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アルツハイマー認知症に効果的な薬が!2025年問題を解決できるか?

認知症見守り

認知症患者の増加と2025年問題

高齢社会が続くわが国では、今後も65歳以上の高齢者人口の増加が続く見込みで、これにともない、認知症を患う人の数も増えていくことが考えられます。内閣府の発表によると、2020年の時点で認知症高齢者の数は600万人を超え、高齢者全体に締める割合では17%前後と推計されています。

2025年には認知症高齢者は700万人前後に増え、その有病率は20%前後、つまり高齢者の5人に1人が認知症になるとの予測です。また、同年には、およそ800万人とされる団塊の世代の人全員が75歳以上の後期高齢者になり、日本は、全人口のうち4人に1人が75歳以上、3人に1人が65歳上という世界でも稀な超高齢社会に突入します。減少していく生産人口に対し医療や介護コストが非常に増大することから、2025年を迎えるにあたり「2025年問題」として注目されています。

高齢者人口の大幅な増加による医療や介護コストの負担は、社会全体にとっても個々の家庭にとっても厳しいものです。単純な試算では、2025年には国民のおよそ15人に1人が認知症になると予測されますが、認知症の人の割合が増えると介護の負担はより深刻さを増します。

これでは国全体の生産性にも影響を及ぼすことも考えられますが、数十年先までの予測では高齢者の数が増えることはあっても減ることはありません。高齢者人口が増え続けながらも、国や個人の負担を少しでも抑えられる方策があればいいのですが、そのひとつとして考えられるのが認知症患者を増やさないことです。

アメリカで認知症の画期的な治療薬が承認

起因する病気によって認知症はいくつかのタイプに分類されますが、認知症患者の大半を占めるのが、アルツハイマー病が原因となるアルツハイマー認知症です。これまで、アルツハイマー認知症は早期に治療を始めれば進行を遅らせることができるものの、根本的に治療することはできないといわれてきました。したがって、他の認知症も含め、認知症患者を増やさないためには、生活習慣を見直すなど、認知症にならないよう予防することが大事とされています。

つまり、認知症には特効薬がないというのが従来の認識だったのです。しかし、つい先日、アルツハイマー病の治療薬として新薬「アデュカヌマブ」がアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を得たというニュースが報じられました。FDAとは、食品や医薬品の認可などを行うアメリカの政府機関です。

アデュカヌマブは日本とアメリカの製薬メーカーの共同開発により誕生しました。2025年まであと数年とせまるいま、この新薬の承認は明るいニュースといえるのでしょうか? また、アデュカヌマブとはどのような薬なのか、日本でもいつ認可されるのか気になるところです。

アデュカヌマブは大きな期待となるか

アルツハイマー病は、「アミロイドβ(ベータ)」と呼ばれる異常なタンパク質が脳の中に溜まり神経細胞にダメージを与えることで発症すると考えられています。アミロイドβは長い年数をかけて増えて蓄積しながら神経細胞を壊します。既存のアルツハイマー認知症の治療は残された神経細胞を活性化させて数年程度、症状の悪化を遅らせるのが中心で、アミロイドβが神経細胞を壊す働き自体を止めることはできません。

アミロイドβそのものを取り除くことができれば、神経細胞の破壊を阻止し病気の進行を止められます。このことは以前から着目され、アミロイドβの排除を目的とする薬の研究は長年続けられてきました。しかしながら、アミロイドβは発症するまでにかなりの年数をかけて蓄積することや、薬の効き目の評価が困難といったことから、アルツハイマー病の治療薬の開発は一進一退という状況が続いていたのです。

そのような中、アデュカヌマブにはアミロイドβを排除する作用があることが認められました。これは、進行性の病気であるアルツハイマー病の進行の抑止につながります。このことから、アデュカヌマブはアルツハイマー病の根本的な原因に対応する初めての薬とされ、アメリカ国内の患者支援団体などから大きな期待が寄せられています。日本でも承認されれば、2025問題を打開する糸口となるかもしれません。

薬効の評価がむずかしい認知症治療薬

アルツハイマー病の悪化阻止が期待できるとはいえ、アデュカヌマブにはダメージを受けた脳の神経細胞を修復する効果はありません。いったん破壊された神経細胞を復活させるのは非常に困難なことから、効果的な治療のためには、なるべく早期の段階で投与を始める必要があるといわれています。早期の発見と治療開始は、従来から認知症治療において最も大事とされてきましたが、これは今後も変わらないということです。

日本でもアデュカヌマブは2020年末に承認申請がなされ、認可が待たれるところです。とはいえ、本来、アルツハイマー病の治療薬は薬効の評価がむずかしく、アデュカヌマブの効能については再検証の必要性も指摘されています。こうしたことから、今回のアメリカでの承認は、他に治療法がほとんどないための「迅速承認」という、いわば条件つきのもので、今後、実際の使用にあたり効果がみられなければ承認の取り消しもあり得るとのことです。

このような経緯を考えると、日本での承認は微妙かもしれず、手放しで喜べる状況とはいえないかもしれません。しかし、アデュカヌマブの他にも、アミロイドβに作用するアルツハイマー治療薬で承認待ちとなっているものは複数あります。認知症は予防と早期発見が大切なことに変わりなく、そのことを念頭に今後の新薬の開発動向を見守っていくことになるでしょう。

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