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世界に学ぶ高齢者安否確認の知恵

高齢者施設

世界中が高齢化

日本ではご存知の通り高齢化が進み、一人暮らしまたは高齢者だけの世帯が増加しています。ところで、これは日本だけの現象ではなく、世界全体の傾向であることをご存知ですか?

1980年代を過ぎた頃から、先進国を中心に世界中で高齢者人口が増え続け、欧米では独居の高齢者が増加傾向にあります。

高齢者だけの暮らしといえば、本人は元気で自立していても、離れて暮らす家族からすると何かと心配なものです。本人、家族ともに安心して無事に高齢者だけの暮らしを続けていくには、安否確認や見守りの体制づくりが欠かせません。

これは国が違っても同じことです。世界では、高齢者の安否確認にどのようなことが行われているのかご紹介します。

スロベニア発、安否確認もできるスマホアプリ

スロベニアは中央ヨーロッパに位置し、1990年に旧ユーゴスラビアから独立した人口約200万人の国です。独立して30年弱の新しい国のように思えますが、高齢者人口の比率は18%と高く、世界22位の高齢化率となっています。そんなスロベニアのIT会社が高齢者向けに「Seniors Phone」というスマホアプリを開発、リリースしています。

Seniors Phone は何か1つの作業をするためのアプリではなく、スマートフォンそのものを高齢者が使いやすくするためのアプリです。日本では、高齢者向けに使いやすくしたスマホの機種がありますが、このアプリはインストールすると通常のスマートフォンを高齢者向けの機種に変えてしまうといったもので、このような特長があります。

・通話、文字メッセージ、緊急通報、現在地通知の機能を大きくわかりやすいアイコンで表示

・1画面・1クリックでシンプルに操作できる

・すぐに連絡を取りたい相手や緊急連絡先を1クリックで通話できるよう、アイコンとして登録可能

・事前に登録した相手と双方向の現在地通知システムによる安否確認や駆けつけができる

・機種変更しても同じインターフェースで使用可能

世界的にもスマホの普及率はめざましいものがありますが、どこの国でもスマホの操作を苦手に感じる高齢者は多いようです。そこで、Seniors Phoneは高齢者にとって使いやすいインターフェースになっているのはもちろんですが、立ち上がり画面で「緊急通報」と「現在地通知」がすぐに目に付くようになっていて、安否確認が強く意識されています。

アメリカではテレビで安否確認

高齢化率14%のアメリカでは、すべての高齢者人口のうち28%が一人暮らしをしています。国土の広いこの国では、どのような方法で高齢者の安否確認や見守りが行われているのでしょう?

アメリカもIT先進国ではありますが、こちらでもスマホやパソコンの操作を苦手とする高齢者は多いようです。そこで、近年、登場しているのがテレビを使った「Independa」という見守りシステムです。

Independa はテレビにインターネット機能を組み込み、パソコンやスマートフォンと通信できるようにしたもの。テレビを高齢者の自宅に設置し、家族や介護者のパソコン、スマホとつなぎます。通常のテレビとして視聴でき、ネット機能もチャンネル操作をする感覚で、リモコンで操作できます。Independaには、主に次のような機能が備わっていて、テレビを見ながらでも使用できます。

・ワンクリックで通信できるコールボタン。このボタンをリモコンでクリックすれば、いつでも通信相手のパソコンやスマホの画面にアラートが表示される

・通院や服薬の時間を知らせるリマインダー

・文字によるメッセージの送受信

・家族との写真共有、動画チャット

インターネットの普及により、アメリカでも若者のテレビ離れが起きています。しかし、高齢者層にとってテレビはいまでも親しみやすいメディア機器で、他の年齢層よりも長い時間をテレビの前で過ごしています。Independa は高齢者が慣れ親しんだテレビの利点を活かした安否確認システムですが、離れた家族と日常的に双方向のコミュニケーションをとることもできます。

イギリスで高齢者の「安心」を24時間見守る

スロベニアとアメリカの事例は、安否確認とコミュニケーションを組み合わせたITによるシステム製品です。これとは対照的に、イギリスには電話を使った高齢者ための非営利のサービス「Silver Line」があります。

イギリスでは360万人の高齢者が一人で暮らしています。こうした人たちを孤立、孤独にさせないことを目的に Silver Line はコミュニケーションに重きを置いた活動で、ボランティアと寄付によって支えられています。Silver Line には60歳以上の人なら誰でも24時間いつでも、イギリス全土のどこからでも通話料無料で電話をかけることができ、次のようなサービスを受けることができます。

・話し相手、相談相手になってもらう

・必要に応じて適切な団体や公的サービスなどにつなぐ

・友人として定期的な電話連絡

・虐待やネグレクトの防止、抑止

いわば、Silver Lineは高齢者が孤独を感じず安心して暮らしていくためのホットラインです。定期的な電話連絡は安否確認にもなります。

世界の高齢者安否確認の事例を紹介しましたが、国によってさまざまな方法がありますね。とはいえ、国や技術による違いがあっても、双方向のコミュニケーションという共通点があります。見守りに加え、孤独にさせないことも高齢者が安心して暮らしていくためには、どこの国でも大切なことなのですね。

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