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暖房に注意して高齢者の一人暮らしを安全に

高齢者問題

安全に暖房を使うために

暖房は寒い季節の生活に欠かせないものです。高齢者のお宅では、インフルエンザやヒートショックなどの健康トラブルを防ぐためにも、暖房器具を適切に使って暖かくして過ごしたいものです。

近年は、暖房器具のバリエーションが増え、操作も簡単で安全な製品も多くなりました。しかし、そのような暖房器具でも使い方を間違えると火事の危険性につながりかねません。暖房器具にはいろいろなタイプがあるように思えますが、大きくは、暖める方式によって3種類に分けられます。この3種類の暖房の選び方や使い方によっては、安全や健康に影響することも考えられます。

万一火事になった場合、高齢者が逃げ遅れることが非常に多いと言われているため、高齢者だけの世帯や、特に高齢者の一人暮らし世帯では、暖房器具の扱いには注意が必要と思われます。そこで、今回は安全性と健康面を考えた暖房器具の選び方と使い方についてお話しします。

暖房の種類を知ろう

暖房器具は、その暖房方式により、大きくは対流式・輻射(ふくしゃ)式・伝導式の3種類に分けられます。それぞれの特徴と器具の種類などについては次の通りです。

<対流式暖房>
温風を発生させ、対流を起こして部屋を暖める暖房方式。短い時間で部屋中を暖めることができます。一方、高い所にある温風の吹出し口付近は暖まりやすく、足元は暖まりにくいため、部屋の中での温度差が生じます。また、空気を循環させるので、室内が乾燥し、ホコリなどが舞って空気が汚れることも考えられます。
この方式の暖房器具:エアコン・ファンヒーターなど

<輻射式暖房>
暖められた物質が輻射(放射)する熱を利用した暖房方式。部屋が暖まるまでに時間がかかりますが、室内が乾燥したりホコリが立たったりはせず、空気を汚すこともありません。天井付近と床付近での温度差も大きくなりません。
この方式の暖房器具:床暖房・パネルヒーター・オイルヒーター・芯式(芯を加熱する)ストーブ・こたつなど

<伝導式暖房>
発熱体を直接人体に触れさせて熱を伝える方式の暖房。このタイプの暖房器具は全般的に手軽で安価ですが、局所的かつ補助的なものが多く、部屋全体を暖めるのには向いていません。使用時間や方法によっては、低温やけどの可能性があります。
この方式の暖房器具:ホットカーペット・電気毛布・あんか・カイロ・湯たんぽなど

こうしてみると、対流・輻射・伝導の3つの方式では暖め方が大きく違うことが分かりますね。いずれもメリットとデメリットがあるので、それぞれの特徴を知って上手に使い分けましょう。

暖房の選び方のヒント

例えば、最も一般的な暖房器具のエアコンは対流式ですから、部屋はすぐに暖まりますが、エアコンの使用中にはこまめに換気をする必要があり換気の度に室温が下がるので、その分、ほかのタイプの暖房と併用することも考えましょう。また、どうしても室内の空気が汚れやすいので、呼吸器疾患のある方の部屋には、床暖房などの輻射式暖房のほうが向いているかもしれません。

暖房のタイプは場所に合わせて選ぶことも大切です。高齢者に多い気温差による健康被害・ヒートショックを避けるためには、なるべく家の中での温度差をなくしたいものですね。全館暖房(セントラルヒーティング)をしていないお宅では、各居室やスペースごとに暖房器具の設置を検討することもあるでしょう。その場合、特に注意したいのが、脱衣室(洗面所)やトイレです。脱衣室は、衣服を着ていない、また体が濡れた状態で使うことが多いため、ぜひ暖房のほしい場所ですが、ここにファンヒーターなどの対流式暖房を設置すると、風によってかえって体が冷えやすくなるので、脱衣室にはパネルヒーターや床暖房などの輻射式暖房が向いていると思います。

また、対流式暖房はトイレなどの狭い場所にも向いていないようです。温風が体に直接当たることが多く、特に高齢者の場合は低温やけどを起こしやすいからです。やはり、パネルヒーターやオイルヒーターなどの輻射式暖房が向いていると思われますが、そのような器具を置くスペースがない場合には、トイレ用のホットカーペット(伝導式暖房)を敷くという手もあります。

すでにトイレにファンヒーターなどを設置している場合は、温風が直接体に当たらないよう吹き出し口の位置を変えるなどの工夫をするとよいでしょう。これは、狭い場所で対流式暖房を使う場合の共通の注意ポイントです。ただし、部分的にでも、絶対に吹き出し口をふさがないようにしてください。

適切に使うことが安全に使うこと

暖房は安全に注意して使うことが当然ですが、ここ10年ほどの間に、電気ストーブによる火災が多発しています。この火災による死者の多くが一人暮らしの高齢者でした。電気ストーブは輻射式暖房の1種で、手軽で安全に思えますが、火を使うことに変わりありません。ストーブに接していなくても、その前面10cm以内にあるものに発火する可能性がありますので注意が必要です。

このほかにも、こたつやオイルヒーターで洗濯物を乾かそうとして火事になったケースが報告されています。いずれも、電気による、手軽で本来は安全な暖房器具ですが、不適切な使い方をすると大きな危険につながります。

それぞれの暖房器具は、取扱説明書をよく読んでから使う、就寝や外出時には必ず消す、使わないときはコンセントからプラグを抜く(電化製品の場合)、洗濯物を干すのには使わないなど、徹底しましょう。高齢者で一人暮らしの方は、離れて暮らす家族と、暖房の安全な使い方や選び方について相談する機会を持つことも大切ですね。
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