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高齢者見守りの連携を考える 国民生活センターの役割とは

高齢者施設

高齢者をどう見守る?

日本全体の人口のおよそ3割が65歳以上の高齢者という推計(2016年9月15日現在)が総務省により発表されています。
また、内閣府の統計では、2015年には全世帯のほぼ半数が高齢者のいる世帯となっています。このうち、高齢の夫婦だけの世帯または単身者の世帯が過半数を超え、増え続ける傾向にあります。このような状況のなか、社会的な課題と言えるのが高齢者の見守りです。

誰でも高齢になれば、持病のあるなしに関わらず急な体調変化を起こす可能性は高くなりますし、家庭内で転倒をしてケガをしたり、火事に巻き込まれたりすることも多くなると言われています。さらに、高齢者だけの世帯は空き巣などの侵入犯に加え、特殊詐欺や悪質商法のターゲットにされやすいことも分かっています。

こうしたリスクから高齢者を守るには、安否確認や見守りが欠かせません。とは言え、上述のデータからも、高齢者だけの世帯、あるいは高齢の単身者世帯が増えていることが分かります。若い世代と同居していても日中は高齢者だけで過ごすという世帯も多いでしょう。一方、地域コミュニティのつながりが希薄になっているということもよく聞かれます。
言わば、現代は家族だけでは高齢者の安全を見守る「目」が確保しづらいということになります。

異変に気付くこと。高齢者を詐欺から守るための連携

そのため、近年は高齢者見守りのさまざまな工夫が生まれています。離れて暮らす家族がスマートフォンなどで安否確認できるカメラやセンサーなどを使ったネットワーク製品が登場しています。ここで度々紹介しているセンサー見守りシステム「いまイルモ」は、離れて暮らす家族の「目」の代わりになります。
そして、高齢者見守りでは「連携」が大切な情報網になります。
隣近所の知り合いに声をかけておくという方法もありますが、自治体と地域包括支援センターや警察、配送業や小売業などの民間企業、ボランティアなどが連携し地域ごとに見守りネットワークを構築するという例が増えています。ネットワークの連携の方法やどのような団体が参加しているなどは地域によって異なりますが、個々の高齢者の家庭で異変や危険性に気づいた人が速やかに役所や警察などに通報し、関連する機関で情報を共有することが基本です。
多くの場合、このようなネットワークの中核となるのは自治体や地域包括支援センターです。さらに最近では、特に悪質商法などの消費者被害から高齢者を守る上で、国民生活センターとの連携が注目されています。

全国の消費生活センターの中心。国民生活センターの役割

では、独立行政法人である国民生活センターとその役割について簡単に説明しておきましょう。
まず、独立行政法人とは、国の各省庁の事業のうち大学や病院、研究機関などの部門を、効率よく運営させることを目的に分離し法人として独立させたものです。国民生活センターは、そうした法人のひとつで、国民生活の安定と向上のために、以下のようなことを行っています。

・消費生活に関する問題の調査研究
・苦情処理や相談、情報収集・提供
・苦情の対象となる商品のテスト

また、重要な消費者紛争については、解決に向け法的手続きを実施することもあります。
ここで、「消費生活センターや消費者センターとはどう違うの?」という疑問を持たれた人もいるかもしれませんね。
国民生活センターは国が関与する事業であるのに対し、いわゆる消費生活センターは、各地方公共団体に設置が義務づけられた行政機関です。
都道府県や市区町村、広域連合により各地に設置された消費生活についての相談窓口になりますが、名称は自治体により「消費者センター」や「消費者相談室」など異なるケースもあります(この記事中では「消費生活センター」で統一しています)。

役割は共通するものが多いのですが、国民生活センターでは、全国の消費生活センターと連携して苦情や相談などのデータを収集し、消費者被害の防止に役立てたり、行政で消費者相談にあたるスタッフの認定なども行ったりしています。全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET:パイオネット)は全国の消費生活センターと国民生活センターをオンラインネットワークで結んだ、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベースです。このように、国民生活センターは全国の消費生活センターの中心となっているのです。

60歳以上が半数を超える。高齢消費者の被害を防ぐための連携を

国民生活センターと消費生活センターの役割や連携について、お分かりいただけたかと思いますが、なぜ、高齢者見守りのネットワークにこれらの機関の存在が求められているのでしょうか?

前述のように、国民生活センターと消費生活センターのネットワークシステムであるPIO-NETの消費生活相談情報によると、この10年ほどの間で全国での消費者被害の総数はゆるやかな減少傾向にあるものの、被害全体に占める60歳以上の人の割合は増え続けています。2017年のPIO-NET統計によりますと、相談者の半数を超える50.4%が60歳以上であるという結果が出ています。(2008年の同調査で60歳以上は33.4%)

この背景には、マスコミなどによる注意喚起にもかかわらず、高齢者を狙ったオレオレ詐欺や架空請求、不要な商品やサービスを売りつけるなどといった手口が、ますます巧妙化していることがあります。
消費者被害は、急病やケガといった身体被害よりも緊急性は低いようにも思われますが、老後に大切な財産を失うのは深刻な事態であることに違いありません。

国民生活センターに寄せられる高齢者の相談事例

前述の詐欺被害以外にも、国民生活センターではさまざまな形で高齢者の方々の相談に対応しています。以下、PIO-NETに寄せられた高齢者の相談事案の一例を紹介します。

・肝臓によいというサプリメントを注文した。1回4粒のところを、試しに1粒だけ飲んだらめまいがして動悸も激しくなり手も震えた。もう1度試しに1粒飲んだらまた同じ症状がでた。
・軽い肩こりと腰痛を治そうと整体の施術を受けたところ、強い腰痛を発症し坐骨(ざこつ)神経痛と診断された。
・有料老人ホームに入居している祖母が嘔吐(おうと)と発熱で救急搬送された。その病院で両足の骨折も見つかった。1ヵ月以上前から骨折していたはずだと言われたが施設に問題はないか。
(引用:独立行政法人 国民生活センター 2019年2月8日:更新 「高齢者の危害 最近の事例」より)

上記のような事例も含め、各地の消費生活センターが地域の見守りネットワークと連携し、地域包括支援センターなどの関係者に、消費者被害の深刻さや被害の発見の仕方、被害があった場合の相談先などを知ってもらう取り組みを始めています。
また、既存の人的資源に頼るだけでなく、地域で消費者トラブルがあった際にスムーズに消費生活センターへの相談につなげるための「消費者被害防止サポーター」の養成も行われています。

今後、高齢者の消費者トラブルについての相談窓口が増えるということです。消費者ホットライン「188(いやや)」をご存知ですか?すぐ身近に相談相手がいない場合は、こちらのホットラインを利用しましょう。

http://www.kokusen.go.jp/map/index.html

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見守り支援システム「いまイルモ」

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