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ジェネリックがある先発医薬品が値上げ? 長期収載品の選定療養費の引き上げとは 対象外はある?

高齢者問題

ジェネリック医薬品の存在と普及率がカギ 「長期収載品の選定療養費」引き上げ

2026年6月に医療費制度の改定があり、一部の医薬品にかかる自己負担額が引き上げられました。高齢者には持病を持つ人も多く、日常的に通院して薬を服用している人の割合は、高齢になるほど増加しています。少子高齢化が進み、国全体の医療費が増え続けている中で改定されたのが、医薬品の自己負担額引き上げです。
これを理解するため、まずは病院で処方される医薬品の分類を見てみましょう。

●先発医薬品
医薬品メーカーによる開発を経て、最初に承認・発売された薬で、「新薬」「先発品」とも呼ばれます。最初に開発したメーカーはその薬の成分に関する特許権を得て、特許が保護される期間については薬を独占的に製造・販売することができます。

●後発医薬品(ジェネリック医薬品)
後発医薬品(ジェネリック医薬品)は先発医薬品と別のメーカーから製造・販売される薬です。先発品の特許期間が満了した後に発売されるので、開発費が先発品より抑えられていて、価格も低く設定されます。添加物などは異なる場合もありますが、先発品と同じ有効成分を持ち、国から同等の効能があるとの承認を得ています。

●長期収載品
長期収載品とはジェネリック医薬品が発売されている先発医薬品のことです。

今回の改定で引き上げられたのは「長期収載品の選定療養費」です。
入院時に希望する個室と同じく保険診療の枠を超えて患者が選ぶプラスαのサービスを選定療養といいます。つまり、患者が自分の希望で長期収載品の先発品を選ぶ場合、「選定療養」が適用されて選定療養費を自己負担することになるのです。

なお、すべての長期収載品(ジェネリックのある先発品)が選定療養の対象になるわけではなく、発売されて5年以上経過した先発品か「シェアが50%以上となったジェネリック」のある先発品が、選定療養費対象の長期収載品とされました。
このような変更がなぜ行われたのでしょうか。

国全体の医療費は少子高齢化などで増え続けています。保険(公費)の負担を抑えるために莫大な開発費が必要な先発品ではなく、安価で供給することが可能なジェネリックを患者に利用してもらい、医療保険制度を安定的に維持する目的で進められたのが、長期収載品の選定療養費における自己負担引き上げです。
特に慢性的な疾患などで日常的に複数の薬を服用している高齢者は、ジェネリックに切り替えれば支払う薬代は少なくなります。広く普及したジェネリックのある先発品を選定療養とし、その自己負担額をこれまでより増やしてジェネリックへの切り替えを促しているのです。

選定療養対象の長期収載品とジェネリックはどれくらい金額が違う? 選定療養費の計算

では窓口の支払い金額がどのくらい変わるのでしょうか。2026年5月31日までは先発医薬品と後発医薬品の差である4分の1を選定療養費として自己負担していました。しかし、2026年6月1日の医療費制度改定以降は、その負担割合が「2分の1」、つまりこれまでの2倍になります。

例えば、先発品の薬価が100円、ジェネリックが60円の場合、差額は40円です。従来はその4分の1にあたる10円が自己負担でしたが、今後は2倍の20円が自己負担となります。消費税などを計算に入れると、窓口での支払合計は、これまで38円だったところが、2026年6月からは46円となり、8円値上がりすることになります(3割負担の場合)。

*出典:「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」(厚生労働省)

これは1錠あたりの単純計算であり、先発品とジェネリックの価格差が小さい場合、1錠あたりの差はわずかです。しかし、医療費は薬剤料の点数(国の定める医療費の計算単位)に換算した上で、日数を掛け合わせて算出したり端数を繰り上げたりといった複雑なルールで計算されます。

  • 【豆知識:選定療養費の計算のしかた】

    例えば、自己負担率3割の人が、先発品の薬価100円、後発品49.3円の薬を、1日2錠服用で30日分処方された場合、計算のイメージは次のようになります。

    自己負担額計算方法

    引用:「長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養における費用の計算方法について」の一部 改正について(厚生労働省)

    1. 「特別の料金」の計算

    ①1日あたりの特別の料金を計算する

      (先発品 100 円 − 後発品 49.3 円) ÷ 2 =25.35円
      特別の料金 25.35 円 × 2錠 = 50.7 円

    先発品の薬価が100円、後発品が49.3円の薬では、差額の2分の1である「特別の料金」は1錠25.35円になります。このケースでは1日に2錠飲むことから、1日あたりの特別の料金は、50.7 円です。

