化から住まいへのニーズが変わり、住み替えを余儀なくされることが多くなっているのです。働き盛りの現役世代は家族が増える時期でもあり、仕事や子育てしやすい住環境が求められるものですが、現役を引退するいわゆる老後に差しかかる前後にはライフスタイルのニーズが変わってきます。例えば、子どもが独立し出て行ったあと家の中が広くなり掃除が大変、これまでは気にならなかった家の中の段差がキツくなった、ということがあれば、住み替えを検討する時期なのかもしれません。
年齢的には高齢でも老人ホームなどの高齢者施設への入居はまだ必要ないといった人が少なくない一方で、高齢者は賃貸住宅への入居がむずかしいことも耳にします。今回は、高齢者施設以外の老後の住まいの選択肢について考えます。
高齢者は賃貸住宅に入居しづらいのは本当?
現代では、高齢世代になると家族が減り、夫婦だけもしくは単身の世帯になるのが一般的です。家族の規模が小さくなると、住まいもコンパクトな方が暮らしやすいものです。持ち家に住み続けるという選択肢もありますが、リフォームやメンテナンスが大変なことから、便利な立地のコンパクトなマンションに移ったり、田舎暮らしをする人もいるでしょう。そして、介護が必要になれば介護付きの高齢者施設に入居する―人生100年時代といわれる時代は、ライフステージの変化によって、このような住み替えニーズが生まれるのは自然なことです。
長寿化により老後の時期が長くなっていることから、複数回住み替えが必要になることもありますが、住み替えの度に住宅を買い替えるのは現実的ではありません。そこで、選択肢となるのが賃貸住宅です。
しかしながら、これまで高齢者は賃貸物件への入居がむずかしいといわれてきました。その主な理由としては、特に単身高齢者の場合、元気で自立していても突然の体調変化が起きる可能性が他の世代よりも高く、居住中の事故や急病による孤独死リスクを貸す側が恐れてのことといえるでしょう。「元気な60歳代、70歳代でも貸せないといわれた」ということも耳にします。
高齢者にやさしい賃貸住宅とは
とはいえ、ここ近年では少し事情が変わってきているようです。総務省の「住宅・土地統計調査」によると、この数年間、賃貸住宅に暮らす単身高齢者の割合は全国で3割を上回っており、東京では半数近くになっています。大都市では、賃貸暮らしの高齢者はめずらしいケースではないということです。
こうしたこともあってか、高齢者向け、または高齢者サポートつきといった民間の賃貸住宅が増えてきていますが、こうした物件の多くには共通する二つの特長があります。それは、住居内がバリアフリー仕様になっているのと、なんらかの安否確認の手段を備えているというものです。
段差の解消や必要な場所への手すりの設置など住居のバリアフリー化は高齢者が安全に暮らす上では大切もので、転倒事故などのリスクを減らせます。安否確認については、警備会社と契約している、見守りカメラなどの設置、近隣に親族が住んでいることを入居条件にしている、など物件により方法はさまざまですが、安否確認の体制が整っていれば、物件オーナーにとっての「高齢者に貸すリスク」を大幅に減らせます。これは部屋を借りる側にとっても安心材料になるでしょう。
物件によっては、さらに生活相談や家事代行などのサービスも提供している場合もあります。
では、このような高齢者にやさしい賃貸物件を探すにはどうすればいいのでしょうか? それには、こうした物件を扱っている不動産仲介業者に相談することが必要です。最近では、高齢者向け賃貸の専用ページを設けているインターネットの大手不動産仲介サイトも多く、まずは、「高齢者賃貸」のキーワードで検索してみてください。ネットに不慣れな方は家族に手伝ってもらいましょう。
持ち家にも安否確認の設備を
ご紹介してきたように、高齢者の賃貸住宅事情も改善されつつあり、設備の整った賃貸に入居できれば、ご家族としても安心です。しかし実際、高齢のご家族が「住み慣れた我が家で暮らし続けたい」と考えるケースは多いことでしょう。その場合おすすめしたいのがITによる見守りシステム「いまイルモ」の導入です。
「いまイルモ」は携帯電話が使用できる環境であれば、特別な工事不要で既存の住宅に手軽に設置できます。複合センサーによる見守りなので、カメラと違ってプライバシーにも配慮でき、見守る側は24時間いつでも対象者の様子をスマートフォンやPCで確認することが可能です。これにバリアフリーリフォームもプラスすれば、住み慣れた自宅が高齢者サポートつき住宅になりますね。
住み替えをするのか、持ち家に継続して住むのか、いずれにしても今後、安否確認は高齢者の住環境の必須ポイントになりつつあります。
老後にどのような住まいを選択するのかとあわせて、安否確認の方法についても家族と相談しながら決めていくことが大切でしょう。
▼看取り介護とは? いま、特養やグループホームに求められる役割
▼グループホームとは? 高齢者の安否確認におけるメリットやデメリットを解説
▼バリアフリーな高齢者賃貸も増加 高齢者施設以外の選択肢が増えている?
▼アデュカヌマブの国内承認に待望論 認知症は克服されるのか?
▼簡易版認知症チェック!認知症の初期症状?それともただの物忘れ?
▼認知症の初期症状が出たら、要注意!
▼認知症予防に効果がある脳トレ!どんなものがある?
▼嗅覚の衰えは認知症の初期症状
▼多剤服用が認知症につながる? サプリメントの取りすぎに注意?
▼軽度認知障害(MCI)って、なに?
安否確認のおすすめ記事
-
スマートホームから見守りロボットまで 高齢者の味方になる最新テクノロジーとは
-
小規模多機能型居宅介護とはどんなもの? 介護報酬改定の影響は?
-
孤独死の主な原因と対策とは? 亡くなってから発見まで平均18日という現状
-
スマートシティとは? 介護のDX推進とデジタル田園都市国家構想の未来
-
熱中症が原因? 白内障リスクが4倍に? 暑さを感じにくい高齢者、センサーで見守りを
-
高齢者の孤独死が増加? 原因と対策を考える
-
豪雪で高まるヒートショックの危険性 血圧などバイタルサインの異常に注意
-
年末年始の帰省で、高齢者を狙った特殊詐欺や悪質商法の対策を話し合おう
-
ヒートショックによる突然死を防ぐために 見守りのカギはバイタルサイン
-
QOLと介助 自分のことは自分でしたい サ高住での理想的老後と自己実現