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寝たきりや認知症を予防するには禁煙するべき?

高齢者一人暮らし

寝たきりと認知症予防が長寿社会の重要ポイント

いまや世界有数の長寿国である日本。2016年には、国民の平均寿命は男性80歳、女性87歳と、いずれも過去最高を更新しました。その一方、2016年のデータで、日本人の健康寿命の平均は男性72.14歳、女性74.79歳となっています。健康寿命とは、健康上に問題のない状態で日常生活を制限なく送ることのできる期間のことを言います。

日常生活に制限があると介護が必要になることから、日本人は平均的に亡くなるまでにおよそ9年から13年程度、介護を受けながら生活することになります。介護の期間が長くなるほど、本人の生活の質は低くなり、介護者の負担も増していきます。長寿社会をいきいきと暮らしていくためには、介護期間をできるだけ短く健康寿命を長くしたいもの。

そのためには、必ず介護が必要となる寝たきりの状態や認知症を予防していくことがカギになります。

健康寿命の大敵?

つまり、健康寿命を伸ばすには、寝たきりや認知症になる要因を排除していくことが必要です。そうした要因は複数ありますが、ここに興味深いデータがあります。

タバコを吸っている人は、吸わない人よりも平均自立期間が4.4年も短いのです。平均自立期間とは、日常的な介護の必要性や健康上の問題がなく、自立した生活ができる期間のことですから、健康寿命と同様の意味合いです。

タバコによる健康への影響は以前から問題となってきました。とはいえ、その影響とは肺ガンや肺気腫などの呼吸器疾患が主なものと思っている人も多いのではないでしょうか? もし、そうであれば、それは大きな間違いです。実は、タバコを吸うことで、全身のさまざまな病気を引き起こすことがわかってきています。前述のように寝たきりになったり、認知症の原因にもなるのです。
また、以前からタバコによるリスクが大きいとされている肺ガンも生命を脅かす病気ですから、タバコは健康寿命の大敵といえるかもしれません。

喫煙が寝たきりを引き起こす理由

では、なぜタバコを吸っていると寝たきりや認知症になりやすいのでしょうか?

2016年の「国民生活基礎調査」によると、65歳以上の人が寝たきりになった最も多い原因は脳卒中、次いで認知症でした。脳血管疾患の一つである脳卒中のリスク因子は、動脈硬化や高血圧、糖尿病などですが、タバコには動脈硬化を促進する働きがあります。

体じゅうに張りめぐらされた血管の内側は内皮細胞という細胞に覆われています。この内皮細胞は、血管や血液の機能を維持する上で重要なものです。しかし、タバコを吸うと、タバコに含まれる酸化物質が内皮細胞にダメージを与え、血液の凝固・血管の収縮・動脈硬化につながります。加えて、タバコには、動脈硬化の原因となるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させる働きもあります。

また、喫煙中は一時的に血圧が上がります。1日中の血圧についても、タバコを吸う人は吸わない人よりも高い傾向にあり、タバコを吸った日は吸わない日よりも高くなることがわかりました。

寝たきりの最大の原因は脳卒中ですが、その主要なリスク因子となるのが動脈硬化と高血圧です。このように、タバコは動脈硬化と高血圧を促し、寝たきりのリスクを高めます。さらに、動脈硬化は心筋梗塞の最大の原因でもあり、喫煙は心臓に負担をかけることから、虚血性心疾患の重大なリスク因子とされています。

愛煙家は認知症にもなりやすい?

次に、タバコと認知症の関係を見てみましょう。

タバコは脳卒中や脳梗塞などの原因となる動脈硬化を促すことがわかりましたが、これらの脳血管疾患は脳血管性認知症の要因です。

また、以前は、タバコに含まれるニコチンが脳を刺激するので、喫煙者はアルツハイマー型認知症になりにくいといわれていました。しかし、近年の研究により、タバコを吸う人は吸わない人よりもアルツハイマー病になる可能性が2.3倍高く、脳血管性認知症については2.2倍、その他のタイプの認知症についても2.1倍高いことがわかりました。

さらに、タバコを吸うことで、脳の前頭葉が萎縮するという研究結果が報告されています。前頭葉は、思考や判断、記憶、感情のコントロールなどをつかさどる部分ですから、喫煙が認知症につながることがわかります。他方で、禁煙することで脳の機能回復が見られたという研究結果もあります。つまり、禁煙は認知症予防になるということです。

いまからでも禁煙を

認知症はまた、寝たきりの主要な原因の一つですから、寝たきりと認知症は相関関係にあるといえます。したがって、タバコを吸っている人は、禁煙すれば寝たきりと認知症両方の予防になります。長年にわたる愛煙家にとって禁煙はむずかしいかもしれませんが、中高年期以降も喫煙を続けることはタバコを原因とする病気のリスクをさらに高めるといわれています。また、「いまさらタバコをやめても遅い」ということはなく、禁煙はいつ始めても改善効果があります。

さらに、喫煙習慣のある人が認知症になった場合、一服したことを忘れて吸いすぎてしまったり、火の始末がうまくできないといったトラブルも起こり得ます。

寝たきりや認知症、また重い心臓病などになれば、本人だけの問題ではなくなります。介護する側にとっては、労力的にも経済的にも大きな負担となります。長い人生を健康でいきいきと過ごすために、禁煙にはトライする価値があるはずです。

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