    ②処方日数における「特別の料金」を薬剤料の点数で表す

      特別の料金 50.7 円 = 点数 5 点
      5 点 × 30日 = 150 点

    1日あたりの「特別の料金」を薬剤料の点数に換算して、処方日数をかけます。

    ③合計点数を消費税込みの金額にする

      150 点 × 10 円 × 消費税率 1.10 = 1650 円

    処方された日数分の合計点数を金額に換算して消費税を加算します(1点あたり10円)。

    以上の計算から、100円の薬を1日2錠、30日分処方された場合の「特別の料金」は1650円となります。
    次に、保険対象分の金額を計算します。

    2. 保険対象分の計算

    ①「特別の料金」を除いた1日分の薬価を計算し、薬剤料の点数に換算する

      (1錠 100 円 − 特別の料金 25.35 円)×2錠= 149.3 円 (15点)

    ②処方日数における合計点数を金額に換算する

      15 点 × 30 日 = 450 点
      450 点 × 10(円)= 4500 円

    1日あたりの点数に処方日数をかけ、処方された日数分の合計点数を金額に換算します(1点あたり10円)。

    ④保険対象分のうち、自己負担する金額を計算する

      4500 円 × 0.3 = 1350 円

    自己負担率3割の人の場合、保険対象分における自己負担額は1350円となります。

    3. 窓口で支払う薬の総額

      特別の料金 1650 円 + 保険対象分 1350 円 = 3000 円

    このケースでは、2026年6月以降、3000円が窓口で支払う薬の額になります。
    2026年5月末までの「特別の料金が差額の4分の1」では2520円のため、このケースでは480円引き上げられたことになります。

    ※このほか、技術料などが加算されます
    ※薬剤料の点数換算には国の計算ルールである「五捨五超入」が適用されます(後述)
    ※特別の料金を計算する際に使用する価格は「厚労省マスタ」に記載されています。ジェネリック品が複数ある場合は、そのうち最も高いジェネリック品と先発品との価格差を使用します

なお、次のような計算ルールが重なることで、窓口での最終的な支払い額が予想以上に増えるケースもあります。

●医療費における点数換算のルール
・選定療養費の対象となる額が10円未満の場合、「10円分(1点)」として計算される

・金額を点数に換算する際の「五捨五超入」という仕組みによって、実際の差額より増えるケースがある

※五捨五超入とは、1種類につき1日分の薬価が15円以下の場合は1点、15円を超える場合は10円ごとに1点を加算するルールです。15円であれば1点(10円)、16円・25円では2点(20円)、26円であれば3点(30円)となり、金額から点数、点数から金額へと換算することで実際の値段より高くなるケースがあります。

●種類ごとの計算
・複数の薬を飲んでいる場合、計算は薬の種類ごとに別々となるため、複数の薬で都度、「五捨五超入」による切り上げが行われる可能性がある

●日数の掛け算
・薬剤料の点数計算は1日分の差額に日数をかけるので、30日分や90日分といった日数の多い処方箋ではそのふくらみが顕著になる

これらが重なると、価格差の小さい薬であってもトータルの自己負担がこれまでより千円単位で増加することがあるのです。

選定療養費の負担がかからない「対象外」 高齢者や認知症患者の特徴

調剤薬局にジェネリック医薬品の入荷がないなどの場合はどうなるのでしょうか。
やむを得ない理由があれば、先発医薬品を選んでも、選定療養費負担の「対象外」となるケースがあります。

●医療上の必要がある場合
・先発品とジェネリック医薬品の効能・効果に差があり、先発品を使う必要があると医師が判断した場合
・副作用や飲み合わせなど、安全性の観点等から判断された場合
・学会が作成するガイドラインにおいて、後発医薬品に切り替えないことが推奨されている場合
・剤形の好みではなく「飲みにくい」「一包化ができない」など、剤形上の違いによって必要性が認められた場合

●ジェネリック医薬品の提供が困難な場合
・その病院や調剤薬局にジェネリック医薬品が採用されていない・在庫がないなどの場合

●その他(入退院時の処方)
入院中や退院時に処方される薬には特別の料金がかからない

例えば、認知症のある高齢者は薬の名前や色・形、シートのデザインが変わることで服薬を拒否したり、飲み忘れたり、間違って重複して飲んでしまうなどの問題が起こる可能性があります。高齢者には睡眠薬や抗精神薬などが処方されていることも多く、不適切な服用でふらつきや転倒などの事故が起こるケースも考えられます。
「同一性への固執」があるため、安定的な服薬ができないと医師に判断されれば、医療上必要として選定療養費の対象外になることを厚生労働省も通達しています。

まとめ

2026年6月に行われた制度改定の背景には、国全体の医療費が少子高齢化などの影響によって増え続けているという問題があり、選定療養費の見直しなどを通じてジェネリック医薬品の利用をさらに促進させることが急務となっています。選定療養費の引き上げは限られた医療財源を有効に活用するうえで重要な役割を担っているといえるでしょう。
しかし、患者によってはジェネリック医薬品に切り替えられないケースもあります。特に高齢者や認知症がある場合は、いつもと違う薬、いつもと違う金額に戸惑うことや、不適切な服薬につながらないよう注意が必要です。先発医薬品とジェネリック医薬品の違いや、長期収載品の選定療養費引き上げについて理解しておきましょう。


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